伝説の勇者と学園無敵の少女

ノイ

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1章 学園編

七話

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「では、始めようか」

俺がそう言うと相手のクラスメイトが俺に向かって走ってきた。相手の武器は普通の剣。他の武器と比べて特化している部分もないが剣は全てが程よい。バランスタイプなのだ。

「余裕こいてられんのは今のうちだ」

相手は強がっている。それは見て分かるくらい顔に出ているのだ。確かにもうこの段階で武器を決めている人は少ない。ただ、本当に戦場で戦ってきている人の方が圧倒的に少ないのだ。

「ツバメ返し!」

クラスメイトが俺に向かってツバメ返しを放ってくる。切れ味抜群でその辺にあるブロックなんか真っ二つになる始末だ。

「あぶねっと」

俺は避け回った。俺の身体能力が優れているからってこの技を食らえば真っ二つになりかねない。それは避けたい俺は必死に逃げ回る。

「おいおい。逃げてるだけじゃ勝てねーぜ」

相手はツバメ返ししか出来ないのか?と思い始めていた。この練習試合が始まってからもう10分が経過している。30分の試合でこれを使った回数がすでに20回を超えているのだ。

「俺もそろそろ行くかな……」

さっきまで俺は逃げるというよりも避けるという方が正しかったが、今は来る方向がわかっているかのようにまっすぐに当たらないように直進している。

「くそっ……!」

習いが定まっていない相手は俺にかすることすら出来ていない。そして、ついに俺は、行動に移った。勝つための……。

「じゃっ!行くよ」

俺は、逃げるように直進に走っていたのを止めて、相手の前に立ちつくした。

「じゃあ……行きますよ」

行くことを宣言する。普通ならこんな宣言をするのは自殺行為だ。しかし、俺は、わざとそんなことを言ったのだ。

「な、なめやがって」

予想通りの反応を男は見せた。悔しがるその顔には勝つこと以外にも他の感情があるようにも思えた。

「ではでは、行きます」

俺は余裕そうにそう宣言した。すると、目の前に立っている男に向かって全速力で走っていく。距離はそこまで遠くない。

「ツバメ返しっ!」「ツバメ返し!」「ツバメ返し!」

男は俺に向かって一生懸命ツバメ返しを繰り返す。だが、一つも当たらない。確かに命中してる。しかし、俺のところに来ると必ず軌道が変わるのだ。不思議に思った俺以外の生徒、先生、俺に攻撃している男たちは、俺の方をよく見る。そこである一人の生徒が放った言葉によって気付いたのだ。

「あ、あいつ……ツバメ返しを剣で弾きかえしているぞ」

普通ならありえない。俺以外の人たちは俺に注目する。そこでやっと気付いた。本当に俺がツバメ返しを普通の剣で弾きかえしているということを。

「そんなことができるのか……」

「嘘……だろ?」

みんなが唖然とし、その場に立ち尽くしている。このツバメ返しという技を軌道を変えることなんて人間には到底できないのだ。

「お、お前何者だ」

スピードも大して出ていないため、男も逃げればよかったもののツバメ返しを返したという事実により、逃げることすらできなかった。

「俺かい?普通の編入生だよ」

俺はいつもはあまり見せない笑顔を見せた。それが恐ろしかったのか余計に硬直してしまった男はそこにいた。

「降参です」

俺に降参を進めていた男が自分で降参をしている。そのことにより、俺の勝利が決まった。そこで俺は気付いた。

………あ、ヤバイ。

目立ってはいけないはずだったのに俺の周りにはいつの間にかたくさんに人にあふれている。それも悪い気はしないが卒業できなくなったら来夏さんに会わせる顔がない。

「……では、今日の授業はここまでだ。教室に戻るように」

そう先生が言うとクラスメイトは教室に戻っていく。俺も戻ろうとしたところにある生徒が俺に話しかけてきた。

「あなたの正体……知ってますよ」

ニコニコと笑っているその少年は今まで思ったこともないほど恐ろしいものだった。
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