146 / 416
第9章 フォレスト国
第146話 理想
しおりを挟む
「お久しぶりでございます、お兄様方」
「お、お前…………」
「本当にリースなのか?」
「はい。正真正銘、私はリース・フォレスト本人にございます。決して偽物などではございません」
王子達から思わず口をついて出た驚きと疑いの言葉は目の前にいる件の人物が偽物だと疑ってかかっていることに起因している訳ではなかった。それは単純にリースの雰囲気が大きく変わりすぎていた為である。落ち着きと上品さが以前とは比べ物にならないぐらいになっており、ただ立っているだけで絵になるような煌びやかさがそこにはあった。およそ同居しないはずの儚さと力強さもそこから感じ取ることができ、彼女が少し動くだけでそれを目で追ってしまうような美しさも兼ね備えていた。
「たった1ヶ月でどうしてこうも…………」
口から零れてくるのは制御しきれない本音であり、現在の状態がいかに異様であるかをはっきりと示していた。城を出て行く直前に見た時は幼さと不安の色が強い顔をしており、どこか辿々しい立ち振る舞いであった。それが今ではどうだ。この目の前に立つ少女は今までとは打って変わって自信に満ち溢れた表情をしており、漂う緊張感をものともせずにしっかりと立っている。一体彼女に何があったのか。今すぐにでも問いただしたい衝動に駆られ、ディースは思わず口を開いた。
「リース、お前に一体何が……………」
「フォレスト王!」
「何だ?」
しかし、それはリースの一声によってかき消されてしまった。タイミングが悪かったのか、はたまた自分のことなど眼中にないのか。どちらにせよ、発言がなかったことにされた悔しさと恥ずかしさからディースは顔が赤くなった。それを見たエースはしたり顔でどこか満足そうにしている。
「どうか私にも真意を明かすことをお許し下さい!」
「何を言うのかと思えば……………当然だ。お前も歴とした後継者候補。ディースとエース同様、その権利はお前にもある」
「ご配慮痛み入ります」
「うむ。では聞かせてもらおうか。お前の真意を」
「はい。私が目指す国家は……………平和な国家です」
「は?」
「平和……………だと?」
険しい顔をする王子達を無視してリースは続ける。
「私が王になった暁には誰もが毎日を幸せに生きていける、そんな国にしていきたいと思っています。とは言ってもそんなことはただの綺麗事。理想が高すぎると皆、思うことでしょう。並大抵の運営ではその為に多くの代償を支払うことになりますし、デメリットが大きいです。しかし、私はそれでも目指したいのです!人々が手を取り合って笑い合う素晴らしい国家を……………たとえ未だかつて前例がなかったとしても」
「ふ、ふざけるな!そんな御伽噺のようなことが現実でできると思うのか!」
「そうだ!俺達を馬鹿にしているのか!…………いきなり、現れて何を言い出すのかと思えば」
「ではお聞き致しますが、お兄様方の目指される国家が上手く存続していくとお思いですか?」
「「当たり前だろ!そんなの」」
「そこには国民と冒険者の方々の暮らしや感情は含まれておりますか?」
「なっ!?」
「そ、それは…………」
「お兄様方の考え方では国の者全員を肉体的または精神的に疲弊させ、困窮させ、人として幸せに生きていくという権利すらも奪ってしまいます。そこまでして存在する国家に価値などあるのでしょうか?」
「「……………」」
「だから、私はたとえ周りから変な目で見られようが、頭のおかしい者だと蔑まれようがこの考え方を貫き通したいんです」
「だ、だがお前も先程言っていたではないか!そんなのは綺麗事だと!理想が高すぎると!勇気と無謀は違うぞ!できもしないことに無策で突っ込むのは大馬鹿者のすることだ!」
「私はきっとできると信じておりますし、それに……………無策という訳でもありません」
「何?」
「だって、そんな国家運営に関わるのは私が幼い頃より尊敬し信頼しているディースお兄様とエースお兄様ですから!ほら、無策ではないでしょう?」
「「…………は?」」
「お、お前…………」
「本当にリースなのか?」
「はい。正真正銘、私はリース・フォレスト本人にございます。決して偽物などではございません」
王子達から思わず口をついて出た驚きと疑いの言葉は目の前にいる件の人物が偽物だと疑ってかかっていることに起因している訳ではなかった。それは単純にリースの雰囲気が大きく変わりすぎていた為である。落ち着きと上品さが以前とは比べ物にならないぐらいになっており、ただ立っているだけで絵になるような煌びやかさがそこにはあった。およそ同居しないはずの儚さと力強さもそこから感じ取ることができ、彼女が少し動くだけでそれを目で追ってしまうような美しさも兼ね備えていた。
「たった1ヶ月でどうしてこうも…………」
口から零れてくるのは制御しきれない本音であり、現在の状態がいかに異様であるかをはっきりと示していた。城を出て行く直前に見た時は幼さと不安の色が強い顔をしており、どこか辿々しい立ち振る舞いであった。それが今ではどうだ。この目の前に立つ少女は今までとは打って変わって自信に満ち溢れた表情をしており、漂う緊張感をものともせずにしっかりと立っている。一体彼女に何があったのか。今すぐにでも問いただしたい衝動に駆られ、ディースは思わず口を開いた。
「リース、お前に一体何が……………」
「フォレスト王!」
「何だ?」
しかし、それはリースの一声によってかき消されてしまった。タイミングが悪かったのか、はたまた自分のことなど眼中にないのか。どちらにせよ、発言がなかったことにされた悔しさと恥ずかしさからディースは顔が赤くなった。それを見たエースはしたり顔でどこか満足そうにしている。
「どうか私にも真意を明かすことをお許し下さい!」
「何を言うのかと思えば……………当然だ。お前も歴とした後継者候補。ディースとエース同様、その権利はお前にもある」
「ご配慮痛み入ります」
「うむ。では聞かせてもらおうか。お前の真意を」
「はい。私が目指す国家は……………平和な国家です」
「は?」
「平和……………だと?」
険しい顔をする王子達を無視してリースは続ける。
「私が王になった暁には誰もが毎日を幸せに生きていける、そんな国にしていきたいと思っています。とは言ってもそんなことはただの綺麗事。理想が高すぎると皆、思うことでしょう。並大抵の運営ではその為に多くの代償を支払うことになりますし、デメリットが大きいです。しかし、私はそれでも目指したいのです!人々が手を取り合って笑い合う素晴らしい国家を……………たとえ未だかつて前例がなかったとしても」
「ふ、ふざけるな!そんな御伽噺のようなことが現実でできると思うのか!」
「そうだ!俺達を馬鹿にしているのか!…………いきなり、現れて何を言い出すのかと思えば」
「ではお聞き致しますが、お兄様方の目指される国家が上手く存続していくとお思いですか?」
「「当たり前だろ!そんなの」」
「そこには国民と冒険者の方々の暮らしや感情は含まれておりますか?」
「なっ!?」
「そ、それは…………」
「お兄様方の考え方では国の者全員を肉体的または精神的に疲弊させ、困窮させ、人として幸せに生きていくという権利すらも奪ってしまいます。そこまでして存在する国家に価値などあるのでしょうか?」
「「……………」」
「だから、私はたとえ周りから変な目で見られようが、頭のおかしい者だと蔑まれようがこの考え方を貫き通したいんです」
「だ、だがお前も先程言っていたではないか!そんなのは綺麗事だと!理想が高すぎると!勇気と無謀は違うぞ!できもしないことに無策で突っ込むのは大馬鹿者のすることだ!」
「私はきっとできると信じておりますし、それに……………無策という訳でもありません」
「何?」
「だって、そんな国家運営に関わるのは私が幼い頃より尊敬し信頼しているディースお兄様とエースお兄様ですから!ほら、無策ではないでしょう?」
「「…………は?」」
20
あなたにおすすめの小説
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜
KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。
主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。
ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。
果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる