追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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一回戦第八試合2

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 会場中のブーイングをその身に浴びながら、デドモンドは手錠の嵌められた手でボリボリと頬を掻く。いくら罵倒されようと、彼の身には堪えていないようだ。

 その様子に業を煮やしたのか、観客の何人かがデドモンドに向かって鉄くずや木片などを投げつけた。しかし、それを最低限の動作で避けるデドモンド。巨体に関わらず、俊敏性と反射神経にも優れているようだ。

「おおっと!いけません、いけません!どうか試合場に者を投げ入れられないように…!」

 ニコニスが注意を促す。それでも騒ぎ立てる観客たちだったが、会場内に配置された自警団員の制止によりようやく静まりかけた…その時、

「ヒャハハッ」

 デドモンドが下品な笑い声を上げつつ、観客席に向かってベロリと舌を突き出した。その態度に、観客たちは再び怒りを漲らせる。デドモンドに向けて先ほど以上に多くの物が投げつけられた。

「か、観客性の皆様!落ち着いて、落ち着いて…。デドモンド選手も、観客を煽るような態度は慎まれますように…!」

 ニコニスの狼狽した声が会場中に響く。そんな様子を楽し気に見ながら、

「ハッ…カス共がよぉ…」

 デドモンドが呟いた。そんな彼に向かって、対戦者…シルヴィ・ローズが静かに囁く。

「相変わらずのゲスね、『灰色熊』」

「ああ!?」

 『灰色熊』。それは、デドモンドが盗賊団員であった時の団員内の通称コードネームだった。この名を知っている者は、基本的に元盗賊団員しかいない。

「てめえ、何でその名を知ってる…」

 デドモンドの顔から笑いが消えた。シルヴィは目深に被ったフードを僅かに上げた。そこから覗いた顔に、デドモンドは驚いた様子を見せる。

「まさか、てめえ…『黒豹』、か…?」

「あなたみたいな人間でも、他人の顔を覚える事が出来たのね」

 シルヴィはフードを降ろす。

「ははっ、シルヴィ・ローズなんて名乗ってるから分からなかったぜ。それに随分とデカくなった。しかしなあ…」

 デドモンドは再びニヤリと笑う。

「俺と同じ、元盗賊のお前が冒険者とはなあ」

「…」

「まあいい。昔馴染みでも容赦はしねえ。こっちには恩赦がかかってんだ。痛い目にあいたくなけりゃあさっさと降参するんだな。いや、俺としちゃあ降参してくれねえ方が楽しめるが。何しろ女には飢えてんだ…いたぶらせてもらうぜ?ギャハハッ!」
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