始まりと終わりを告げる鐘

ガーネット・F・グレイ

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一番目から始まる

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 Aは彷徨っていた。
何故今まで彷徨っていたのか本人には分からない。
けれど、理由があるとするなら。
13番目の国のことで国中が話題だった。通り過ぎ去る人も皆13番目の国の話題でそれしかなかった。
国の娯楽が、国探しに変わる。
 Aはーー宝探しに浮かれているかのような国民を鼻で笑う。
馬鹿馬鹿しい。13番目の国民ですらない癖に。
 Aは13番目の国を知らない。
だが、きっとろくな所では無いと勘が告げていた。
路地裏を曲がるとそこには立ち憚る人間。どうやらろくでもない連中しかいないらしいこの1番目の国とやらは。

一緒に来てもらおうか。君にも悪い話ではない。何悪いようにはしない。
大人は皆同じことを言うけれど、一度もそれを聞いて得なんてなかったよ。
それは君が出会っていた大人が偶然そうだっただけさ、我々と一緒にしてもらっては困る。

この大人は弁が立つ。口が回り、頭も良いのだろう。
癪に触るが、後をついて行く。

おっと、ガムが落ちてるから気をつけて。

Aはガムをわざと踏み、ネチャアとした所で大人の革靴にガムが付いた革靴を擦り付けた。

言うのが遅いわ、間違えて踏んだじゃない。貴方の靴にも同じようなことしてあげる。

革靴の上にガムがついた大人。
革靴の下にガムがついた少女。

大人にとって少女は都合が良い、頭が弱い少女。
そう思いアイスを奢ると、少女は遠慮せずバニラのアイスを買ってもらい、近くにいた子供に渡す。

良いのかい。君の分だぞ。
分け合うこと知らないのね。それ一口で十分よ。

大人がまだ食べていないアイスを一口貰い、

さあ、私に話って何。ろくでもなかったら財布を空にするわよ。
困ったなあ。このチョコはもう食べれない、君にあげよう。

得意げにチョコを頬張る。
少女は最初からチョコを目当てにしていた。

チョコが欲しいなら買ってあげたのに。
興味ないの、自分のものに。
美味しい?
ええ、ハンカチある?
あるよ。

少女の頰に付いたチョコをハンカチで拭う。

私のことは「B」って呼んでくれ。
あら良い名前ね、どうせ偽名でしょうけれど。
あはは、君の事が気に入ってくる自分に参るよ。呼び捨てで良いだろうか?
どうせ私の名前はお役人に知れ渡ってるわ、それより。
13番目か。
ねえ、どこまで噂が広がってるの?
 
AはBに身体を近付ける。
距離が近づきBは囁く。

良いのかい? 嫌いな大人に媚び売って。
あはは、私貴方大好き。ロリコンじゃなさそうな所とか。
どうだろうね。
良いわよ、慣れてるし気にしないわ。
嘘を言い聞かせるのは感心がないんだ。君は嘘と本当を交えるのが得意そうだね。
・・・ふふっ。
楽しい?  大人を掌で転がすの?

コップをAが人差し指で撫でる。

好きよ、B。
それで落ちるのは特殊な人間だけだよ、 A?

 Aは震え出す。

貴方も他の大人と一緒よ。気安い言葉掛けるな!
A、君の出自には理解がある。辛いなんて言わない。君が必要なんだ。
私が頭悪いのは知ってるわ、それに付け入る大人は嫌い。
A、君は僕を好きと言ってくれたね、なら私は全て君に明け渡して良い、君には僕の全てを明け渡しても良い。

Aの震えが止まる。代わりにお役人だと思っていたBの事を「何者なのだろう」と如何様にも表せない感情、そう、微妙という言葉で見つめる。

B、貴方は。
13番目を見つけてくれたら、良い事を教えようーーそう、彼は言っていた。

路地裏を溜まり場にしている娼婦の待遇だとは思えないほど、彼は私に良くしてくれた。

けれど、不満はある。

真実とは無関係な、全てなのかな・・・。
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