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序章
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自分の自己肯定感の低さはいつから発症したのだろうと考えている。
過去に遡り幼稚園の頃からその気はあったのではないかと思った。
自身、小学3年までいじめられていた事もある。当時ガキ大将だった奴に下校ルートが逆の児童館まで連行され、
到着するや否や「あとはもういいよ帰れ」と、奴は俺に言い放った。一人で無駄足を喰らい家まで帰った記憶。
中学2年か3年の時、友達と遊ぶことより部活を優先し、ハブられた(実際には自分の思い込み、そんなことはなかった)
中学卒業後はテキトーに不良ぶってた自分、母親の知り合い(M子(仮名・女性)・元暴走族・一人称が俺)の会社に強制連行され、3年間社会勉強と言う名の体験をする。
まぁ、これも家で暴れたり言うことを聞かない生活を送っている俺に痺れを切らした母親が取った最終手段だった。
その当時、M子はよく家に来ては母とたわいもない話をしてた。
母はM子に絶対的信頼を置いていて、趣味や話し方のクセ、別に不良でもないのにその類の言葉を使うようになったりと、半ば洗脳に近いものがあったような気がする。
俺が暴れたり、些細な反抗をすると開口一番
「M子に連絡するかんね」
これが母の最大の脅し文句だった。確かに自分もビビってた。なんて表現したら良いかわからないがM子は威圧感が半端じゃなかった。
毎日をのらりくらりと過ごし、家族のルールも無視、反抗的な自分を見ていた母親は次第にM子と連絡を密に取る様になって行った。そして運命の日がやってくる。M子は家にやってきた。四角いテーブルに母と自分。目の前にはM子。
「連れて行きますからね。社会勉強です。」
最初はナメていた。連行されてもすぐ帰ってこれるだろうし、ここで駄々こねれば許してもらえると。
「他人の子供預かるって事だから契約書にサインしないとだな。お母さん白い紙ありますか?」
そそくさと白のA4用紙を準備する母。
「一筆書け」
あまり記憶にないのだが、多分行ってきます的なことを書いたのだと思う。そしてM子も一筆書いた。
そして、
「ハンコ押せ」
M子はおもむろに親指の腹をカッターで切った。そして流れる血で名前の下に押印した。正直引いた。
「血判しろ」
こんなの映画でしか見たことがない。追い詰められてしまった俺は恐る恐る親指の腹にカッターの刃を当てるが、そこから先に行けない。怖い。
震える手でカッターを持つ俺を母親はどんな顔で見ていたのだろうか。
そしてなんとか親指の腹を切った自分も名前の下に血判した。
「よし。お母さん、あとは坊主にしてください」
空虚な自分を台所で泣きながらバリカンで坊主にする母親。あの時何を思っていたのだろう。
スーツを持っていない俺は学生服に着替えさせられ、そこからはもうあっという間に連行。黒のセルシオの助手席に乗せられた。
着いたM子の会社は花屋だった。葬式に飾る花を作る会社。最初はさすがに緊張していたが、先輩スタッフ達とも仲良くなり、徐々に慣れて来ていた。
自分は高校が通信制だったので、月に2回だけ地元に戻れる機会がある。学校に通い、地元の友達と遊んで、翌日の朝、電車でM子の会社へ戻るという生活だった。
当時俺には連絡をとっていた女がいた。ミキという仙台の女だ。出会い系で知り合った。年齢は17歳。
自分は18歳、車の免許ありの設定(実際は16歳)
初めて会った日、居酒屋で飲んだ。たわいもない話、空想の思い出話をミキに聞かせた。ミキは無駄に感動してた。生ハムメロンを初めて食べたのもその日だ。
酔いも回ってきた頃、当時はラブホテルにも行ったことなければ、金もない。車を持ってるなんて嘘だし、俺たちは寒空の下途方に暮れた。
今思えば、マジでクソ男だと思う。せっかく女性と触れ合う機会、泊まる場所が無いのだから。始発まで謎に公園にいた。ミキは鼻水垂らしてた。
そして、始発に乗ったミキは、「また会いたい」と言った。なんて素晴らしい女なんだ。それがホームラン級のバカだ。
多分2ヶ月後くらいか、またミキと会う事が出来た。今回は宅飲みしようと、コンビニで酒を買い込んだ。
今回ミキを連れ込んだのは俺の実家だ。これが後に爆弾の導火線に火を付けることになるとは思ってもいなかっただろう。
俺とミキは朝まで愛を育んだ。そして朝。もちろん若気の至りだ、学校など行くはずはない。楽しい時間は過ぎるのが早い。もう夕方だ。
俺はミキを駅まで送り、また会おうと約束をした。
「補習があって遅くなりました。いま電車に乗ります。⚪︎時に到着しますのでお迎えお願いします」M子の会社のスタッフに連絡をした。
迎えに来てもらった俺は、会社までの道中、女の話や最近の近況を先輩スタッフと談笑した。もちろん、学校をサボった事は言っていない。
数分後、M子の会社に到着。M子はいつも通り、「おう、おかえり。コーヒー淹れてくれ。」
俺はわかりました。とコーヒーを淹れる。一口飲んだM子から
「お前、俺に何か言うことないか?」と。
え?と言おうとした瞬間、ガラスの灰皿が飛んできた。
「てめー俺らに嘘ついて女と遊んでやがったな!なめてんのかこの野郎」
俺は一瞬で全身の血の気が引くのを感じた。これはやばいぞと。
「学校行かないで女と部屋から出てこない」と、祖母がM子に連絡をしていたらしい。当時は本気で祖母に殺意を抱いた。というか俺の家族、どんだけM子を崇拝していたのだと。
ひたすら謝る自分。M子が電話をし、退勤した他スタッフも続々と戻って来た。
「ありえない」
「裏切られた気分だ」
迎えに来てくれたスタッフは事情を知っていながらも、普段通りの対応を取っていた。大人って怖いと心底思った。
自業自得なのだがこんなに言葉が痛いと感じた事は今まで無かった。
M子は「裏切った代償はでかいぞ。もう仲間でもなんでもねーから893に売っぱらうか。若いし良い鉄砲玉になるからな」
そう言うと俺の目の前で本職に電話している。これはやばい。一生分の土下座をした。「許してください。もう一回チャンスをください!」
本職への電話の後、またM子が誰かに電話してる。
「もしもし、知ってると思いますけど、コイツ俺らに嘘ついて学校サボって女とイチャコラしてたみたいで。友達の893が若いの欲しいって言ってたんで、売りますね」
電話の先は俺の母親だった。内心、助かるって思った。親は助けてくれるって思った。
「あー、わかりました。伝えときます。ありがとうございました。」
M子から、「母ちゃんも、それは仕方ないですねお願いしますだってよ。酷い親だなー。」
この瞬間終わったと思った。正直、ここからはショックすぎてあまり覚えてない。ただ、ひたすら謝り続けた。
何分経過した事だろうか。なんとか”生きる”チャンスを貰った。ここまで来るのに本当に何も覚えてない。ひたすら謝罪した事しか覚えてない。
そこからは携帯電話は解約、1年間かそれ以上だったか、タダ働き。学校も終わった瞬間連絡して友達とも会わずに会社に戻るという生活になった。
人間、信用するのは簡単だが、一度崩れた信用を取り戻すには何倍もの労力を要すると言う事を知った16歳の冬だった。
ひたすら働き働き働き、なんとか皆に信頼されてきた17歳の夏。
給料も貰える様になり、自分名義で携帯を契約できるようになった。本当に嬉しかった。
自分で稼いだお金で通話する友達の声が新鮮に聞こえた。自分で稼いだ金で買う服、CD、パチンコ、メシ。全てが新鮮だった。
そして時は流れ、約3年間働いたM子に認められ(?)会社を出れる日が来た。ついに地元に帰れる。前日にはおこがましくも送別会を開いてもらって居酒屋とカラオケに行った。
ジャパハリネットの哀愁交差点を号泣しながら歌った。良い思い出だ。
そして地元に帰省した俺は完全に無敵モードだった。同年代の奴らより金も持ってるし、何より経験豊富なのだ。
高校生活、青春というものこそ味わえなかったが、普通に学生時代を生きていたら経験できない事を学んでこれたと思う。
それが果たして今の自分の人生にプラスとなっているのかどうなのかは謎である。若くして”従う”という事を覚えてしまったのだから。
過去に遡り幼稚園の頃からその気はあったのではないかと思った。
自身、小学3年までいじめられていた事もある。当時ガキ大将だった奴に下校ルートが逆の児童館まで連行され、
到着するや否や「あとはもういいよ帰れ」と、奴は俺に言い放った。一人で無駄足を喰らい家まで帰った記憶。
中学2年か3年の時、友達と遊ぶことより部活を優先し、ハブられた(実際には自分の思い込み、そんなことはなかった)
中学卒業後はテキトーに不良ぶってた自分、母親の知り合い(M子(仮名・女性)・元暴走族・一人称が俺)の会社に強制連行され、3年間社会勉強と言う名の体験をする。
まぁ、これも家で暴れたり言うことを聞かない生活を送っている俺に痺れを切らした母親が取った最終手段だった。
その当時、M子はよく家に来ては母とたわいもない話をしてた。
母はM子に絶対的信頼を置いていて、趣味や話し方のクセ、別に不良でもないのにその類の言葉を使うようになったりと、半ば洗脳に近いものがあったような気がする。
俺が暴れたり、些細な反抗をすると開口一番
「M子に連絡するかんね」
これが母の最大の脅し文句だった。確かに自分もビビってた。なんて表現したら良いかわからないがM子は威圧感が半端じゃなかった。
毎日をのらりくらりと過ごし、家族のルールも無視、反抗的な自分を見ていた母親は次第にM子と連絡を密に取る様になって行った。そして運命の日がやってくる。M子は家にやってきた。四角いテーブルに母と自分。目の前にはM子。
「連れて行きますからね。社会勉強です。」
最初はナメていた。連行されてもすぐ帰ってこれるだろうし、ここで駄々こねれば許してもらえると。
「他人の子供預かるって事だから契約書にサインしないとだな。お母さん白い紙ありますか?」
そそくさと白のA4用紙を準備する母。
「一筆書け」
あまり記憶にないのだが、多分行ってきます的なことを書いたのだと思う。そしてM子も一筆書いた。
そして、
「ハンコ押せ」
M子はおもむろに親指の腹をカッターで切った。そして流れる血で名前の下に押印した。正直引いた。
「血判しろ」
こんなの映画でしか見たことがない。追い詰められてしまった俺は恐る恐る親指の腹にカッターの刃を当てるが、そこから先に行けない。怖い。
震える手でカッターを持つ俺を母親はどんな顔で見ていたのだろうか。
そしてなんとか親指の腹を切った自分も名前の下に血判した。
「よし。お母さん、あとは坊主にしてください」
空虚な自分を台所で泣きながらバリカンで坊主にする母親。あの時何を思っていたのだろう。
スーツを持っていない俺は学生服に着替えさせられ、そこからはもうあっという間に連行。黒のセルシオの助手席に乗せられた。
着いたM子の会社は花屋だった。葬式に飾る花を作る会社。最初はさすがに緊張していたが、先輩スタッフ達とも仲良くなり、徐々に慣れて来ていた。
自分は高校が通信制だったので、月に2回だけ地元に戻れる機会がある。学校に通い、地元の友達と遊んで、翌日の朝、電車でM子の会社へ戻るという生活だった。
当時俺には連絡をとっていた女がいた。ミキという仙台の女だ。出会い系で知り合った。年齢は17歳。
自分は18歳、車の免許ありの設定(実際は16歳)
初めて会った日、居酒屋で飲んだ。たわいもない話、空想の思い出話をミキに聞かせた。ミキは無駄に感動してた。生ハムメロンを初めて食べたのもその日だ。
酔いも回ってきた頃、当時はラブホテルにも行ったことなければ、金もない。車を持ってるなんて嘘だし、俺たちは寒空の下途方に暮れた。
今思えば、マジでクソ男だと思う。せっかく女性と触れ合う機会、泊まる場所が無いのだから。始発まで謎に公園にいた。ミキは鼻水垂らしてた。
そして、始発に乗ったミキは、「また会いたい」と言った。なんて素晴らしい女なんだ。それがホームラン級のバカだ。
多分2ヶ月後くらいか、またミキと会う事が出来た。今回は宅飲みしようと、コンビニで酒を買い込んだ。
今回ミキを連れ込んだのは俺の実家だ。これが後に爆弾の導火線に火を付けることになるとは思ってもいなかっただろう。
俺とミキは朝まで愛を育んだ。そして朝。もちろん若気の至りだ、学校など行くはずはない。楽しい時間は過ぎるのが早い。もう夕方だ。
俺はミキを駅まで送り、また会おうと約束をした。
「補習があって遅くなりました。いま電車に乗ります。⚪︎時に到着しますのでお迎えお願いします」M子の会社のスタッフに連絡をした。
迎えに来てもらった俺は、会社までの道中、女の話や最近の近況を先輩スタッフと談笑した。もちろん、学校をサボった事は言っていない。
数分後、M子の会社に到着。M子はいつも通り、「おう、おかえり。コーヒー淹れてくれ。」
俺はわかりました。とコーヒーを淹れる。一口飲んだM子から
「お前、俺に何か言うことないか?」と。
え?と言おうとした瞬間、ガラスの灰皿が飛んできた。
「てめー俺らに嘘ついて女と遊んでやがったな!なめてんのかこの野郎」
俺は一瞬で全身の血の気が引くのを感じた。これはやばいぞと。
「学校行かないで女と部屋から出てこない」と、祖母がM子に連絡をしていたらしい。当時は本気で祖母に殺意を抱いた。というか俺の家族、どんだけM子を崇拝していたのだと。
ひたすら謝る自分。M子が電話をし、退勤した他スタッフも続々と戻って来た。
「ありえない」
「裏切られた気分だ」
迎えに来てくれたスタッフは事情を知っていながらも、普段通りの対応を取っていた。大人って怖いと心底思った。
自業自得なのだがこんなに言葉が痛いと感じた事は今まで無かった。
M子は「裏切った代償はでかいぞ。もう仲間でもなんでもねーから893に売っぱらうか。若いし良い鉄砲玉になるからな」
そう言うと俺の目の前で本職に電話している。これはやばい。一生分の土下座をした。「許してください。もう一回チャンスをください!」
本職への電話の後、またM子が誰かに電話してる。
「もしもし、知ってると思いますけど、コイツ俺らに嘘ついて学校サボって女とイチャコラしてたみたいで。友達の893が若いの欲しいって言ってたんで、売りますね」
電話の先は俺の母親だった。内心、助かるって思った。親は助けてくれるって思った。
「あー、わかりました。伝えときます。ありがとうございました。」
M子から、「母ちゃんも、それは仕方ないですねお願いしますだってよ。酷い親だなー。」
この瞬間終わったと思った。正直、ここからはショックすぎてあまり覚えてない。ただ、ひたすら謝り続けた。
何分経過した事だろうか。なんとか”生きる”チャンスを貰った。ここまで来るのに本当に何も覚えてない。ひたすら謝罪した事しか覚えてない。
そこからは携帯電話は解約、1年間かそれ以上だったか、タダ働き。学校も終わった瞬間連絡して友達とも会わずに会社に戻るという生活になった。
人間、信用するのは簡単だが、一度崩れた信用を取り戻すには何倍もの労力を要すると言う事を知った16歳の冬だった。
ひたすら働き働き働き、なんとか皆に信頼されてきた17歳の夏。
給料も貰える様になり、自分名義で携帯を契約できるようになった。本当に嬉しかった。
自分で稼いだお金で通話する友達の声が新鮮に聞こえた。自分で稼いだ金で買う服、CD、パチンコ、メシ。全てが新鮮だった。
そして時は流れ、約3年間働いたM子に認められ(?)会社を出れる日が来た。ついに地元に帰れる。前日にはおこがましくも送別会を開いてもらって居酒屋とカラオケに行った。
ジャパハリネットの哀愁交差点を号泣しながら歌った。良い思い出だ。
そして地元に帰省した俺は完全に無敵モードだった。同年代の奴らより金も持ってるし、何より経験豊富なのだ。
高校生活、青春というものこそ味わえなかったが、普通に学生時代を生きていたら経験できない事を学んでこれたと思う。
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