伝説の勇者と学園無敵の少女

ノイ

文字の大きさ
5 / 18
1章 学園編

五話

しおりを挟む
「ここか……遠かった」

この学園は広い。それだけでも距離はあるというのに俺のクラスF組の場所は体育館から一番遠い位置にある。

「俺の席は……」

俺は黒板に貼ってあったプリントを見た。そこには、席順が書かれていた。俺の席はど真ん中ではっきり言って嫌な席だったが、変えてもらうのは不可能だと感じ静かに席がある方まで歩いて行った。

「よっこらしょ」

席に座った。すると、無駄にチャラそうな隣の男子生徒が話しかけてきた。

「俺の名前は、進藤《しんどう》涼だ。よろしく」

「あぁ……。俺は逆木原《さかきばら》悠一《ゆういち》だ」

急に挨拶をしてきたのは相手の方なので俺が自己紹介しなくてもいいんじゃないか?とも思ったが目立ちたくない俺はしっかりと挨拶をしておくことにした。

「おぅ……そうか。君が、あの悠一君か」

このクラスは全員編入生なのだ。ということは、あの体育館にいたということ。あんな場所で生徒会長と話していたら知っている人がいてもおかしくない。

「はぁ……すごいよな。悠一は……」

「何が?」

初対面で呼び捨てというのは失礼という人もいるかもしれない。しかし、俺はそんなことを気にしていない。

「だって……あの生徒会長だよ。可愛くても怖くて近寄れないよ」

この学園にはそういうやつが多い。お近づきになりたい。しかし、あの目力が怖くて近寄れない人が多いのだ。

「そうか?別に怖くねぇーだろ」

「すげーな」

その言葉を言うと涼は感心していた。その時の俺には生徒会長はただの可愛らしい少女でしかないとしか思えなかった。

「ホームルームを始める。担任の坂本《さかもと》賢一郎《けんいちろう》だ。よろしく」

涼がもっと話したがっていたがそんな話す暇はなく担任の先生が教室にやってきた。超体育会系のその人は体育か実技どっちかの担当だな……と俺は思っていた。

「実技を担当している。今日も授業があるからよろしくな」

今日は3時間授業がある。その中で2時間の授業を占めているのが実技だ。この学園では実技がとても重視されている。そのため、1日に1時間は必ず実技の授業が入っているのだ。

「では、ホームルームを終わりにする。一、二時間目は……実技か。まぁ、ここで待っててくれ」

実技をやるところは基本実技塔で行われる。しかし、今日は初ということで案内から始まるらしい。まだ、行ったことはないがパンフレットを見る限りとても大きいようだ。


キーコーンカーンコーン

学園に一時間目開始のチャイムが鳴り響いた。そのチャイムがなり終わるのと同時に賢一郎先生は教室に入ってきた。

「じゃあ、移動すっか」

今から実技塔にいくらしい。我ながらどんな施設なのか、どんな大きさなのかを考えるだけでワクワクしていた。

この学園には塔と呼ばれるものが3つある。教室塔、実技塔、部活塔の3つだ。教室塔はすべての教室が入っているためにすごく大きい。部活塔は行ったことがないので分からないが……。そして、今向かっているのが実技塔だ。

F組から実技塔に行くには相当の時間がかかる。そして、実技塔に着いたのは授業開始から10分後のことだった。

「でっか……」

着くと実技塔を見渡した。この学園に来た時もデカイと思ったが実技塔はそれを超える驚きが俺の中にはあった。

「入るぞ」

驚いていると賢一郎先生が実技塔に入っていったので、それにつられたようにF組の生徒は続々と実技塔に入っていった。俺も含めて……。

「広いな……」

教室塔が広いのはわかる。しかし、ここはずっといる場所ではなく授業で一時間くるくらいの場所なのだ。なので、こんなに広くする理由がよくわからない。

「悠一……!施設が充実してるぞ」

俺が涼と出会ってからこんなに元気よく、目が輝いている姿は初めてみた。それぐらい嬉しいのだろう。それは、涼だけの話ではない。クラスメイト全員が喜んでいる。俺はというと、あまり興味がないためにそこまで嬉しくなかったが……。

「じゃあ。授業始めるから、着替えてこい」

この学園には指定の体育着があるのだ。赤と黒のデザインで結構かっこよく、評判がいいのだ。

「悠一、行こうぜ」

「あぁ……」

そして、俺たちは体育着に着替えるために更衣室に向かった。

更衣室の広さも広かった。こんな場所を広くしなくてもいいんじゃないか?とも思っていた。そんなところにお金をかける必要性が感じない。

「着替えるかな」

お金をそんなにかける必要性が感じないというのは正直な感想だ。しかし、便利というのも感想なのだ。この更衣室だって生徒一人一人のロッカーが用意されている。

「悠一。行こうぜ」

俺は着替え終わり、涼も着替え終わったようだ。俺は涼に言われてすぐに返事をした。

「あぁ……」

そう言い、俺は涼の後についていった。授業を受けるために……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...