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なんか出ました
しおりを挟む「ちょっと!あんな自然現象をなんとかしろって無茶苦茶言わないでよ!っていうか、逃げるべきじゃないの!?」
「あれが、見えるのですね!?さすがは聖女様!あれは怨念の塊で、人々の悪しき思いが魔素に宿り、聖地を汚そうと向かってくるのでございます。我らも助力を尽くして払ってまいりましたが、その力は強大でもはや太刀打ちもできません。其処で召喚陣を組んで呼び出しましたところ、あなた様が呼び出しに呼応してくださり、今に至るわけでございます」
「呼ばれてないし、応じてもないわよ!人違いよ!」
トイレの中で呼び出された覚えは、断固としてない!
「いいえ、あなた様の魔力は確かに聖魔力。しかも稀に見ない強力さ。さあ、どうぞ遠慮なくその膨大なお力でもって消し去ってくださいませ!」
「そ、そんなこと言われたって、無理!私、魔力なんて持ってないから!」
おかしい。この人達はみんな洗脳されているかのようにおかしい!
VRって本当は危険なんじゃない?ヘッドセットはどこよ!
「ジャハール!無事か!?」
アワアワしていると、後ろから走り込んで来る人の声が響いた。
振り向くと其処には、黒マントでフードを被った人々がいた。
その中でも先頭にいる人がめっちゃでかい。2メートル以上あるんじゃない?遠近感がおかしいわ!
肩幅めっさあるし。逆三角形ってこういう人のことを言うのね。胸板厚そうだわ~。つねっても滑っちゃうのかしら。筋肉モリモリ。普通に知り合ってたら『おっ好みかも』とか思っちゃうけど、残念。
あ、でも顔、こわい。ギリシャ人(の彫刻)並に彫り深いし。鼻たっか!目が見えないじゃん、影作ってるよ。なのに、なにその眼光?睨まれてるのわかるのに、目が見えないってどういうこと?
はあ。も、やめようよ。
勘弁してほしい。
私はがっくりとうなだれた。疲れたよー。家帰りたい。なんでこんな変な人たちに巻き込まれてんのさ。もう、ホント今日は厄日!
「そいつは…」
「ムスターファ!この方は聖女です!」
「……奇怪な服を着てるが、役に立つのか?」
「な、何を失礼な!あなたにもわかるでしょう!この稀なる魔力が!前回の聖女様だって、王子が悪さをしなければ十分役に立つ魔力を持っていたのに……!」
ジャハールが一瞬私の顔色を見て、真っ赤になって黒マントに叫んだ。
いや、奇怪って、白黒マントのあんた達よりマシだよ。
でもね、黒マントの北斗の○よ。そいつ呼ばわりは気に入らないけど、正解よ。私じゃ役に立たない。諦めてくれ、神官長様よ。これは明らかに人違いだ。
「前回の聖女は尻軽の阿呆だっただけだろう。女!聖女の力は使えるのか!?」
使えるわけないでしょ!と思ったものの、口に出すのはなぜか憚れた。役に立つのかと問われて、ちょっとムカッとしたのは仕方がない。『女だから』とか『役に立たない』という言葉に過剰に反応してしまう年頃なのよ。決して、黒マントの視線が怖かったからではない。あの粗チンと違って、これに暴力を振るわれたら、勝てるわけもないし。っていうか死ぬよね、私。
白マントと黒マントが言い合っているのを見て、ここに召喚されたのは自分が初めてじゃないんだとわかった。以前にも召喚をして、『尻軽の阿呆』と言われた聖女がいるらしい。もしその人が私のように召喚されたのなら当然、何を言っているのかわからないこの人達に力を貸せるはずもなく。或は、こんな厨二症の男たちにホイホイと自分を差し出したおバカさんだったか。
どちらにしても、女が軽く見られてる感が強い。拉致して誑かしたのはそっちじゃないのか?
って、そんなこと言ってる間に竜巻、すぐそこまで来てるじゃない!どうすんのよ、逃げるのならとっととしてよ!
「女!」
「ああ、もう!女、女うるさいわね!聖女の力って何よ!できるわけないでしょ!やったことないんだから!勝手に呼び出しておいて何偉そうに言ってんのよ!」
「ならば教えてやる!手を前に出せ!」
「て?」
「こうするんだ!浄化!」
黒マントの男が何かを叫んで竜巻に向かってフンッと両の手を突き出す。その掌から何やら白い光が飛び出したが、バチッと音を出して竜巻に弾かれてしまった。
「チッ!でかすぎて効きやしねえ!」
あ、それ。なんだっけ。ほら、昔ファイティング・ゲームで見たことある。
波動拳みたいなやつ?
ねえ、ちょっと笑えるんだけど?
私は着物の裾を気にするも、足を肩幅より少し大きめに開き、波動砲を引き出すかのように構えた。そうそう、ボールをイメージして砲丸投げの要領で。丹田に力を込めて、腰を落として。
『波動拳!』
なーんちゃって。
ギュボオォォォォォォォォォォォォォーーーーー!!!
あまりの衝撃に、私は後ろに吹き飛ばされひっくり返り、放射された巨大な光の玉は、うねりを上げて竜巻にぶち当たり、ぐわっと包み込むと霧散した。
「ひぇ………?」
なんか、出た。
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