3 / 12
パロ王国からの使者
しおりを挟む
その日は雨が降っていました。病院に着いたときは小降りでしたが、雨脚はどんどん強くなり、私はお父さんに車で迎えにきてもらおうかと考え始めました。
普段は庭で遊んでいる動物たちも、この日は病院の中でじっとしています。
犬のサクラは私にお尻をくっつけて寝ていました。
「あれ? さっきからモモを見ていない気がするけど、どこへ行ったんだろう」
サクラとモモはとても仲良しで、この二匹はまるで双子の姉妹のように育ちました。サクラがこうやって寝ているときは大抵モモがやってきて、身体をくっつけて一緒に寝ようとします。
今日はモモが現れません。どこに行ってしまったのでしょうか?
アレクサンダーが近付いてきたので、私は声を掛けました。
「アレクサンダー、モモちゃんを見なかった?」
「見ないよ。それよりも背中のウェイトを一つ増やしてくれない? 昨日食べ過ぎちゃった」
アレクサンダーはアヒルの男の子。いつか空を飛ぶことを夢見ていて、その夢を叶えるためにいつも重りを背負ってウェイトトレーニングをしています。けど先生のお母さんが美味しいご飯を作ってくれると、ついつい食べ過ぎてしまうようです。
私は病院の棚からウェイトを一つ取り出し、アレクサンダーの背中にくくりつけてやりました。アレクサンダーは満足したようにピョコピョコと大股で歩いていきました。
窓の外はもう暗く、強い雨音が家の中にも響いてきます。窓ガラスの表面を流れる水がハッキリと見えるほどです。
以前モモはこのような雨の中遊びにいってしまい、ずぶ濡れになって帰ってきたことがありました。その後案の定風邪をひき、しばらく寝込んでいました。サクラが心配して、モモのそばから離れなかったのを覚えています。
私は外に出てモモを探しに行こうかと考えました。けどこんな薄暗い雨の日に茶色い色をしたタヌキを見つけ出す自信はありません。
そのとき目の前の窓に白い物体の影がくっきりと映りました。ここは1階ですが、この窓は庭に面していて、誰かが訪れるようなところではありません。私は驚いて身体が固まってしまいました。
窓の向こうの白い物体はゆらゆらと揺れていましたが、やがてコツコツコツと何か硬いもので窓を叩く音が聞こえました。金属で叩いたようなキンキンいう音ではありません。もう少し柔らかい、プラスチックとゴムの中間くらいの硬さのもので叩いた音のような気がしました。
しばらくすると、今度は小さな声が聞こえてきました。
「開けてください」
窓の外の主が言っているようでした。鳥語でした。私はハッとして立ち上がると、そっと窓に近づき、勇気を出してその窓を開けました。
開いた窓から入ってきたのは大きな鳥でした。一見して水鳥と分かりました。身体の形はアレクサンダーに似ていましたが、大きさはこの鳥の方が遥かに大きく、そして嘴の形が全然違いました。体長とほぼ同じくらいの長さがあり、嘴の下の部分が袋のように大きく膨らんでいました。
その鳥はずぶ濡れの身体を揺すりながら病院の中に入ってきました。
先生のお母さんが、
「あらあらあら」
と言いながら、大量のバスタオルを持ってきて、その鳥と周りの床を拭き始めました。
一通り身体を拭いてもらった後、その鳥がこちらを振り返りました。そして嘴を大きく開きました。嘴の中にはキョトンとした顔のタヌキが入っていました。
「モモちゃん!」
私が声を掛けると、モモは「どうしたの?」といった表情で首を傾げました。
「どうしたの、じゃないよ! 心配していたのに!」
私は嘴の中からモモを取り出しました。モモの身体はびしょ濡れでした。これは雨で濡れたもの? それともこの鳥のよだれ?
先生のお母さんもさすがに目を丸くしていましたが、すぐに乾いたバスタオルをもう一枚持ってきて、モモの濡れた身体を拭いてやりました。
「道でずぶ濡れになっているこの方を見つけました。話を聞くとジョン先生の家にお住まいとのこと。なんたる偶然でしょう。まさにジョン先生にお目にかかるために、私はこの国に参ったのです。それで道案内をお願いするがてら、私の嘴でお運びしました」
と、その鳥が事情を説明してくれました。
私はその鳥に訊きました。
「あなたはペリカンですね?」
「さようです。申し遅れました。私はパロ王国国王プリンス・パラキートより遣わされれたバロン・ペリカーノと申します。かの高名なるジョン先生にお願いの儀あって、遙か南の国から参りました。ジョン先生、お目にかかれて光栄です」
ペリカンは私に向かって頭を下げました。明らかに人違いをしています。
「私はジョン先生ではありません! ほら、こんな子どもだし」
私は慌ててそのペリカンに返答しました。
ペリカンは嘴を私の顔に近付けてよく見ようとしました。
「そうですか。私は人間の顔を見分けるのがどうも苦手で」
診察室から患者さんが出てきました。この日最後の患者さんです。ペリカンを見てさすがにギョッとした表情を浮かべましたが、ここがジョン先生の病院であることを思い出したのか、何も言わずに支払いを済ませて出ていきました。
私は先生を呼びにいきました。
「先生、お客様ですよ。遠くの南の国から来たというペリカンさんです」
先生はすぐに部屋から出てきました。
「初めまして。私がジョンです」
「おぉ、ジョン先生。私はパロ王国の使者、バロン・ペリカーノと申す者。我が主君プリンス・パラキートより親書を預かって参りました」
そう言うとペリカンは自分の身体にくくりつけた紙入れから、分厚い紙に封蝋が施された手紙を取り出しました。
「えーと、こちらが表紙で、いやこれは裏か。いや上下が逆さまだった。いやどうだったかな」
ペリカンはその大きな嘴で手紙をグルグル回し始めました。
私もほかの動物たちも呆れながら見ていました。
しかしその様子をじっと観察していた先生は、ハッと何か気付いたような顔をすると、
「ペリカーノ卿、少々お待ちいただけますか」
と言い置いて部屋に戻ってしまいました。しかし先生はすぐに部屋から戻ると、
「ちょっとこれをお使いください」
と言って、手に持った器具のようなものを差し出しました。
それはとても小さな丸いレンズが二つ付いた眼鏡でした。眼鏡のツルは円く湾曲し、見たことのない形の金属パーツで留められていました。
「ちょっと失礼」
先生はそう言って、その小さな眼鏡をペリカン、いえ、ここから先は私も「ペリカーノ卿」と呼ぶことにします、その小さな眼鏡をペリカーノ卿の顔にずれないようセットしました。
ペリカーノ卿は初め首を左右に振っていましたが、やがて驚嘆の声をあげました。
「見える! これはどうしたことだ、ものがよく見える。おぉ、あなたはどなたですか? え? あなたがジョン先生? これは大変失礼しました」
その頃には先生は、手紙を一通り読み終えていました。
「なるほど、すると王子がご病気と」
「はい、プリンス・パラキートの第一の王子、プリンス・オ・パラキートは、原因不明のご病気で、ずっと臥せっておられます。
「パロ王国というのはどのような国なんですか?」
「パロ王国は、お隣のオーブ共和国に隣接した小さな国です。小さな国ではありますが、パロは鳥の国。国民全てが鳥です」
国民が全て鳥の国! 私はそんな国が現実に存在することにびっくりしました。
ペリカーノ卿は姿勢を正し、あらためて先生にお願いしました。
「先生、どうかパロ王国にお越しいただき、王子の診察をしていただけないでしょうか?」
先生は少し考えてから答えました。
「分かりました。参りましょう」
そしてメティスの方を向くと、
「メティス、お前も行くかい?」
と声をかけました。メティスは、
「先生がいらっしゃるところならどこへでもお供します」
と答えました。
「構いませんか?」
と、先生はペリカーノ卿に確認しました。
「はい、全く問題ありません。パロ行きのフライトには、鳥と、飛行機を作った人間だけが乗ることができます」
「先生!」
不意に声を出した者がいました。振り返るとピッコロが棚の上にいました。
「あらピッコロ、来てたの?」
と私は言いました。
ピッコロはパタパタと羽ばたきながら降りてきました。先生が指を差し出すと、その先にとまりました。
「先生、お願いです。私も連れていってください。南の国の鳥だけの国。それはひょっとすると私のご先祖さまがやって来た国かもしれない。私、一度見てみたいんです」
ピッコロの言葉を聞いた私は焦りました。
私も南の国に行きたいと思いました。けどここで何もしなければ私がメンバーに選ばれる可能性はゼロです。
ピッコロだって何も言わなければ可能性はゼロでした。けどピッコロは自分の思いをそのままぶつけたので、先生に連れていってもらえる可能性が大きく高まりました。
「先生、私も!」
私は思いがけず大きな声を出してしまいました。
「ピッコロは私の友達だし、私も南の国へ行きたいです。先生のお手伝いもします!」
私は理由にならない理由を並び立てました。私が先生のお手伝い? そんなことができるとは思えません。けどこのチャンスを逃したくないと思ったから、思い付いたことをとにかく言葉にしました。
「ペリカーノ卿、確か人間もフライトに乗ることはできるんですね? そもそも私が乗れるくらいですから」
「その通りです。鳥と人間であればどなたでも結構です」
「分かりました。それでは私とメティス、それにピッコロで参ります」
先生は私の方に振り向きました。
「ハンナくんについては、もしお父さんとお母さんが了解なさるなら一緒にいくのは構わないよ」
私は黙って頷きました。
先生は再びペリカーノ卿に向かい、
「準備がありますので、1週間後に出発します。それまでしばらくお待ちくださるよう、王様にお伝えください」
と言いました。
ペリカーノ卿は使者の目的が果たせたことに安堵したのか、ふぅーっと溜め息をつきました。
「ジョン先生、お引き受けくださりまことにありがとうございます。それでは明朝雨が上がりましたら、私は一足先にパロへ帰り、王様に先生方の来訪を伝えましょう」
ペリカーノ卿はその晩、先生の家でたくさんの魚をご馳走になり、翌朝パロ王国に向けて飛び立ちました。
普段は庭で遊んでいる動物たちも、この日は病院の中でじっとしています。
犬のサクラは私にお尻をくっつけて寝ていました。
「あれ? さっきからモモを見ていない気がするけど、どこへ行ったんだろう」
サクラとモモはとても仲良しで、この二匹はまるで双子の姉妹のように育ちました。サクラがこうやって寝ているときは大抵モモがやってきて、身体をくっつけて一緒に寝ようとします。
今日はモモが現れません。どこに行ってしまったのでしょうか?
アレクサンダーが近付いてきたので、私は声を掛けました。
「アレクサンダー、モモちゃんを見なかった?」
「見ないよ。それよりも背中のウェイトを一つ増やしてくれない? 昨日食べ過ぎちゃった」
アレクサンダーはアヒルの男の子。いつか空を飛ぶことを夢見ていて、その夢を叶えるためにいつも重りを背負ってウェイトトレーニングをしています。けど先生のお母さんが美味しいご飯を作ってくれると、ついつい食べ過ぎてしまうようです。
私は病院の棚からウェイトを一つ取り出し、アレクサンダーの背中にくくりつけてやりました。アレクサンダーは満足したようにピョコピョコと大股で歩いていきました。
窓の外はもう暗く、強い雨音が家の中にも響いてきます。窓ガラスの表面を流れる水がハッキリと見えるほどです。
以前モモはこのような雨の中遊びにいってしまい、ずぶ濡れになって帰ってきたことがありました。その後案の定風邪をひき、しばらく寝込んでいました。サクラが心配して、モモのそばから離れなかったのを覚えています。
私は外に出てモモを探しに行こうかと考えました。けどこんな薄暗い雨の日に茶色い色をしたタヌキを見つけ出す自信はありません。
そのとき目の前の窓に白い物体の影がくっきりと映りました。ここは1階ですが、この窓は庭に面していて、誰かが訪れるようなところではありません。私は驚いて身体が固まってしまいました。
窓の向こうの白い物体はゆらゆらと揺れていましたが、やがてコツコツコツと何か硬いもので窓を叩く音が聞こえました。金属で叩いたようなキンキンいう音ではありません。もう少し柔らかい、プラスチックとゴムの中間くらいの硬さのもので叩いた音のような気がしました。
しばらくすると、今度は小さな声が聞こえてきました。
「開けてください」
窓の外の主が言っているようでした。鳥語でした。私はハッとして立ち上がると、そっと窓に近づき、勇気を出してその窓を開けました。
開いた窓から入ってきたのは大きな鳥でした。一見して水鳥と分かりました。身体の形はアレクサンダーに似ていましたが、大きさはこの鳥の方が遥かに大きく、そして嘴の形が全然違いました。体長とほぼ同じくらいの長さがあり、嘴の下の部分が袋のように大きく膨らんでいました。
その鳥はずぶ濡れの身体を揺すりながら病院の中に入ってきました。
先生のお母さんが、
「あらあらあら」
と言いながら、大量のバスタオルを持ってきて、その鳥と周りの床を拭き始めました。
一通り身体を拭いてもらった後、その鳥がこちらを振り返りました。そして嘴を大きく開きました。嘴の中にはキョトンとした顔のタヌキが入っていました。
「モモちゃん!」
私が声を掛けると、モモは「どうしたの?」といった表情で首を傾げました。
「どうしたの、じゃないよ! 心配していたのに!」
私は嘴の中からモモを取り出しました。モモの身体はびしょ濡れでした。これは雨で濡れたもの? それともこの鳥のよだれ?
先生のお母さんもさすがに目を丸くしていましたが、すぐに乾いたバスタオルをもう一枚持ってきて、モモの濡れた身体を拭いてやりました。
「道でずぶ濡れになっているこの方を見つけました。話を聞くとジョン先生の家にお住まいとのこと。なんたる偶然でしょう。まさにジョン先生にお目にかかるために、私はこの国に参ったのです。それで道案内をお願いするがてら、私の嘴でお運びしました」
と、その鳥が事情を説明してくれました。
私はその鳥に訊きました。
「あなたはペリカンですね?」
「さようです。申し遅れました。私はパロ王国国王プリンス・パラキートより遣わされれたバロン・ペリカーノと申します。かの高名なるジョン先生にお願いの儀あって、遙か南の国から参りました。ジョン先生、お目にかかれて光栄です」
ペリカンは私に向かって頭を下げました。明らかに人違いをしています。
「私はジョン先生ではありません! ほら、こんな子どもだし」
私は慌ててそのペリカンに返答しました。
ペリカンは嘴を私の顔に近付けてよく見ようとしました。
「そうですか。私は人間の顔を見分けるのがどうも苦手で」
診察室から患者さんが出てきました。この日最後の患者さんです。ペリカンを見てさすがにギョッとした表情を浮かべましたが、ここがジョン先生の病院であることを思い出したのか、何も言わずに支払いを済ませて出ていきました。
私は先生を呼びにいきました。
「先生、お客様ですよ。遠くの南の国から来たというペリカンさんです」
先生はすぐに部屋から出てきました。
「初めまして。私がジョンです」
「おぉ、ジョン先生。私はパロ王国の使者、バロン・ペリカーノと申す者。我が主君プリンス・パラキートより親書を預かって参りました」
そう言うとペリカンは自分の身体にくくりつけた紙入れから、分厚い紙に封蝋が施された手紙を取り出しました。
「えーと、こちらが表紙で、いやこれは裏か。いや上下が逆さまだった。いやどうだったかな」
ペリカンはその大きな嘴で手紙をグルグル回し始めました。
私もほかの動物たちも呆れながら見ていました。
しかしその様子をじっと観察していた先生は、ハッと何か気付いたような顔をすると、
「ペリカーノ卿、少々お待ちいただけますか」
と言い置いて部屋に戻ってしまいました。しかし先生はすぐに部屋から戻ると、
「ちょっとこれをお使いください」
と言って、手に持った器具のようなものを差し出しました。
それはとても小さな丸いレンズが二つ付いた眼鏡でした。眼鏡のツルは円く湾曲し、見たことのない形の金属パーツで留められていました。
「ちょっと失礼」
先生はそう言って、その小さな眼鏡をペリカン、いえ、ここから先は私も「ペリカーノ卿」と呼ぶことにします、その小さな眼鏡をペリカーノ卿の顔にずれないようセットしました。
ペリカーノ卿は初め首を左右に振っていましたが、やがて驚嘆の声をあげました。
「見える! これはどうしたことだ、ものがよく見える。おぉ、あなたはどなたですか? え? あなたがジョン先生? これは大変失礼しました」
その頃には先生は、手紙を一通り読み終えていました。
「なるほど、すると王子がご病気と」
「はい、プリンス・パラキートの第一の王子、プリンス・オ・パラキートは、原因不明のご病気で、ずっと臥せっておられます。
「パロ王国というのはどのような国なんですか?」
「パロ王国は、お隣のオーブ共和国に隣接した小さな国です。小さな国ではありますが、パロは鳥の国。国民全てが鳥です」
国民が全て鳥の国! 私はそんな国が現実に存在することにびっくりしました。
ペリカーノ卿は姿勢を正し、あらためて先生にお願いしました。
「先生、どうかパロ王国にお越しいただき、王子の診察をしていただけないでしょうか?」
先生は少し考えてから答えました。
「分かりました。参りましょう」
そしてメティスの方を向くと、
「メティス、お前も行くかい?」
と声をかけました。メティスは、
「先生がいらっしゃるところならどこへでもお供します」
と答えました。
「構いませんか?」
と、先生はペリカーノ卿に確認しました。
「はい、全く問題ありません。パロ行きのフライトには、鳥と、飛行機を作った人間だけが乗ることができます」
「先生!」
不意に声を出した者がいました。振り返るとピッコロが棚の上にいました。
「あらピッコロ、来てたの?」
と私は言いました。
ピッコロはパタパタと羽ばたきながら降りてきました。先生が指を差し出すと、その先にとまりました。
「先生、お願いです。私も連れていってください。南の国の鳥だけの国。それはひょっとすると私のご先祖さまがやって来た国かもしれない。私、一度見てみたいんです」
ピッコロの言葉を聞いた私は焦りました。
私も南の国に行きたいと思いました。けどここで何もしなければ私がメンバーに選ばれる可能性はゼロです。
ピッコロだって何も言わなければ可能性はゼロでした。けどピッコロは自分の思いをそのままぶつけたので、先生に連れていってもらえる可能性が大きく高まりました。
「先生、私も!」
私は思いがけず大きな声を出してしまいました。
「ピッコロは私の友達だし、私も南の国へ行きたいです。先生のお手伝いもします!」
私は理由にならない理由を並び立てました。私が先生のお手伝い? そんなことができるとは思えません。けどこのチャンスを逃したくないと思ったから、思い付いたことをとにかく言葉にしました。
「ペリカーノ卿、確か人間もフライトに乗ることはできるんですね? そもそも私が乗れるくらいですから」
「その通りです。鳥と人間であればどなたでも結構です」
「分かりました。それでは私とメティス、それにピッコロで参ります」
先生は私の方に振り向きました。
「ハンナくんについては、もしお父さんとお母さんが了解なさるなら一緒にいくのは構わないよ」
私は黙って頷きました。
先生は再びペリカーノ卿に向かい、
「準備がありますので、1週間後に出発します。それまでしばらくお待ちくださるよう、王様にお伝えください」
と言いました。
ペリカーノ卿は使者の目的が果たせたことに安堵したのか、ふぅーっと溜め息をつきました。
「ジョン先生、お引き受けくださりまことにありがとうございます。それでは明朝雨が上がりましたら、私は一足先にパロへ帰り、王様に先生方の来訪を伝えましょう」
ペリカーノ卿はその晩、先生の家でたくさんの魚をご馳走になり、翌朝パロ王国に向けて飛び立ちました。
10
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】
猫都299
児童書・童話
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。
「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」
秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。
※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記)
※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記)
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベル、ツギクルに投稿しています。
※【応募版】を2025年11月4日からNolaノベルに投稿しています。現在修正中です。元の小説は各話の文字数がバラバラだったので、【応募版】は各話3500~4500文字程になるよう調節しました。67話(番外編を含む)→23話(番外編を含まない)になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる