冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美

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魔女の家

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 どのくらい歩いただろうか。

 エリザベス改めリジーは、ぶるりと両の腕を擦った。

 気温がおち、雪がちらほらと地面に積もっている場所まできた。一度大きな蛇と出会したものの、蛇の方がギョッとして逃げ出していったため、エリザベスはホッと息を吐き、当然追いかけることもなく、一本過ぎを目指して急足を進めた。サクサクを歩を進めて行く。ウサギや大きな鹿にも出会ったが、幸いハンターが狩ってくれた兎があり、食べ物にはすぐには困らない。リジーが通り過ぎるまで、こちらの様子を伺っていたようだが、しばらくすると茂みの中へ戻っていった。途中で果物の実る木を見つけ、いくつかもぎ取り背負い籠に入れる。食べてみるとそれは甘酸っぱく、果汁が口の中に溢れた。

「美味しい…」

 果物を丸齧りをするなんて考えたこともなかったが、貴族の常識などを気にする人はもうここにはいない。村の子供達がリジーの口調を真似て「食べてくださいまし」と言って飯事をしていたのを思い出すと、ふふっと笑いをこぼし、リジーは鼻歌混じりに山を登る。

 陽はまだ天にあるものの、おそらくは午後に入っているのだろう。リジーのお腹がぐう、と小言を言ったその直後、開けた場所に突然足を踏み入れた。

「……あった」

 村の家の屋根より高いであろう、大きな広葉樹に抱き込まれるようにしてその廃屋はあった。広葉樹は青々としげり、大きなオレンジ色のウリのような実がたくさん垂れ下がっている。小ぶりの実は青くイボがついていて、リジーの鼻とそっくりだ。

「嫌だわ。わたくしの鼻みたい」

 ぷっと吹き出す。

 だが、その幹はまるで廃屋を守るかのように大きく歪み、大枝を広げていた。近くには小さな池があり、周囲は開けた平地で楕円状に広がっていた。

「これが、魔女の小屋かしら…?」

 気のせいか、歩いてきた山道よりも暖かく、まるで春の野原のようだ。蝶が舞い野の花が綻び鳥が歌う。リジーは背負いカゴを肩から下ろし、思わず跪いた。

「山神セントポリオン様…お慈悲に感謝いたします」

 そう言い、大地に口付けた途端、木の幹がざわりと動き、抱え込んでいた廃屋を地面に下ろしたのだ。驚いてその場に固まるリジーだったが、「どうぞ」と言わんばかりに枝が動き、小屋の扉がぎい、と音を立てて開き…崩れ落ちた。

「……」
「……………」
「まあ…。まずは修理をしなければいけませんわね」

 うふふっと声に出して笑うと、リジーは中に入り木窓を開け、背負い籠を家の中に入れた。小屋の中は割と清潔で、ベッドが一つ、鉄釜が一つ、囲炉裏の上からぶら下がり。小さなテーブルと足の壊れた椅子が2脚あった。いろいろ修理は必要だが、ひとまず野宿だけは免れた。

「やることがたくさんありますわね」

 幸い時間はたっぷりあるし、この木の周辺は開けており、危険もなさそうだ。空気は清浄で、池の水も透き通って魚も泳いでいた。魔女様が結界を作っていたのかもしれない、とリジーは考える。

「よし。頑張るわよ」

 そうだ、とリジーは手を叩く。ここを聖域とし、広葉樹は魔女の小屋を守っていた聖樹としよう。

 七年と七ヶ月。

 ここで生き抜けるかもしれない、とリジーは希望を心に灯し、意外にも孤独や恐れはなく、ワクワクとした気持ちが胸を占めた。
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