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第8話 空の青さは(後篇)
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「――つまり、『チーズ』と発音すると口角が上がって笑顔になることから、写真を撮る時の掛け声が『はい、チーズ!』なのです」
「成る程。よく理解できました。そしてこのチーズバーガー、食べやすい上にとてもおいしいですね」
チーズバーガーを一口食べたマークは、真剣な表情で感想を口にした。どうやらチーズを食べたことはあっても、チーズバーガーを食べるのは初めてだったらしい。
ここは、街中にあるハンバーガーチェーン店。時刻は13時30分を過ぎたところだ。スカイツリー近辺の商業施設で食事を取ろうとした二人だったが、お昼時でどの店もかなり混雑していたため、スカイツリーから離れて散策していたところ、こちらの店に行き着いたのだった。
雪花も手元のハンバーガーにかぶりつき、懐かしい味を堪能する。学生時代はそのリーズナブルさも手伝ってよく利用していたものだ。
一方で「マークにジャンクフードを食べさせるなんて……」と古内に怒られるのではないかと、少々不安が過る。
彼女はきっとこの店にマークを連れて来ないだろう。もしかしたら、彼女自身この店に行ったこともないかも知れない――午前中に一度逢っただけなのに、初対面のインパクトのせいで想像は広がるばかりだ。
――まぁ、平日に社食で野菜摂ってるし、たまにはいいよね。
あまり考えても仕方がない。食器を使わずに食べられるハンバーガーは、マーク本人が言った通り食べやすいし、選択肢の一つとして問題ないはずだ。
気を取り直して、雪花は目の前のマークに向き直る。規則的なペースでポテトを食べるマークが、それに気付いて顔を上げた。
「マークさん、まだ門限の18時まで時間があります。今日、他に何かやりたいことはありますか?」
マークが考えるような仕種をする。暫く悩んだ末に、彼は少し申し訳なさそうな表情をした。
「すみません。今日はスカイツリーを楽しみにしていたので、あまりその先のことまで考えていませんでした……」
その言葉に、雪花は小さく笑う。そんなに楽しみにしてくれていたのであれば、企画した甲斐があったというものだ。
「滞在している間にできるだけ地球の文化に触れてみたいとは考えているのですが」
「地球の文化ですね、わかりました」
雪花はスマホを取り出し、検索を始める。何か当てがあるわけではないが、きっとこの文明の利器はいいアイデアを提供してくれるに違いない。
文化的なものといえば、何があるだろうか。マークの体力を考えると、できるだけ北千住までの帰り道の間に済ませられるものがいい。博物館、美術館、それとも――
不意に、手早く画面をスクロールしていた雪花の動きが、はたと止まった。
「……セツカさん?」
マークが声をかけると、雪花が思い出したように再度スマホの操作を始め――そして、満足気な笑みを浮かべる。
「マークさん、いい所を見付けました」
そして遅めの昼食を終えた二人は、小さな映画館の前に立っていた。
「この映画館では、過去の名作映画のリバイバル上映を行っています。時間的にも丁度良いですし、地球の文化に触れることにもなるはずです」
マークが雪花に顔を向ける。その表情は、期待の色に満ちていた。
「セツカさん、ありがとうございます……すごく楽しみです」
「どういたしまして」
笑顔を返す雪花は――しかしてその一方で、一抹の不安を抱えていた。
何故なら、今日の上映作品は雪花も観たことがないものだからだ。いわゆる『名作』と呼ばれている作品なので存在は知っているものの、なかなか観る機会に恵まれず、ここまで来てしまった。
移動中に解説などを見た限りでは、そんなに問題のある内容ではなさそうなので大丈夫だろう。それに、マークにとってもタイムリーな内容に違いない。
「そろそろ時間ですね、行きましょう」
雪花とマークは、二人で映画館に足を踏み入れていった。
第8話 空の青さは (了)
「――つまり、『チーズ』と発音すると口角が上がって笑顔になることから、写真を撮る時の掛け声が『はい、チーズ!』なのです」
「成る程。よく理解できました。そしてこのチーズバーガー、食べやすい上にとてもおいしいですね」
チーズバーガーを一口食べたマークは、真剣な表情で感想を口にした。どうやらチーズを食べたことはあっても、チーズバーガーを食べるのは初めてだったらしい。
ここは、街中にあるハンバーガーチェーン店。時刻は13時30分を過ぎたところだ。スカイツリー近辺の商業施設で食事を取ろうとした二人だったが、お昼時でどの店もかなり混雑していたため、スカイツリーから離れて散策していたところ、こちらの店に行き着いたのだった。
雪花も手元のハンバーガーにかぶりつき、懐かしい味を堪能する。学生時代はそのリーズナブルさも手伝ってよく利用していたものだ。
一方で「マークにジャンクフードを食べさせるなんて……」と古内に怒られるのではないかと、少々不安が過る。
彼女はきっとこの店にマークを連れて来ないだろう。もしかしたら、彼女自身この店に行ったこともないかも知れない――午前中に一度逢っただけなのに、初対面のインパクトのせいで想像は広がるばかりだ。
――まぁ、平日に社食で野菜摂ってるし、たまにはいいよね。
あまり考えても仕方がない。食器を使わずに食べられるハンバーガーは、マーク本人が言った通り食べやすいし、選択肢の一つとして問題ないはずだ。
気を取り直して、雪花は目の前のマークに向き直る。規則的なペースでポテトを食べるマークが、それに気付いて顔を上げた。
「マークさん、まだ門限の18時まで時間があります。今日、他に何かやりたいことはありますか?」
マークが考えるような仕種をする。暫く悩んだ末に、彼は少し申し訳なさそうな表情をした。
「すみません。今日はスカイツリーを楽しみにしていたので、あまりその先のことまで考えていませんでした……」
その言葉に、雪花は小さく笑う。そんなに楽しみにしてくれていたのであれば、企画した甲斐があったというものだ。
「滞在している間にできるだけ地球の文化に触れてみたいとは考えているのですが」
「地球の文化ですね、わかりました」
雪花はスマホを取り出し、検索を始める。何か当てがあるわけではないが、きっとこの文明の利器はいいアイデアを提供してくれるに違いない。
文化的なものといえば、何があるだろうか。マークの体力を考えると、できるだけ北千住までの帰り道の間に済ませられるものがいい。博物館、美術館、それとも――
不意に、手早く画面をスクロールしていた雪花の動きが、はたと止まった。
「……セツカさん?」
マークが声をかけると、雪花が思い出したように再度スマホの操作を始め――そして、満足気な笑みを浮かべる。
「マークさん、いい所を見付けました」
そして遅めの昼食を終えた二人は、小さな映画館の前に立っていた。
「この映画館では、過去の名作映画のリバイバル上映を行っています。時間的にも丁度良いですし、地球の文化に触れることにもなるはずです」
マークが雪花に顔を向ける。その表情は、期待の色に満ちていた。
「セツカさん、ありがとうございます……すごく楽しみです」
「どういたしまして」
笑顔を返す雪花は――しかしてその一方で、一抹の不安を抱えていた。
何故なら、今日の上映作品は雪花も観たことがないものだからだ。いわゆる『名作』と呼ばれている作品なので存在は知っているものの、なかなか観る機会に恵まれず、ここまで来てしまった。
移動中に解説などを見た限りでは、そんなに問題のある内容ではなさそうなので大丈夫だろう。それに、マークにとってもタイムリーな内容に違いない。
「そろそろ時間ですね、行きましょう」
雪花とマークは、二人で映画館に足を踏み入れていった。
第8話 空の青さは (了)
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