追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

一次試験～ルカ・ハークレイ16～

「ちょ、全然効いてないし！？」

　自身の魔術がゴーレムに対して全く効果を発揮していない事に驚く女性。それも当然だ。何しろ相手はSランク相当。修伝レベル3程度の魔術が通用するはずがない。

「やだ、待って、来ないで…！」

　迫り来るゴーレムから逃げようする女性。しかし、ゴーレムの方が遥かに速い。追いつかれるのは時間の問題だ。そして追いつかれれば…おそらくこの女性には成す術《すべ》もないだろう。

「ごめんなさいごめんなさいゴーレムさん、ウチ、もう襲ったりしませんから…！」

　早口でまくし立てる女性。だが、ゴーレムがそんな言葉に耳を貸す訳もない。

「ああっ…！」

　ついに追いつかれた女性は、その肩をゴーレムの脚に踏みつけられ地面に倒された。そして彼女に迫る、ゴーレムの口から生えた鋭い牙…。

「や、助け…」

　目尻に涙を浮かべ、助けを求める女性。しかし、そんな者が来る事はないと分かっていた。奇跡でも起きない限り。そして――その奇跡は起きた。

「水よ、我が敵へと飛翔せよ…！『ウォーター・スプラッシュ』」

　どこからか聞こえてきた初伝レベル1攻撃魔術、『ウォーター・スプラッシュ』の詠唱。

「え…？」

　と、女性が驚いた次の瞬間にはゴーレムの体は圧縮された激流により粉々に砕け散っていた。