十二輝の忍神 ーシノビガミ― 第一部

陵月夜白(りょうづきやしろ)

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14 佐野とお菊

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第七話 佐野とお菊

 城下の通りは、灰に沈んでいた。
 浅間の噴火が落とした黒い死の粉が、石畳の目地にまで詰まり、踏むたびに乾いた音が立つ。

 家々はもはや家と呼べぬ。
 崩れた土壁、折れた梁、焼け焦げた戸板が道へ突き出し、かつての暮らしの形を歪に残しているだけだった。

 逃げ惑う足音はひっきりなしに響くが、その影は薄く、どれも灰を被った亡霊のように頼りない。
 その瓦礫の大通りを、佐野政親の一行が進んでいた。

――いや、“進んでいる”というより、“押し切っている”に近い。
 前方を塞ぐ黒屍人の群れを、荒谷武蔵の鉞がまとめてなぎ払うたび、道が一瞬だけ開け、またすぐに黒い影がわらわらと湧き寄ってくる。

 武蔵は汗も焦りも見せない。
 むしろ、灰の雨と呻き声の中で、どこか愉快そうに獣じみた笑みを浮かべていた。

 鉞の刃に埋まった丑の珠が赤黒く脈打ち、振り抜くたび、重い風のうなりが街道を裂く。

「ひでぇ有様だな」
 吐き捨てるように武蔵が言った。

 その肩には、さきほど黒屍人の刃がかすめた名残の血がまだ乾ききらずに黒い筋を引いている。

 だが彼はそれを指先で拭うことすらしない。
 鉞を担ぎ直すだけで、傷など最初から無かったかのように歩を進めた。

 佐野政親は馬上で静かに周囲を眺めていた。
 扇の陰で表情は読めない。
 ただ、その眼だけが冷たく、ひとつの獲物を探す蛇のように城下をすべっていた。

 十人を超えていた家臣は、すでに半数を失っている。

 噛まれ、倒れ、灰となって風に散った者の名も、今はもう口に上らない。
 残る七人もまた、刀を握る手が震えていた。

 武士の面目を保とうと唇を噛みしめてはいるが、黒屍人がいかなる相手であるかを、この短い時間で思い知らされていたのだ。

――斬っても倒れぬ。
――痛みも恐れもなく押し寄せる。

 その現実が、彼らの心胆を冷やし尽くしていた。

 その時だった。
 灰煙の向こう、崩れた町家の影を抜けて――ひらり、と白い小袖が揺れるのが見えた。

「……おや」
 佐野の眼がわずかに細まる。

 馬の息づかいすら一瞬止まったように感じられた。
 そこにいたのは、一人の女だった。

 白い小袖は煤と灰に汚れ、袖口は掴まれた跡で裂けている。
 髪は乱れ、額には汗と血がにじむ。

 けれど背筋は折れていない。
 その眼差しは、瓦礫の地獄を前にしてなお澄んでいた。

 松平定信の妹、館林藩主奥方――お菊。

 彼女は民の流れの中でただひとり立ち止まらず、泣きじゃくる幼子の手を取り、転んだ老人の脇に腕を差し入れ、振り返っては声を張り続けていた。

「こちらへ!
 この先はまだ安全です、早くお逃げなさい!」
 声は枯れきっているのに、芯が折れない。

 その声に縋るように、逃げ惑っていた民たちが次々と彼女の背へ集まっていく。
 皆、殿の姿を見ぬまま、絶望に沈みかけていた。

 だが、目の前にこの女がいる。
 泥と灰に塗れながら、誰よりも先に走り、誰よりも最後まで踏みとどまっている。
 それだけで、人の心は“まだ生きられる”と思ってしまうのだ。

 ――城下で唯一灯る光。
 その姿は、武蔵の荒々しい鉞の閃きとは別の意味で、鮮烈だった。

「……なるほど、あれが」
 佐野は扇を口元に当て、ほとんど笑みとも呼べぬ薄い弧を刻んだ。

 視線は民ではない。
 その中心で踏みとどまる“巫女の血”だけを射抜いている。

 武蔵が鼻を鳴らした。

「ただの女じゃねぇか。
 だが……妙に気丈だな」

 家臣の一人が、息を殺して囁く。
「殿、あれは……お菊様にございましょう」

「ほう……」
 佐野の瞳が冷たく光った。

 町の喧噪が一瞬遠のき、扇の影に隠れた口元だけが、ゆっくりと歪む。

「定信の妹君にして、田保家の巫女の血を継ぐ者……
 ようやく見つけたか」

 その言葉は静かだった。
 だが、鋭い針のような確信を孕んでいた。

 民を守るために駆け回るお菊。
 その背を、灰の向こうから狙う佐野と武蔵。
 光と闇が、ついに視界の中で交わった。

――そしてその距離は、確実に縮まりはじめていた。

 お菊はなおも民の先頭に立っていた。
 瓦礫に足を取られそうになるたび、裾をたくし上げ、転びかけた子を抱き起こし、背中にすがりつく者へ短くも強い声を投げる。

 灰で喉はひりつき、指先はかじかんでいるはずなのに、彼女の動きには迷いがない。

 泣き叫ぶ幼子をひょいと抱え上げ、倒れた老婆の手を取り、肩を貸し、ひと息つく暇もなくまた前へ押し出す。

 黒屍人の影が横道から浮き上がるたび、お菊はきゅっと数珠を握りしめ、胸元で一拍、祈りの息を整える。

 ――その様子を、灰煙の向こうからじっと眺める影があった。
 佐野政親は馬上で動かない。

 扇を半ば開いたまま、目だけで町の動きを拾っている。
 黒屍人がどれほど蠢こうと、瓦礫の下でどれほど人が泣こうと、彼の視線が追うのはただひとつ――白い小袖の女の姿だけだった。

 やがて、佐野はふっと息をつき、扇をゆるりと畳んだ。
 その所作は、戦場の只中とは思えぬほど落ち着いている。

「……なるほど。やはり只者ではない」
 言葉は静かだったが、確かな熱を孕んでいた。

 ここまで混乱した城下で、なお人を導き、影を退ける女。
 噂だけでは測れぬ“巫女の血”の片鱗を、佐野は確かに見ていた。

 その横で、荒谷武蔵が黒鉄の鉞を肩に担ぎ直す。
 赤黒い光が刃の根元でぼう、と呼吸するように脈打った。
 武蔵は愉快そうに歯を見せる。

「どうする?
 俺があの女を攫ってこようか」
 声には、狩りの獣のような軽さがあった。

 “攫う”という言葉を、痛みも罪も感じぬまま吐く男らしい無造作さだ。

 だが佐野は、首を横へ振った。
 冷静に、涼しい声で返す。

「いや、まずは様子を見よう。武蔵――お前が動けば目立ちすぎる」

 扇の先で、わずかに前方を示す。

「……そこの者たち、行け」

 指名された家臣二人の顔色が、さっと変わった。

 疲労で青いのではない。
 恐怖が血を引かせた青さだった。

「さ、佐野様……」
「……あれほどの黒屍人の群れの中を……?」

 声は震え、唇が乾いて言葉がうまく繋がらない。

 数刻の間に、仲間が噛み殺され、灰になるのを幾度も見ている。
 あの群れの只中へ行けと言われた意味が、嫌でも分かるのだ。

 佐野は馬上から視線を落とし、薄く笑んだ。
 獲物を前にした笑みではない。
 人の心の折れ目を楽しむような冷ややかさが滲んでいる。

「ふん。お前たちの腕を試す良い機会だ」

 さらに一拍、わざとらしく沈黙を置き、
 追い打ちのように静かに言葉を重ねた。

「それとも、民を救う女一人に近づけぬほど弱いか?」

 家臣たちの顔が、羞恥と恐怖で歪む。

 抗えばその場で切り捨てられる。
 従えば黒屍人に呑まれるかもしれない。
 逃げ道はどこにもなかった。

 武蔵が腹の底から笑い声を上げた。
「がははは! ほら聞いたか。
 行って来い、命が惜しくなけりゃな!」

 家臣たちは互いに顔を見合わせた。
 その目に宿るのは、仲間への励ましではない。
 “どちらが先に死ぬか”を測る怯えだった。

 それでも、武士である以上、足は前へ出る。
 刀を握る指が白くなるほど力を込め、震えた膝を叱りつけるように踏みしめ、二人は灰と呻き声の渦へと歩み込んでいった。

 お菊のもとへ迫る黒屍人の群れ、その只中へ――。

 佐野は馬上から、その光景を微動だにせず見据えていた。

 瞳の奥に情はない。
 あるのはただ、冷たい計算と、確かめねばならぬ目的だけ。

「……果たして、巫女の血がどれほどのものか。
 見極めてやろう」

 扇の影で口元がわずかに歪む。

 その瞬間、城下の喧噪が遠のいたように感じられた。
 光と闇の距離が、ゆっくりと――しかし確実に、交わろうとしていた。

 「い、いや……来るなっ!」

 佐野に指を差された家臣二人は、まるで刑場に立たされた罪人のように顔をこわばらせた。

 膝が笑い、喉が乾き、唇の裏が砂を噛んだようにざらつく。
 それでも武士の矜持だけが、どうにか足を前へ押し出していた。

 刀を抜く音が、灰の空気を裂く。
 鈍い金属の鳴りが、崩れた町並みに虚しく響いた。

「お、お菊様……!」
 呼んだ声は自分でも頼りなく、情けないほど震えている。

 彼らの目に映るのは、白い小袖を灰で汚しながら、なお民を先へ導く女の背。
 だが、その背へ近づく道は――黒屍人の群れに塞がれていた。

 虚ろな目。
 灰にまみれた皮膚。
 腐臭と焼けた土の匂いをまとい、のろのろと、しかし確実に迫る十、二十の影。

 呼吸のない顔が、いっせいにこちらを向いた瞬間、
 二人の背筋を冷たいものが走った。

「ひっ……!」
 声が漏れた。

 恐怖の奥歯が、魂を噛んだ音だった。

 先の家臣が、半ば泣き声のまま踏み込む。

 胴を薙ぎ、肩を割り、刃を突き立てる――だが、斬ったはずの肉は血を噴かない。

 裂け目は黒い泥のようにぐずり、灰の粒となって崩れ、次の瞬間には“もとの形”へ粘つくように戻っていく。

「ど、どうなってる……!」

 刃が骨に当たる感触は確かにあった。
 腕を砕き、首を断ち、胸を抉った。

 それなのに――倒れない。止まらない。
 黒屍人は痛みを知らぬもののように、ただ距離を詰めるだけだ。

「斬っても……斬っても……!」

 叫びが空を震わせた、その次の瞬間だった。

 影が一斉にうねった。
 まるで飢えた群狼が獲物に飛びかかるように、家臣の身体へ押し寄せ、巻き付き、掴み、噛みついた。

「う、うわぁぁぁっ!」

 悲鳴は、途中で喉の奥へ折れ曲がった。

 黒屍人の牙が首筋へ食い込み、肩が裂け、胸が潰され、体は白い灰と黒い灰に混じって、ぐずぐずと崩れていく。

 “死”というより、存在そのものがほどけてゆくような消え方だった。
 残ったのは、風に舞う黒い粉と、じっとり湿った焼けた匂いだけ。

 もう一人の家臣は、それを見た瞬間、完全に足が止まった。

「……ひ、退け……!」

 声は命令にも祈りにもならず、ただの嗚咽に変わる。

 刀の柄が汗で滑り、指が震え、刃先が空を切った。
 目の前の黒屍人が、ゆらりと首を傾けた。

 次の刹那――
 ガブリ。
 牙が首筋に沈む、湿った音。

 家臣の目が見開き、口が無言で何かを叫び、その全身から力が抜けた。
 崩れ落ちるより早く、黒い影に呑まれ、やがて――灰になった。

 ほんの数呼吸の出来事だった。
 だが、その数呼吸の間に、二つの命は消え、
 町の恐怖はさらに濃く沈んだ。

 お菊は、すぐ近くでそれを見ていた。
 見殺しにしたわけでも、助けを求めなかったわけでもない。

 ただ――彼女にできることは、民を守り、逃がすことだけだった。

 お菊は一歩も退かない。
 眼差しは濁らず、震えもない。
 むしろ、死の渦が近いほど、その背は凛と張りつめていく。

「下がって! 早く走って!」

 声が割れる。

 小さな体のどこにそんな力があるのかと思うほど、
 叫びは瓦礫の通りを貫いた。

 数珠を両手で強く握り、胸元で祈りを結ぶ。
 まるで己の血まで珠へ流し込むように、息を吐き、言葉を紡ぐ。

「……退け。
 この者たちに触れるな。
 退けぇっ!」

 祈祷の言葉に合わせ、数珠が朱にきらめいた。

 黒屍人の動きが、ほんの一瞬、鈍る。
 わずかな足止め。
 だが、そのわずかが、民を生へ押し戻す。

 お菊はその隙に、泣き叫ぶ子を抱え上げ、足をもつれさせる女の腕を引き、自分の背よりも重い老爺を支えて前へ押し出す。

 髪は乱れ、頬は煤に汚れ、肘の傷から血がにじんでいた。
 それでも彼女は先へ進ませる。
 己が折れるより先に、民の道を折らせぬために。

 その光景を、灰煙の向こうから佐野政親は眺めていた。
 馬上の姿勢は崩れない。

 扇の陰で表情は読めないが、瞳だけが静かに動く。

「……なるほど。
 命を削ってでも、人を守ろうとするか」

 淡い感心の色と、冷たい計算が同じ声に混じる。

 その言葉は、賞賛でも同情でもない。
 見定める者の口調だった。

 武蔵は喉奥で笑った。
 鉞の柄を握り直し、肉厚の肩を鳴らす。

「がはは!
 面白ぇ女だな。……ますます欲しくなってきたぜ」

 欲望のままの声。
 飢えと力と血を同じ器で語る男らしい、率直すぎる言葉。

 佐野の扇が、ふっと止まった。
 瞳が細く、刃物のように光る。

「まだだ。
 もう少し、見せてもらおう」

 ゆっくりと、愉しむように続ける。

「……彼女がどこまで持つかを」

 灰の風が強く吹いた。
 黒屍人の唸りが、町の奥から押し寄せる。

 光の中心の女と、闇を操ろうとする男たち。
 その距離は、また静かに縮まっていった。

 お菊の周囲を黒屍人が取り囲んでいた。
 民を逃がし続けた彼女は、膝が笑い、息を吸うたび胸の奥が焼けるようだった。

 声はすでに枯れ、喉の奥でかすれるたび血の味がする。
 それでも数珠を高く掲げ、祈りの言葉を絞り出す。

「……退け!」

 朱の光は、蝋燭の火のように弱々しい。
 揺らめきはするが、黒屍人の群れはもはや怯まない。

 灰を踏み、瓦礫を鳴らし、虚ろな眼でじりじりと距離を詰める。

「お菊様、もうお逃げを!」

 民の叫びは、泣き声と同じ色をしていた。

 だが、お菊は首を振らない。
 背後には、泣きすがる子供たちと、動けぬ老人がいる。

「……大丈夫……。
 ここで、終わらせは……しませぬ……」

 震える足で、なおも立ち尽くす。

 黒屍人が一斉に身を低くした。

 ――飛びかかる、刹那。

 遠くからその様子を見つめる佐野政親は、扇をゆるりと閉じた。
 冷たい声音で、ただ一言だけ吐き捨てる。

「……死なれては困る」

 隣で鉞を担いだ武蔵が、喉の奥で笑う。

「どうする? あれじゃあ嬲り殺しだぜ」

 佐野の目が細く光った。
 小さく目配せする。

「……武蔵、行け」

 武蔵は鉞の柄を握り直し、足を踏み出した。
 巨体が灰を巻き上げ、黒屍人の群れへ突入しようとする。

 ――その、さらに一歩手前。

「どけえぇぇぇっ!」

 雷鳴のような怒号。
 横合いから、まるで山が崩れるような衝撃が襲った。

 ズドン――!

 巨槌が街道に叩きつけられ、石畳が跳ねた。

 黒屍人三体がまとめて砕け、粉のような灰になって吹き散る。
 一瞬で開いた空白に、冷たい風が突き抜けた。

 舞い上がる灰煙の向こう――
 そこに立っていたのは、音羽鉄之介だった。

 肩は怒りでいからせ、背の大槌は赤黒い鼓動を帯びている。
 槌頭の珠が脈を打つたび、鉄之介の腕の血まで呼応しているかのように震えた。

 だが、本人はその不気味な力を意に介さない。
 ただ、目の前の“弱い者に牙を向けるもの”を許さぬという一本の芯だけで立っている。

「女や子供に手ぇ出すな、化けモンども!」

 吼え、踏み込む。

 黒屍人がいっせいに向きを変えるが、鉄之介は待たない。

 ぶん――!

 大槌が横薙ぎに唸り、群れの胴をまとめて薙ぎ払う。
 灰と腐臭の塊が宙へ弾け、地に落ちるより先に粉々に砕け散った。

 足元には瓦礫。
 視界には灰煙。
 それでも鉄之介の動きは迷いがない。
 まるでこの地獄の通りが、自分の修羅場だとでも言うように、まっすぐ突き進む。

「お菊様!」

 名を呼ぶ声は、荒々しいのに不思議と温かかった。

 鉄之介は一歩でお菊の前へ出て、背で民と彼女を庇う。

「もう大丈夫だ。
 ここから先は――俺がやる」

 お菊は、息を詰めたまま彼の背中を見上げる。

 煤と血と灰の世界で、その背だけがやけに鮮やかに映っていた。

 武蔵は一瞬立ち止まり、目を細めた。
 自分より先に飛び込んだ大男を、面白そうに眺める。

「……ほう。俺より先に飛び込むか」

 佐野は扇を口元に当て、薄く笑った。

 その笑みには苛立ちも、興味も、両方が混じっている。

「計算外、というのも……悪くはないな」

 灰の中、二つの巨影が並び立つ。

 一つは獣のように笑う怪物。
 一つは弱き者の盾となる槌の男。

 黒屍人たちは、二人の間でうねり、
 新たな殺気の中心へ、ゆっくりと吸い寄せられていった。
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