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第一章 運命の出会い
美少女パーティ救出
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「――いい加減にしろ!」
活気のないさびれた通りをヤマトが歩いていると、薄暗い路地裏のほうからドスのきいた怒鳴り声が聞こえて来た。
「ん?」
建物の影に隠れて様子をうかがうと、そこには商人風の身なりをしたオークと、ハンターらしき装備の女三人が言い合っていた。
彼女らの装備は、新米ハンターが身に着けるような簡素なものばかりで、お世辞にもランクが高そうには見えない。
「頼む、ピー助」
「クワッ!」
ピー助はヤマトの肩から飛び立ち、偵察に向かう。
「――どうにか待ってもらえませんか?」
「ダメだ! それでどれだけ待ったと思っている!? もうとっくに返済期限は過ぎているだろうが!」
まんまる顔の肥え太ったオークに怒鳴られ、ダークエルフらしき銀髪の少女がビクッと肩を震わせ、目の端に涙を溜めていた。
どうやら、金銭的なトラブルのようだ。
主に、オークが金貸しで、借りた女ハンターたちが返済できず交渉しているといったところか。
「そこをなんとか……」
「ダメなものはダメだ!」
「な、なんでもしますから」
「ちょっと、ハンナ!?」
ハンナという獣人らしき少女の言葉に、先頭で交渉していたリーダー格の女戦士が振り向く。
すると、オークは二ヤリと顔を醜く歪め、邪悪な笑みを浮かべた。
そして、そのイボだらけの大きな手を先頭の女戦士の胸元へ伸ばし――
「――待ってください」
「あぁ?」
突然の制止の声に、オーク手を引っ込め不機嫌そうに振り向く。
乱入したのは、人の良さそうな微笑を浮かべたヤマトだった。
その肩にはピー助が乗って、気丈にオークをにらみつけている。
「割り込んでしまってすみません。気になってしまって……なにかトラブルでもあったんですか?」
「なんだあんたは? この嬢ちゃんたちの知り合いか?」
「いいえ、通りすがりの元ハンターですよ」
「ふん、ただの同業者ってわけか。こいつら、俺から金を借りるだけ借りて、期限までに返せないって約束を破りやがったんだ」
「だ、だって……金利が高すぎて、どんどん返済額が多くなっていくんだもん!」
「黙れ!」
猫耳を生やした獣人の少女が否定するように訴えるが、オークはドスのきいた声で一喝する。
ヤマトは気の毒に思った。
目の前の男が極悪非道な高利貸しであることは想像にかたくない。
パーティーの資金繰りに困っていた彼女たちは、言葉たくみにまんまと乗せられ、通常ではありえないような金利での借金をさせられたのだろう。
「金額は?」
「……600万ウォルだ」
「え? さ、さっきは500万ウォルだってっ……」
「あぁん?」
「ひっ……」
気弱そうな銀髪の少女がオークににらみつけられ、胸の前で抱いていた弓をギュッと握る。
ヤマトはため息を吐いた。
500万ウォルだとしても、この国の人々の平均年収を軽く超えている。
しかも目の前にいる女三人組は、ハンターのようだが装備の質からして稼ぎが良さそうでない。
そんな彼女たちが生活費を稼ぎながら500万ウォルを貯めるなんて、すぐには無理だろう。
「……分かりました、僕が出しますよ」
「は?」
オークはあんぐりと口を開けて固まり、少女たちも唖然と目を丸くしている。
「おいおい、冗談よせよ。600万ウォルなんて大金、そんなポンポン出せるもんか! それも、こんな見ず知らずの他人のために。俺をからかってるんなら、営業妨害で騎士団に通報するぞ!」
「冗談なんかじゃありませんよ。ちょうど今日、利益を上げたところだったんです。証拠ならこの取引契約書で十分でしょう?」
ヤマトは肩にかついでいた小さな風呂敷から、クルクルと丸められていた一枚の紙を取り出してオークへ見せる。
「んなっ、商会への出資金の償還だと!? あ、あんたはいったい……」
「今はただの無職ですよ。はい、これが小切手です」
そう言って100万ウォルに相当する小切手を6枚渡す。
これを金庫番に持っていけば、現金と交換できるのだ。
信じられないというように、恐る恐る受け取ったオークはやがて、悔しそうな表情を浮かべて無言で去って行った。
おおかた、借金地獄から抜け出せなくなった彼女たちを奴隷商にでも売り払うつもりだったのだろう。
穏便に事が済んで、ヤマトはホッと胸をなでおろした。
「な、なにが起こったの?」
「わ、分からにゃい……」
女ハンターたちは理解が追いついていないようで、ポカンとしている。
ヤマトは爽やかな笑みを彼女らへ向け、「それじゃ」と手を振ると背を向けた。
振り向きざまに銀髪エルフの少女が視界に入ったが、彼女は可愛らしい頬を桜色に染め、感激したように目を潤ませてこちらを見つめていた。
活気のないさびれた通りをヤマトが歩いていると、薄暗い路地裏のほうからドスのきいた怒鳴り声が聞こえて来た。
「ん?」
建物の影に隠れて様子をうかがうと、そこには商人風の身なりをしたオークと、ハンターらしき装備の女三人が言い合っていた。
彼女らの装備は、新米ハンターが身に着けるような簡素なものばかりで、お世辞にもランクが高そうには見えない。
「頼む、ピー助」
「クワッ!」
ピー助はヤマトの肩から飛び立ち、偵察に向かう。
「――どうにか待ってもらえませんか?」
「ダメだ! それでどれだけ待ったと思っている!? もうとっくに返済期限は過ぎているだろうが!」
まんまる顔の肥え太ったオークに怒鳴られ、ダークエルフらしき銀髪の少女がビクッと肩を震わせ、目の端に涙を溜めていた。
どうやら、金銭的なトラブルのようだ。
主に、オークが金貸しで、借りた女ハンターたちが返済できず交渉しているといったところか。
「そこをなんとか……」
「ダメなものはダメだ!」
「な、なんでもしますから」
「ちょっと、ハンナ!?」
ハンナという獣人らしき少女の言葉に、先頭で交渉していたリーダー格の女戦士が振り向く。
すると、オークは二ヤリと顔を醜く歪め、邪悪な笑みを浮かべた。
そして、そのイボだらけの大きな手を先頭の女戦士の胸元へ伸ばし――
「――待ってください」
「あぁ?」
突然の制止の声に、オーク手を引っ込め不機嫌そうに振り向く。
乱入したのは、人の良さそうな微笑を浮かべたヤマトだった。
その肩にはピー助が乗って、気丈にオークをにらみつけている。
「割り込んでしまってすみません。気になってしまって……なにかトラブルでもあったんですか?」
「なんだあんたは? この嬢ちゃんたちの知り合いか?」
「いいえ、通りすがりの元ハンターですよ」
「ふん、ただの同業者ってわけか。こいつら、俺から金を借りるだけ借りて、期限までに返せないって約束を破りやがったんだ」
「だ、だって……金利が高すぎて、どんどん返済額が多くなっていくんだもん!」
「黙れ!」
猫耳を生やした獣人の少女が否定するように訴えるが、オークはドスのきいた声で一喝する。
ヤマトは気の毒に思った。
目の前の男が極悪非道な高利貸しであることは想像にかたくない。
パーティーの資金繰りに困っていた彼女たちは、言葉たくみにまんまと乗せられ、通常ではありえないような金利での借金をさせられたのだろう。
「金額は?」
「……600万ウォルだ」
「え? さ、さっきは500万ウォルだってっ……」
「あぁん?」
「ひっ……」
気弱そうな銀髪の少女がオークににらみつけられ、胸の前で抱いていた弓をギュッと握る。
ヤマトはため息を吐いた。
500万ウォルだとしても、この国の人々の平均年収を軽く超えている。
しかも目の前にいる女三人組は、ハンターのようだが装備の質からして稼ぎが良さそうでない。
そんな彼女たちが生活費を稼ぎながら500万ウォルを貯めるなんて、すぐには無理だろう。
「……分かりました、僕が出しますよ」
「は?」
オークはあんぐりと口を開けて固まり、少女たちも唖然と目を丸くしている。
「おいおい、冗談よせよ。600万ウォルなんて大金、そんなポンポン出せるもんか! それも、こんな見ず知らずの他人のために。俺をからかってるんなら、営業妨害で騎士団に通報するぞ!」
「冗談なんかじゃありませんよ。ちょうど今日、利益を上げたところだったんです。証拠ならこの取引契約書で十分でしょう?」
ヤマトは肩にかついでいた小さな風呂敷から、クルクルと丸められていた一枚の紙を取り出してオークへ見せる。
「んなっ、商会への出資金の償還だと!? あ、あんたはいったい……」
「今はただの無職ですよ。はい、これが小切手です」
そう言って100万ウォルに相当する小切手を6枚渡す。
これを金庫番に持っていけば、現金と交換できるのだ。
信じられないというように、恐る恐る受け取ったオークはやがて、悔しそうな表情を浮かべて無言で去って行った。
おおかた、借金地獄から抜け出せなくなった彼女たちを奴隷商にでも売り払うつもりだったのだろう。
穏便に事が済んで、ヤマトはホッと胸をなでおろした。
「な、なにが起こったの?」
「わ、分からにゃい……」
女ハンターたちは理解が追いついていないようで、ポカンとしている。
ヤマトは爽やかな笑みを彼女らへ向け、「それじゃ」と手を振ると背を向けた。
振り向きざまに銀髪エルフの少女が視界に入ったが、彼女は可愛らしい頬を桜色に染め、感激したように目を潤ませてこちらを見つめていた。
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