普通の男子高校生である俺の日常は、どうやら美少女が絶対につきものらしいです。~どうやら現実は思ったよりも俺に優しいようでした~

サチ

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一学期編

第3話

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 華山から突然、本当に突然部活に入ってくれと頼まれた。

「え、俺が入るの?」

 予想もしてなかった事を急に言われたので、とてもじゃないが思考が追いつかない。確かに部活には入っていないが……。

「という事で、もし興味があるなら交流棟の四階の空き教室に放課後来て下さい。待っていますので」

 そう言うと、俺に背を向けて教室に小走り気味に帰っていく。

「あ、ちょっと待っ……行っちゃったよ」

 呼び止めた声は離れていたせいで聞こえなかったらしく、そのまま華山は行ってしまった。


✲✲✲


 時は放課後、俺は交流棟の一階にいた。
 昼休みに華山に、ここの四階に来いと言われたためだからだ。
 エレベーターが無いこの校舎の作りのために階段を使うしかなく、階段の一段目に足を置いたはいいものの、予想以上に長い。

「はぁ……はぁ……俺も歳かな。まだ10代だけど」

 駄目だ、頭の中の酸素が抜けてきて自分で1人ボケツッコミし始めた。そろそろ限界。そもそも、なんでエレベーターが無いんだ?本校舎にはあるのに、現代っ子に厳しい建物だな。
 ただひたすらに悪態をつきながら階段を登っていくと、上に4の文字が見えてきた。

「やった着いた……」

 着くなり早々に、空き教室とやらを探す。
 暗めの廊下の先に明かりのついている部屋が見えた。
 よく見てみると、教室の扉の前にPhotoClubと書いてある看板があった。
 満身創痍なその足を引きずりながら扉に手をかけ、俺は中に入った。
 中には壁に色んな写真が貼ってある。鳥や花、空や校舎なんかと色々と撮ってるみたいだ。
 その写真達の一枚の前に華山は立っていた。扉の開いた音で気付いたようでこちらを向く。

「あ、来てくれたんですね」

 まるで、本当に来るとは思ってなかったみたいな口調だった。

「まぁ部活に入ってるわけじゃないし、暇だし。来るだけ来てみたみたいな感じだ」

 そう言うと少しの間、部室内を見ていた。
 この時間帯になってくると、丁度太陽の光が入ってくるらしく電気の明かり以外に、ほのかにオレンジ色の光も混ざっている。多分、電気を消したら部室全体がオレンジ色で満たされるんだろう。

「そうだ、あなたの名前をまだ聞いてなかったんですけど。聞いてもいいですか?」

 華山に言われて初めて気付いた。
 確かに俺が名前を呼ぶばかりで、向こうから名前を呼んでなかったな。まぁ教えてなかったから呼びようがないんだけど。

「鏡坂刻、鏡に坂で鏡坂。あとは刻むでときだ」

 しっかりと分かりやすく丁寧に説明する。刻と言うだけだと、時計の方の時と勘違いする人がいるからだ。実際灯崎もそう間違えたし。

「分かりました、鏡坂君と呼びますね。さて鏡坂君、単刀直入に聞きます、なぜここに来てくれたんですか?鏡坂くんにとって、大きなメリットがあるわけではないような気がするんですけど」

 何で来たかと聞かれると、暇と言うしかないが一番の理由はそれ以外にある。

「質問を質問で返すようで悪いが聞いていいか?」

 華山は不思議に思ったのか、首を傾けつつこちらに話すように促した。

「華山は何で俺に入部して欲しいと頼んだんだ?俺以外にもクラスの奴とかいたんじゃないのか?」

 純粋にそう思う。
 俺と華山はつい先程会ったばかりだ。さらにそんな奴に入部して欲しいと頼むのは、何か理由があるのではないかと思ってしまう。
 華山の方を向くと、腕を組んだ状態で顎に指を添えながら目を閉じている。そしてこう言った。

「そうですね、違和感無く会話出来たからでしょうか」

 違和感無く会話出来たとはどういうことなのだろうか。コミュニケーションにはテクニックが必要ということなのだろうか?
 そんな事を考えていたら、華山が付け加えるようにさらに口を開いた。どうやら相当驚いた顔を俺はしていたのだろう。

「私、昔から人との関わりを持ってなかったの。だから人前で喋ることとかが苦手で。でも初対面の鏡坂君とはすぐに会話出来たから、君なら部室にいても気にならないかと思って」

 華山の言いたい事とかは色々分かった。
 が、これってさ素直に喜んでいいのか?なんか部室にいてもインテリア位にしか思われてないような気がするんだけど。

「だから、どうですか?入部……してくれますか?」

 悩ましいところだ。俺が部活に入っていないのは、面倒というのもあるが何より、他の人間に合わせるというのが嫌いなのだ。
 なら俺が入部する場合、面倒でなく、さらに必ず華山に合わせる必要もない、というのが絶対条件になる。

「華山、部活は週何日で活動してる?」

 聞くと華山は指で4日と示した。

「それは土日のどちらかも含めてか?」

 さらに聞くと華山は頷く。
 4日か。土日含めてるところを考えると、平日3日休日1日が妥当か。めちゃくちゃ楽って訳でもないが、大変って訳でもない。

「よしじゃあ最後に聞く。この部活は写真を撮る部活で合ってるよな?」

 コクリと頷く華山。

「じゃあ活動は個人でしてもいいよな?」

 個人でするという言葉に反応したのか、華山はすぐに口を挟んできた。

「個人っていうのはどういう?」

 まぁ、当然の反応だろう。個人の活動が嫌なのに、個人でしてもいいかと聞かれているのだから。

「勘違いするなよ?個人っていうのは、自分で好きなように活動するってことだ。例えば、華山が校舎の写真撮ってる時に、俺は花とか撮ったりと別の場所で活動するって事」

 華山はなにか納得したように頷く。

「つまり、私に合わせない、という事ですね」
「そういう事」

 合わせる必要がないなら、俺が部に入らないという理由もほとんど消える。それに家帰っても暇だしな。

「そういう事なら別にいいですよ?元々そういう部活のつもりだったので」

 そうなのか。
 なら条件を全て満たした。

「華山」

 俺は華山の名を呼ぶと、持ってきた鞄の中からシャーペンを一本取り出す。

「入部届け、あるか?」

 この発言が華山にとって、衝撃だったのだろう。
 元々大きい目をさらに開いている。

「入ってくれるんですか?」
「あぁ、今の話を聞く限り俺が入るのを拒む理由もないしな。だから入部するよ」

 これを聞いた瞬間、華山は凄いスピードで俺に近寄ってきた。そして手を取るなりこっちを見てる。
 なんかシャンプーのいい匂いがするんだけど。

「どうした?」

 俺は平静を装って聞いた。
 心臓の鼓動がうるさいのは気のせい。
 そして華山はとびきりの笑顔で

「ありがとうございます!」

 そう言ったのだ。
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