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第9章 フォレスト国
第148話 約束
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「俺はシンヤ・モリタニ。冒険者をしている者だ」
誰もが呆気に取られる中、青年は悠然と立ちながら、そう名乗った。艶やかな黒髪に整った顔立ち、身に付けている黒衣も他では見られない代物だった。周りにいるメンバーも同じ装いをしており、青年同様、落ち着き払った佇まいである。現在、今の今まであった緊張感は彼らの圧倒的な存在感・プレッシャーによって上書きされ、完全に支配されていた。見た目やこの状況を作り出した手腕から、彼らがあの邪神を討ち滅ぼした英雄達でまず間違いがなさそうなことは誰の目から見ても明らかだった。そして、王子達が驚愕と困惑から立ち直るよりも早くシンヤは次の言葉を発していた。
「俺はここにいるリース・フォレストから"この国を救って欲しい"と依頼を受けた為、現在この場にいる。知っての通り、俺には圧倒的な力がある。とはいえ国民や王族の気持ちを無視して、全て武力で解決しようとしても上手くいくはずがないし、仮に邪魔な者を排除して新たな王を誕生させたとしてもそれは一時的な解決にしかならず、本当の意味でこの国を救ったことにはならない」
「「……………」」
「だから、まずはリースが王子達に問い掛けた。心の奥底に隠した本当の想いを、2人の絆を……………。そして、それがもしリースの望みと合致するようであれば、俺が手助けしよう」
「「っ!?」」
「"そんなことが!?"って顔をしているな。ああ、可能だ。あと何故、俺がそもそも依頼を引き受けたかだが…………理由は単純だ。俺がリースの力になりたいと思っているからだ」
「何だと!?」
「お前にとってリースとは一体なんなんだ!?」
「仲間であり、家族だ。家族が困っていたら、助けるのは当然だろ?」
「「……………」」
そこから数分経った後、王子達は声を揃えてこう言った。
「「…………本当にいいのか?」」
「ああ」
「「…………ありがとう」」
直後、王子達の目から涙が溢れた。とめどなく流れるそれに対し、王子達は気付くのに少し時間を要した。緊張の糸が切れたのかもしれない。それはこの日だけの話ではなく、これまでの日々の分も知らず知らずの内に溜まっていたのだろう。自身が幼い頃、漠然と思い描いていた理想を仕舞い込み、急遽用意した偽物を掲げ、奮闘する日々。しかし、苦しみ悩み足掻く内にいつしか偽物を本物だと思い込むようになっていた。そんな時、別の地にいるはずの義弟が目の前に現れ、自分達の本当の想いが露わとなった。ところがその想いは容易く叶えられるものではなく、再び失意の底に沈みかけた…………はずであった。邪神を討ち滅ぼし世界を救った英雄が現れるまでは。彼ならば、もしかすると……………伝え聞く噂や功績からだけではない。こうして直接話をしてみて王子達は何か感じるものがあった。自信満々な言動や堂々とした佇まい、圧倒的なオーラ。彼になら任せられる。彼にぜひ手を貸して欲しいと……………
「…………すまない」
「見苦しい姿を見せた」
「もう涙は止まったか?」
「ああ。そして、改めて名乗らせてくれ」
「手助けしてもらう相手に名乗り返しもしないのは礼に欠いている」
「そうか。じゃあ頼む」
「失礼する」
そう言って深呼吸した王子達はシンヤをしっかりと見据えて挨拶をした。
「私はディース・フォレスト。フォレスト国第一王子だ」
「私はエース・フォレスト。フォレスト国第二王子だ」
そこから少し間が空いてから、はっきりとこう言った。
「「目指す国家は……………誰もが笑い合い幸せに過ごすことのできる国家だ!!」」
「ああ」
「「その為には色々と足りない部分がある。頼む。この国の為に力を貸してくれ!!」」
「もちろんだ。約束しよう。可能な限り、力を貸すと」
その後、王子達とシンヤは固い握手を交わした。周りではシンヤの仲間であるカグヤ達がハイタッチを交わし、王と女王は一部始終を見て満足そうに頷いている。一方、側近や何のことかいまいち理解していない貴族達は呆然と立ち尽くしていた。そんな中、一部の貴族達は殺気の篭った視線をシンヤ達に向け、自然と拳に力が入っていたのだった。
誰もが呆気に取られる中、青年は悠然と立ちながら、そう名乗った。艶やかな黒髪に整った顔立ち、身に付けている黒衣も他では見られない代物だった。周りにいるメンバーも同じ装いをしており、青年同様、落ち着き払った佇まいである。現在、今の今まであった緊張感は彼らの圧倒的な存在感・プレッシャーによって上書きされ、完全に支配されていた。見た目やこの状況を作り出した手腕から、彼らがあの邪神を討ち滅ぼした英雄達でまず間違いがなさそうなことは誰の目から見ても明らかだった。そして、王子達が驚愕と困惑から立ち直るよりも早くシンヤは次の言葉を発していた。
「俺はここにいるリース・フォレストから"この国を救って欲しい"と依頼を受けた為、現在この場にいる。知っての通り、俺には圧倒的な力がある。とはいえ国民や王族の気持ちを無視して、全て武力で解決しようとしても上手くいくはずがないし、仮に邪魔な者を排除して新たな王を誕生させたとしてもそれは一時的な解決にしかならず、本当の意味でこの国を救ったことにはならない」
「「……………」」
「だから、まずはリースが王子達に問い掛けた。心の奥底に隠した本当の想いを、2人の絆を……………。そして、それがもしリースの望みと合致するようであれば、俺が手助けしよう」
「「っ!?」」
「"そんなことが!?"って顔をしているな。ああ、可能だ。あと何故、俺がそもそも依頼を引き受けたかだが…………理由は単純だ。俺がリースの力になりたいと思っているからだ」
「何だと!?」
「お前にとってリースとは一体なんなんだ!?」
「仲間であり、家族だ。家族が困っていたら、助けるのは当然だろ?」
「「……………」」
そこから数分経った後、王子達は声を揃えてこう言った。
「「…………本当にいいのか?」」
「ああ」
「「…………ありがとう」」
直後、王子達の目から涙が溢れた。とめどなく流れるそれに対し、王子達は気付くのに少し時間を要した。緊張の糸が切れたのかもしれない。それはこの日だけの話ではなく、これまでの日々の分も知らず知らずの内に溜まっていたのだろう。自身が幼い頃、漠然と思い描いていた理想を仕舞い込み、急遽用意した偽物を掲げ、奮闘する日々。しかし、苦しみ悩み足掻く内にいつしか偽物を本物だと思い込むようになっていた。そんな時、別の地にいるはずの義弟が目の前に現れ、自分達の本当の想いが露わとなった。ところがその想いは容易く叶えられるものではなく、再び失意の底に沈みかけた…………はずであった。邪神を討ち滅ぼし世界を救った英雄が現れるまでは。彼ならば、もしかすると……………伝え聞く噂や功績からだけではない。こうして直接話をしてみて王子達は何か感じるものがあった。自信満々な言動や堂々とした佇まい、圧倒的なオーラ。彼になら任せられる。彼にぜひ手を貸して欲しいと……………
「…………すまない」
「見苦しい姿を見せた」
「もう涙は止まったか?」
「ああ。そして、改めて名乗らせてくれ」
「手助けしてもらう相手に名乗り返しもしないのは礼に欠いている」
「そうか。じゃあ頼む」
「失礼する」
そう言って深呼吸した王子達はシンヤをしっかりと見据えて挨拶をした。
「私はディース・フォレスト。フォレスト国第一王子だ」
「私はエース・フォレスト。フォレスト国第二王子だ」
そこから少し間が空いてから、はっきりとこう言った。
「「目指す国家は……………誰もが笑い合い幸せに過ごすことのできる国家だ!!」」
「ああ」
「「その為には色々と足りない部分がある。頼む。この国の為に力を貸してくれ!!」」
「もちろんだ。約束しよう。可能な限り、力を貸すと」
その後、王子達とシンヤは固い握手を交わした。周りではシンヤの仲間であるカグヤ達がハイタッチを交わし、王と女王は一部始終を見て満足そうに頷いている。一方、側近や何のことかいまいち理解していない貴族達は呆然と立ち尽くしていた。そんな中、一部の貴族達は殺気の篭った視線をシンヤ達に向け、自然と拳に力が入っていたのだった。
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