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第二章 快進撃

トリニティスイーツ始動

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「――さっきは本当にごめん!」

「私も言い過ぎちゃってごめんなさい」

「出過ぎたことをして、本当に申し訳ありませんでした」

 大金を手にしたヤマトたちが、広場にある噴水の前で立ち止まると、ラミィ、ハンナ、シルフィが頭を下げてきた。
 さっきまでの迫力がウソのようだ。
 ヤマトは照れくさそうにはにかみながら告げる。
 
「ううん、別にいいよ。もし、あのまま取引してたら、安値で買いたたかれてたかもしれないし」

「わ、私も後悔はしていません」

「シルフィの言うとりだよ。あのおじさん、ヤマトくんに対して凄い失礼だったし」

 シルフィとハンナの言葉を聞いて、ヤマトはなんだか嬉しかった。
 自分のために怒ってくれたと思うだけで、心が満たされるようだ。
 しかし二人とは違い、ラミィが神妙な表情で再び頭を下げた。

「本当にごめんなさい!」

「へ? いやだから、別に気にしてないって――」

「――違う、さっきのことじゃない」
 
「どういうこと?」

「少しでも君を疑ってしまったことだよ。まさか、私たちに採取系のクエストだけをやるよう言ったのは、これが理由だったとは思いもしなかった。君に任せると言っておきながら疑ってしまい、本当にごめん!」

「別に構わないよ。理由を説明しなかった僕が悪いんだし」

「ヤマト……」

 ラミィは顔を上げ、潤んだ瞳でヤマトを見つめた。 
 ヤマトは気恥ずかしくなって目をそらす。
 
「それにしても、凄い大金だよねぇ~」

「はい、100万ウォルは超えていますよね? なんだか夢みたいです!」

 ハンナとシルフィは、興味津々に巾着袋に詰まったウォル通貨をのぞき込んでいた。
 それを見てラミィは問う。

「でも、ヤマトはどうしてこの状況を早くに予想できたんだ?」

「情報を集めるのが少し得意なだけだよ」

 さすがに情報源を明かすことはせず、ヤマトはごまかそうとした。鳥と話せると言っても混乱させるだけだ。
 すると、両肩の上でポゥ太とピー助が自慢げに鳴く。
 それを見てシルフィは「可愛い」と頬を緩ませた。
 彼女がポゥ太の頭を撫でると、ポゥ太は気持ち良さそうに目を細める。

「ヤマトくんは、いつも小鳥ちゃんを肩に乗せてるよね」

「うん、友達なんだ」

「へぇ、なんか素敵だな」

「はいっ、ヤマトさんは素敵な方です。憧れちゃいます」 

 三人から羨望の眼差しを向けられ、ヤマトは頬を少し赤くしながらも、咳払いして話をそらす。

「さてと……ハンターとして活動していくのに十分な資金は調達できた。ハンターに必要なのは金だ。でも、まだ焦っちゃいけない。今の相場が落ち着きを見せ始めてから、僕たちの新たな戦いを始めよう」

「「「はい!」」」

 三人は活気に満ち溢れた表情で頷いた。

 そしてそれから一週間、地道な準備をしながらも極力出費をしないよう耐えに耐え、ようやく疫病の特効薬が開発されるに至った。
 それにより、ヴァルファームを始めとした資源国で経済活動が再開し、資源価格は下落して安定。
 トリニティスイーツはついに動き出す。
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