追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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二次試験10

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「誰だ…?」

 自分達のパーティはは最短に近いルートでここまで辿り着いたはず。先回りしている冒険者がいる可能性は低い――『ロズラゴス』のリーダーはそう考えていた。では、前方にいる人影は何者か。

「おい、お前ら…構えろ!」

 そう指示を飛ばしつつ、手に持った光の魔鉱石の灯りを前方にかざす。そこに照らし出されたのはこの試験に参加している冒険者ではなかった。かと言って、魔物モンスターのたぐいでもない。そこに立っていたのは…、やや血色の悪い顔色、スマートな体躯の男。

「ド、ドーイ……さん…!?」

 Gランク冒険者にしてSランク冒険者試験試験官、ドーイ・ラギュエルがそこにいた。

「な、なんで、ここに…!」

 現在、二次試験が開始されてから3時間と少しといった所。追いつかれるには早すぎるし、増してや追い抜かれるなど普通はあり得ない。そう、普通は――。

「なぁに、簡単さ。俺の『空間魔術』で試験開始位置からここまで飛んできた」

「はぁ…!?」

 なるほど、確かにドーイは空間魔術の使い手…そしてその腕前は一次試験開始時に参加者全員をリィエダ島に飛ばした事で確かめている。だが――、

「ズ、ズルくないですか…!?」

 転移魔術を使用しての先回り。それはこの試験の前提すら覆すズルではないか…。『ロズラゴス』のリーダーはそう考える。しかし、ドーイは首を横に振った。

「俺は自分の持てる力を駆使して諸君らを捕まえる…ただ、それだけだ」

「クッ…!」

 リーダーは剣を構える。

「こうなったらやってやる!――相手は魔術師だ!Gランク冒険者といえど、詠唱の暇を与えず攻撃を畳みかければ勝てるはずだ!おい、お前ら、聞いてるのか…!」

 パーティメンバーから返事がない事を訝しみ、後ろを振り向くリーダー。しかし、振り向いた先には――何者もいなかった。ただ、洞窟と岩壁がそこにあるのみ。いや、違う。よく見れば…岩壁からは手や足が何本か『生えて』いた。『ロズラゴス』のパーティメンバーの手足だ。

「なっ…!」

「悪いが、君の仲間は俺の魔術で洞窟の岩壁に『埋めさせて』もらった。なに、死んではいない。君を倒した後で地上に送り返してあげよう」

「う、埋めた…?」

 という事は、リーダーがドーイの姿を発見した時点ですでに魔術を発動していたのだろう。それにしても、Bランク冒険者パーティである『ロズラゴス』のメンバーが悲鳴すら上げる暇もなく完全に無力化されるとは。

(格が違う…!)

 そう思わざるを得なかった。

「さて、それでは君の番だ」

 ドーイはゆっくりとリーダーに歩み寄る。

「う、う…」

 その圧倒的な威圧感に、リーダーは思わず後ずさりした。そして仲間すら放り出し逃げ出そうとするも…そんな彼の背に、ドン、という感触が触れた。他でもない、先ほど彼の仲間が作った岩壁の感触だ。そう、彼の退路は塞がれている…逃げ場は、ない。

「うわあああ!」

 悲鳴を上げるリーダー。そんな彼に対し、

「怖がらなくていい。別に痛くはしない」

 そんな前置きの後、ドーイは空間魔術を発動した。

 こうして、『ロズラゴス』Sランク試験の合格を有力視されていたBランクパーティ『ロズラゴス』は全滅した。


 ――試験開始から約3時間30分、失格者4名。残り参加者50名。
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