追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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特訓5

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 特訓六日目。トーナメントまで残り四日という事で特訓内容は実戦的なものに移っていた。

 ここまでの五日間でルカの剣技は目覚ましい上達を見せている。今まで重ねてきた努力がアレクシアの適切な指導で花開いた形だ。

「まだ中伝の技をマスターした訳ではないから中伝位階は授けられないけれど、すでに中伝レベルの相手と戦っても引けは取らないだろうね」

 とはアレクシアの言葉だ。だが、トーナメントで優勝を狙うのであれば修伝レベルの実力が必要だ。このままでは良くて一回戦突破という所だろう。

 しかし、残り五日で修伝レベルと打ち合える剣技を習得するというのはさすがに無理な話だ。本来ならば、剣技とは何年もかけて習得する必要があるのだ。

 では、トーナメントでの優勝は不可能なのか。――否。例え実力で劣ろうとも、強者に勝つ手段は存在する。ルカは実戦形式の稽古でその手段を見出そうとしていた。

 だが――。

「…参りました」

 ルカの喉元にアレクシアの木剣が突きつけられる。実戦稽古を初めてからもう何度目になるのか分からない敗北。しかし、少年の心は折れない。

「アレクシアさん、もう一本お願いします!」

 ルカは木剣を構え直す。

 稽古での敗北に傷ついて落ち込んでいるいる暇などはなかった。そんな暇があれば、何度でも剣を構え直し挑み続ける。それが、強くなるために少年の選んだ道だ。

「そうだね、もう一本…と言いたい所だけれど、体に疲れが溜まっているんじゃないのかい?」

 アレクシアは木剣を下ろして少年に対して気遣うような視線を向けた。この五日間、寝ている時と食事などの小休憩は除き常に剣を振り続けている。アレクシアは体力に余裕があるが、ルカの体はかなり疲弊しているだろう。

 元々の体力の差もあるが、格上相手の稽古、しかもそれを打ち破るための試行錯誤を重ねつつ…となれば、疲労は倍増する。

(強くなるために努力を重なるのは悪い事ではないけれど、あまり無茶をさせないようにしなければ。私なんかの縁談のために、ルカ君の未来を奪うような事は…あってはならない)

 アレクシアがそんな事を考えていると、

「おーい、ルカ君、アレクシアさーん!」

 と、遠くから声が聞こえてきた。安鶴沙のものだ。

「ちょうどアヅサも昼食を持ってきてくれたようだ。よし、ここで昼食としよう」

 いつもは朝に弁当を作ってくれる安鶴沙だったが、今日は朝に作り忘れたという事でこうやって持ってきてくれたのだ。それを口実に、アレクシアは昼休憩を持ちかけた。

「…そうですね」

 そう言って、少年も木剣を下ろした。
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