伝説の勇者と学園無敵の少女

ノイ

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1章 学園編

十二話

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トーナメント開始からもうすでに2週間を切った。
俺はもう参加表明を提出したので来週発表のトーナメントの組み分けを待っている。この学園のトーナメントは少し変わっている。人数が多いときは特に変わっている。

普通トーナメントといったら負けたら終わりというのが当たり前だ。だが、この学園は10人くらいの少人数の組に分けてそこで総当たりを行う。

そして、勝った数が多い人2人が決勝に残ることができる。2人を選出したらそこでトーナメントを作るということになっている。

勝った数など全てを見比べて審査員が決める。それがこのトーナメント戦でのルールとなっている。

まだ組み分けを発表していない状況でこの学園では優勝を推測している人が多くいる。それが参加しない人でもこのイベントに参加できるこの学園のいいところだと思う。

「そうそう、シュウくんは出ないの?」

俺は寮の自室でルームメイトのシュウに話しかけている。だが、返事はない。この部屋にいないようだ。

「あれ?さっきまでいたのにな」

そうついさっき、10分前までは俺と一緒にこの部屋で読書を楽しんでいた。シュウくんはいつも急にどっか行く。

「いるけどね……!」

俺は声のした方向に思いっきり向いた。そこにはシュウが立っていた。気配を消す能力は波半端なものではない。

「シュ、シュウくんいたの?」

ここまで気配を消されるとすごいと思うのと同時に恐ろしく感じてしまう。

「うん。さっきトイレから戻ってきたらなんか独り言言っていたから……」

すごくうつむいている。いないことを知らずに話していたことを聞いていたとは恥ずかしい。すごく恥ずかしい。

これはわざとなのかそれともただの天然なのか俺にはわからない。その時だった。廊下が騒がしくなったのだ。

「どうしたんだろう?」

トーナメント戦の発表は来週だ。それなのにこんなにざわめくことといったら十貫の王のことくらいだろう。だが、十貫の王がこんな寮に来るとは思えない。

「おいっ!トーナメントの発表があったらしいぞ」

そう言う声が聞こえた。それはおかしい。この学園はこの日に出すと決めればその時以外はやらない。しかし、その方針も変えかねない存在がいる。

十貫の王だ。

発表されたということは十貫の王が関わっているのは間違いないだろう。しかし、何のためにだ?俺が考えたところで大した答えは出なかった。

「俺らも行くか」

「はいっ!」

俺たちはその貼り出されたという場所に向かった。俺がいる2階ではなく、1階に貼り出されているらしい。俺たちは階段を早歩きで降りていった。

発表されていた場所はすごく人が多かった。人によって「あー!もうだめだ……」とか話しているのが耳に入る。その人は多分有力候補の人がグループにいるのだろう。

「俺は……?」

俺はたくさんの人がいる中を押し切って書いてあるプリントが見えるところまで押し通った。すると、すぐに俺の名前は見つかった。

「え……マジか」

俺の名前があるグループにはこの学園ランキングが上位の人ばっかりだった。まぁ、俺のランキング自体が低いからしょうがないか。

「よろしくなっ」

俺は声がした方向を振り向いた。そこには俺と同じグループの馬場先輩がいた。学園ランキングは25位と俺より圧倒的に高い。

「は、はぁ……」

その圧倒的な存在感に驚いた。だが、それよりもこの前の事件についてものすごく引っかかっている。あの組織がここまで大きく動くことはこれまでなかった。しかも、この学園に仕組んできたということはこの大会も危ないと言わざるおえない。

「よろしくお願いします」

おれはあいさつをすると自分の寮室に戻った。そこにはもうシュン は帰ってきていた。まぁ、十貫の王だし、参加しないから当たり前か。

「大変そうだね。まぁ、頑張ってくれよ」

他人事みたいに言う。まぁ、実際他人事なんだが。この人の笑顔を見るのなんか落ち着く。母親の笑み的な。

俺たちはもう1週間前に迫った大会が楽しみでしょうがなかった。もう戦わないと思っていた俺。戦いの楽しさがここまで込み上げてくるとは。

俺は小さい頃から『ヒーロー』に憧れていた。

強くてかっこいいヒーロー。だが、なることができないと知った時の絶望感は今でも鮮明に覚えている。

だが、少しでも国のために……。少しでも国人のために。

俺たちのチーム『アスファルト』は英雄になった。俺たちの心には深い傷が残ったけれど。
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