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第11章 軍団戦争
第225話 軍団戦争4
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「組員をただの一般兵と一緒にするな!
必ず2人以上で相手をしろ!それから容
姿で侮るな!子供だろうがAランクはあ
るんだ!」
"碧い鷹爪"の|軍団長《レギオンマス
ター》、ブレスの言葉が周囲に響き渡
る。冒険者を始めて、かれこれ20年以
上。今までいくつもの難関を乗り越え、
その度に喜びや後悔を味わってきた彼。
若い頃は己の力不足と不甲斐なさに悩ん
で挫折を経験したこともある。しかし、
その都度、諦めず歯を食いしばって立ち
上がり、前を見て突き進んできた。そこ
から年月が経ち、彼も中堅冒険者の仲間
入りを果たした時、ふと気が付いて周り
を見渡してみるとそこにはいつの間にか
多くの仲間で溢れていた。そして、その
数は次第に増えていき、やがては20も
の傘下を従える巨大な|軍団《レギオ
ン》へと成長を遂げていた。そこまでく
ると流石に余裕が生まれ、今度は今まで
自分を散々コケにした冒険者達への復讐
心が芽生えた。それからというもの、お
礼参りという形でいくつものクランを襲
撃し、力で以って降伏を促してきた。結
果、クランを解散する者や冒険者自体を
廃業する者、どこかへと逃げ延びる者な
ど様々だったが中でも目の色を変え、忠
誠を誓ってきた者達に限っては傘下へと
迎え入れ、仲間として扱った。そんな中
で迎えたのが今回の|軍団戦争《レギオ
ン・ウォー》である。事前に傘下がいく
つか軍団から抜けたりし
たものの、ほぼ万全な状態で臨むことが
できると確信していたブレス達。しか
し、そんな自信は舞台となる場所へと着
いた瞬間、崩れ落ちた。
「何なんだ、これは……………」
現場の光景を目の当たりにしたブレスの
第一声がそれだった。映像の魔道具があ
るのはまだいい。縄張りとなっている地
域へと戦いの映像が映し出されるのだか
ら。彼らにも戦況がどうなっているのか
知る権利は当然ある。ところが、本来い
るはずのない人物達がこぞって見学しに
きているのには流石に理解が及ばなかっ
た。"赤虎"や"大風"、"麗鹿"と呼
ばれる有名な高ランク冒険者。それと彼
女達に関係するクランや冒険者達、"笛
吹き"は審判を務める都合上仕方がない
とはいえ、さらっとそこに紛れてギルド
の記者までいる始末。これだけの大物達
が見学という形でこの場に居合わせるの
が通常ではあり得ないことで着いて
早々、余計に頭を働かせなくてはならな
かった。だが、それも彼らが現れるまで
だった。まだ視界にも入らない段階か
ら、威圧感を遠くの方から少しずつ感
じ、彼らの姿がようやく見え出した頃、
それははっきりとしたものになった。そ
して、大地を踏みしめながら、ゆっくり
と向かってくる彼らを見て、自分達はと
んでもない者達に喧嘩を売ってしまった
んじゃないかと思い始めてしまったの
だ。確かに"黒天の星"の個々の冒険者
ランクの高さは知っていたし、傘下も急
成長を遂げていると聞き及んではいた。
しかし、自分達…………特にブレス自身
は20年も冒険者をしているベテラン。
ぽっと出の後輩なんぞに遅れは取らない
と息巻いていたのだ。それがどうだ。こ
うして目の前に来て、彼らを視界に納め
た瞬間、今まで持っていた勝利のビジョ
ンが霞んでしまった。ただただ対峙して
いるだけで相手がぽっと出なんかでない
ことは容易に想像できたのだ。とすると
仲間達への口上が真剣味を帯びた注意喚
起となってしまうのは必然といえよう。
そこに普段のブレスが持つ余裕を仲間達
が感じ取れなかったのも致し方ないこと
だった。
「お前らは幹部を頼む。俺は奴
を…………"黒締"を叩く!」
「「「「「了解!お気を付け
て!」」」」」
あちこちで仲間達の悲鳴や怒号が飛び交
う中、ブレスは信頼のおける古くからの
仲間達に背中を預け、敵の将を討つべく
動き出した。途中途中、傷ついた仲間が
目に入り、立ち止まりかけるが心を鬼に
して、真っ直ぐ突き進んでいく。どのく
らいそうしていたのだろうか。気が付く
と倒れ伏した者達で溢れた場所へと辿り
着いた。不思議なことに一切被弾することなく。倒れているのが仲間達だらけな為、
思わず、目を覆いたくなったがどうにか
堪え、目の前へと視線を向けた。そこか
ら、とてつもない殺気を感じたからだ。
するとそこには案の定、ブレスが今一番
求める人物が口角を吊り上げながら、立
っていた。
「待ってたぞ」
「……………1つ聞く。この者達はお前が
やったのか?」
「だったら、どうする?」
「"黒締"……………俺はお前を許せそう
にない」
「なんか台詞だけ聞いてるとお前の方が
正義の味方っぽいな」
「当然だ。お前の身なりと口調は悪役そ
のものだ。というより、お前は悪そのも
のだ」
「ば~か。正義か悪かなんて、立場によ
って変わるんだよ。どっちかといえば、
お前から喧嘩を売ってきたんだから、悪
はお前だろ」
「うるせぇ!俺は最近、調子に乗ってる
後輩を痛めつけてやろうとしただけ
だ!」
「本音ダダ漏れだな。ってことはそこに
転がってるお前の仲間って、結果お前の
せいでこうなってんじゃん。馬鹿な親に
振り回された子は可哀想だな」
「貴様!愚弄する気か!」
「いい気迫だな。よし、そのままかかっ
てこいよ」
そう言うとシンヤは刀を抜き、切っ先を
地面へと向けた。
「せっかく待っていたんだ。すぐに終わ
るなよ?」
直後、鋭い斬撃がブレスへと襲い掛かっ
た。
必ず2人以上で相手をしろ!それから容
姿で侮るな!子供だろうがAランクはあ
るんだ!」
"碧い鷹爪"の|軍団長《レギオンマス
ター》、ブレスの言葉が周囲に響き渡
る。冒険者を始めて、かれこれ20年以
上。今までいくつもの難関を乗り越え、
その度に喜びや後悔を味わってきた彼。
若い頃は己の力不足と不甲斐なさに悩ん
で挫折を経験したこともある。しかし、
その都度、諦めず歯を食いしばって立ち
上がり、前を見て突き進んできた。そこ
から年月が経ち、彼も中堅冒険者の仲間
入りを果たした時、ふと気が付いて周り
を見渡してみるとそこにはいつの間にか
多くの仲間で溢れていた。そして、その
数は次第に増えていき、やがては20も
の傘下を従える巨大な|軍団《レギオ
ン》へと成長を遂げていた。そこまでく
ると流石に余裕が生まれ、今度は今まで
自分を散々コケにした冒険者達への復讐
心が芽生えた。それからというもの、お
礼参りという形でいくつものクランを襲
撃し、力で以って降伏を促してきた。結
果、クランを解散する者や冒険者自体を
廃業する者、どこかへと逃げ延びる者な
ど様々だったが中でも目の色を変え、忠
誠を誓ってきた者達に限っては傘下へと
迎え入れ、仲間として扱った。そんな中
で迎えたのが今回の|軍団戦争《レギオ
ン・ウォー》である。事前に傘下がいく
つか軍団から抜けたりし
たものの、ほぼ万全な状態で臨むことが
できると確信していたブレス達。しか
し、そんな自信は舞台となる場所へと着
いた瞬間、崩れ落ちた。
「何なんだ、これは……………」
現場の光景を目の当たりにしたブレスの
第一声がそれだった。映像の魔道具があ
るのはまだいい。縄張りとなっている地
域へと戦いの映像が映し出されるのだか
ら。彼らにも戦況がどうなっているのか
知る権利は当然ある。ところが、本来い
るはずのない人物達がこぞって見学しに
きているのには流石に理解が及ばなかっ
た。"赤虎"や"大風"、"麗鹿"と呼
ばれる有名な高ランク冒険者。それと彼
女達に関係するクランや冒険者達、"笛
吹き"は審判を務める都合上仕方がない
とはいえ、さらっとそこに紛れてギルド
の記者までいる始末。これだけの大物達
が見学という形でこの場に居合わせるの
が通常ではあり得ないことで着いて
早々、余計に頭を働かせなくてはならな
かった。だが、それも彼らが現れるまで
だった。まだ視界にも入らない段階か
ら、威圧感を遠くの方から少しずつ感
じ、彼らの姿がようやく見え出した頃、
それははっきりとしたものになった。そ
して、大地を踏みしめながら、ゆっくり
と向かってくる彼らを見て、自分達はと
んでもない者達に喧嘩を売ってしまった
んじゃないかと思い始めてしまったの
だ。確かに"黒天の星"の個々の冒険者
ランクの高さは知っていたし、傘下も急
成長を遂げていると聞き及んではいた。
しかし、自分達…………特にブレス自身
は20年も冒険者をしているベテラン。
ぽっと出の後輩なんぞに遅れは取らない
と息巻いていたのだ。それがどうだ。こ
うして目の前に来て、彼らを視界に納め
た瞬間、今まで持っていた勝利のビジョ
ンが霞んでしまった。ただただ対峙して
いるだけで相手がぽっと出なんかでない
ことは容易に想像できたのだ。とすると
仲間達への口上が真剣味を帯びた注意喚
起となってしまうのは必然といえよう。
そこに普段のブレスが持つ余裕を仲間達
が感じ取れなかったのも致し方ないこと
だった。
「お前らは幹部を頼む。俺は奴
を…………"黒締"を叩く!」
「「「「「了解!お気を付け
て!」」」」」
あちこちで仲間達の悲鳴や怒号が飛び交
う中、ブレスは信頼のおける古くからの
仲間達に背中を預け、敵の将を討つべく
動き出した。途中途中、傷ついた仲間が
目に入り、立ち止まりかけるが心を鬼に
して、真っ直ぐ突き進んでいく。どのく
らいそうしていたのだろうか。気が付く
と倒れ伏した者達で溢れた場所へと辿り
着いた。不思議なことに一切被弾することなく。倒れているのが仲間達だらけな為、
思わず、目を覆いたくなったがどうにか
堪え、目の前へと視線を向けた。そこか
ら、とてつもない殺気を感じたからだ。
するとそこには案の定、ブレスが今一番
求める人物が口角を吊り上げながら、立
っていた。
「待ってたぞ」
「……………1つ聞く。この者達はお前が
やったのか?」
「だったら、どうする?」
「"黒締"……………俺はお前を許せそう
にない」
「なんか台詞だけ聞いてるとお前の方が
正義の味方っぽいな」
「当然だ。お前の身なりと口調は悪役そ
のものだ。というより、お前は悪そのも
のだ」
「ば~か。正義か悪かなんて、立場によ
って変わるんだよ。どっちかといえば、
お前から喧嘩を売ってきたんだから、悪
はお前だろ」
「うるせぇ!俺は最近、調子に乗ってる
後輩を痛めつけてやろうとしただけ
だ!」
「本音ダダ漏れだな。ってことはそこに
転がってるお前の仲間って、結果お前の
せいでこうなってんじゃん。馬鹿な親に
振り回された子は可哀想だな」
「貴様!愚弄する気か!」
「いい気迫だな。よし、そのままかかっ
てこいよ」
そう言うとシンヤは刀を抜き、切っ先を
地面へと向けた。
「せっかく待っていたんだ。すぐに終わ
るなよ?」
直後、鋭い斬撃がブレスへと襲い掛かっ
た。
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