追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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一次試験~来島安鶴沙10~

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「さあ、これがあなたの取り分よ」

 斬り落としたゴーレムの牙、その一本を安鶴沙に手渡すシルヴィ。ずっしりと重いその物体を受け取りつつ、安鶴沙が訪ねる。

「これ…わたしももらっていいんですか?」

「いいわよ。試験合格に必要な牙は一本…私は単独ソロでの試験参加だから、この牙をあげる相手も他にいないし」

「ありがとうございますっ」

 安鶴沙はゴーレムの牙を受け取り、「えへへ」と嬉しそうに笑う。元々は子供の身の丈程もあった巨大な牙だが、その大部分はゴーレムと共に崩壊。現在は先端のみ残り、掌に収まる程の大きさになっている。

「さて…私の目的は果たしたし、次はあなたの目的を果たすとしましょう」

 シルヴィの目的とは一次試験の合格条件であるゴーレムの牙を手に入れる事。そして安鶴沙の目的とは、この森での生存する事とルカの捜索。シルヴィの目的を達成した事により、ルカの捜索に全力を傾ける事ができる。

「――と言いたい所だけれど、一度拠点キャンプに帰りましょうか。さすがに…疲れたわ。少し休ませてちょうだい」

 現在、シルヴィと安鶴沙はこの近くにある洞窟を拠点にして活動している。ゴーレムの牙を入手したとはいえ、まだ一次試験終了までは日がある。試験終了日までそこで待機を…と考え安鶴沙を促したシルヴィだったが、

「え…?」

 シルヴィの動きがピタリと止まる。

「シルヴィさん?いったいどうし…」

 問いかけようとして、安鶴沙も気が付いた。

「こ、これって…!」

「ええ、ゴーレムに気を取られていて気が付かなかった。不覚だわ…」

 シルヴィと安鶴沙。二人は、何者かによって周囲を取り囲まれていた。
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