伝説の勇者と学園無敵の少女

ノイ

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1章 学園編

四話

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「ふぅ……」

俺は大きな校内でやっとの思いでトイレを見つけることに成功した。そして、トイレをしているのが今の状況だ。

「戻るかな」

ここに来るまでに結構時間を消費してしまったために急いで体育館に戻らなければ編入式が再開してしまう。ここで、また迷ったら笑いものだがそれがないようにしっかり覚えてきたのだ。

「ハァハァハァ……着いた」

覚えていたと言っても距離は変わらない。こんな広い場所で走ったのだ疲れるのが当たり前。しかし、その全速力のおかげで編入式再開には間に合いそうだ。

「すいません……」

再度謝りながら俺は自分の席まで行く。しかし、あの時と違ったのはそこに先客が居たところだ。

「すいません……俺の席なんですけど」

もうすぐ編入式も再開する。このままでは俺だけ座っていない状況で始まるということもあり得るかもしれない。目立つことは最小限にしたいのだ。

「はぁ?俺は今、こいつと話してるんだけど」

後ろの席にはこの俺の席に無断で座っているやつの友達らしい人がいた。しかし、話しているのはわかる。どうして俺が来ているのに退かないのか疑問に思う。

「もう始まるんすけど」

「知らねぇーよ」

顔をよく見ていなかった俺だが、そこでやっと俺はその人の顔を見る。そこで思い出す。この人が誰なのかを……。

「お前……王子か?」

「そうさ……!俺はえらい。だから退かない。完璧だろ」

後ろの席の人は笑っている。しかし、俺は笑えなかった。そして、何が完璧なのかさっぱり理解できなかった。

「もうどいてくれないかな?」

「お、王子だと知ってて愚弄するきか……」

王子とか俺は興味がない。というか、この学園に入った時からみんなこの学園の僕《しもべ》になるのだ。王子でもそれは変わらない。

「おいっ!そこ……もう再開するから黙れ」

そう聞こえてきた方を見た俺たちは恐怖を覚える。見た方にはこっちを鋭く睨んでいる生徒会長がいるのだ。顔は良い。しかし、さっき怒鳴った姿を見ていると恐怖の対象でしかなくなる。

「げ……生徒会長だ」

俺よりも恐怖を感じていた王子は慌てて自分の席に戻る。捨て台詞を言って……。

「覚えてろよー」

怯えて逃げてる奴にそんなこと言われても一切怖く感じない。それよりも怖く感じるのはまだ俺の方を睨んでいる生徒会長だった。

「君……が、悠一くんか。問題起こさないでくれるかい」

俺の名前は逆木原《さかきばら》悠一《ゆういち》。しかし、俺は今日が編入初日だ。名前を知っている人はいないはずなのだ。一部を除いては……。

「どうして、俺のこと知ってるんですか?」

疑問に思った。俺を知っている人はほとんどいない。王都にいた時お世話になった方々は知っているだろうが、この学園最強だろうが俺が王都にいたときにはこいつと関わったことがないのだ。

「編入試験の結果を見せていただきました」

そこでどうして俺の名前を知っていたのか理解した。この学園では生徒会長が全てを仕切っている。生徒会長の上にいるのは学園長ただ一人なのだ。教師も生徒も逆らうことが許されない。そして、編入式も全て生徒会長が任されている。経歴やこの学園に入るための動機など生徒会長が知っていても何の不思議もない。

「はぁ……それで名前知っていたんですね」

「はい」

「それで……何ですか?」

もう始まるといっていたくせに所定の位置に戻ろうともしない。ずっと俺を睨んでいるのだ。なので、俺は少し意地悪なことを言ってみることにした。

「……生徒会長。ずっと俺の顔を見て、惚れたんですか?」

「な……///」

顔を真っ赤にしてさっきより鋭く睨み始めた。恐れられているといってもしょせんは何個か上の少女なのだ。そんな顔をされるとギャップ萌えしてしまいそうだ。

「もう戻ります」

「そうですか」

俺の顔をずっと見ていて何を言おうとしていたのか分からなかったが、生徒会長は堂々と歩いて副会長の後ろに付いた。

「では、編入式を開始します。まずは編入生代表挨拶」

すると、女性がステージに立ち始めた。クールな生徒会長とは違い、キュートな彼女は挨拶を始めた。

「編入式という、こんな………」

編入生代表の挨拶が始まった。ありきたりなことしか言っていなかったが、体育館にいた生徒は皆、その女子生徒の魅力に魅了されていた。生徒会長だったらこんなことにはならないだろう。

「これで編入式を終わりにします。クラスはわかっていると思うので移動してください」

この席順もクラス通りなのだ。なので、もうクラスや出席番号はわかっている。副会長のその言葉により、編入生は移動を開始した。
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