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第四章 『ヤマト運用商会』結成

商会結成!

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 とうとう準備を整えたヤマトは、その日、商会を立ち上げた。
 その名も『ヤマト運用』商会。
 顧客から資産を預かり、それを様々な投資先や金融商品へ替え、長期的な資産の保全と増大をはかるべく運用する商会だ。
 商会の会員はまだ会長のヤマトだけとなっている。
 
 ヤマト運用の開業初日、アークの紹介や掲示板での宣伝に興味を持った客が一人、また一人と来店していた。
 ヤマトはカウンターの中央に立ち、その右ではシルフィが、左ではマヤが受付をしてくれている。
 初日の混雑にそなえ、臨時で雇ったのだ。
 ラミィとハンナも店内のすみで成り行きを見守り、アーク商会からはアークとシーアが訪れていた。

「ヤマトさん、当商会の資産をよろしくお願いします」

「はい、喜んで!」

「ヤマト運用商会のご健闘、心よりお祈りしております」

「アーク会長、ありがとうございます!」

「ヤマト様、頑張ってくださいね! ずっと応援していますから」

 シーアはそう言ってヤマトの両手を握ると、潤んだ目で見つめた。 
 美しい令嬢に手を握られ、至近距離から熱い眼差しをぶつけられて、ヤマトは緊張してしまう。

「シ、シーアさん……ありがとう」
 
 二人が無言で見つめ合い、アークも満足げに頷いていると、横でシルフィとマヤが咳払いした。
 そしてシーアの背後からハンナが声をかける。

「ほら、後ろが詰まってるんだから、横にずれて」

「シーアさん、手続きは私のほうでしているので、こちらでお願いします」

「あ、あなたたち……」

 ハンナに肩を押されて、シーアはムッとしながらもシルフィの前に立ち、乾いた笑みを浮かべながらバチバチと無言で火花を散らせた。

 ヤマトは苦笑する。
 ハンナたちは別に雇っているわけではないのだが、これでは商会の警護をしているようだ。
 頼もしいものだが、客ともめるのだけはやめてほしいと内心思う。

 シーアとアークは書類の記入を済ませると、最後にヤマトへあいさつして帰って行った。
 
「――おぅ、ヤマト! 俺のも頼むぜ!」

「ガーフさん! ありがとうございます!」

「ったく、いつの間にこんな立派な商人になってたんだよ。ま、今までは、俺の見る目がなかったってことだな」

 ガーフはそう言って苦笑し後頭部をさする。
 以前、資源価格の高騰後に、トリニティスイーツの鉱物資源を買い取った素材屋だ。
 あのときは、シルフィたちと一悶着あって気まずかったが、今では気さくに接してくれる。
 
「お手続きはこちらでお願いいたしますね」

「はいよ」

 ガーフはシルフィの前に立つと、気まずそうに苦笑した。
 以前のことを思い出しているのだろう。
 しかしシルフィは、無邪気にニコニコしていて引きずっているようには見えない。
 ホッと安心したように息を吐き、手続きを終えたガーフは満足そうに去って行く。

 それから、町の商会や武器屋など、ヤマト運用の元へはぽつぽつと客が訪れ、開業初日にしてそれなりの成果を上げることができた。

「――初日でこれだけ集まれば、十分だろうね」

「うん、預かり資金も億は軽く超えてる」

 閉店後、カウンターで書類を整理しているヤマトに声をかけたのはラミィだった。
 彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて頷くと、急に真剣な表情をつくった。

「しかしかなりの大金だね。身辺には十分注意したほうがいい」

「誰かがこの金を狙って襲って来るってこと?」

「ええ、可能性は否定できないわね。実はさっき、客たちにまぎれて怪しい二人組が店に入って来たんだよ」

「え?」

「そうなの? 私、気付かなかった」

「わ、私もです」

 どうやら気付いたのはラミィだけのようで、みんな目を丸くしている。

「黒いフードをかぶって素顔は分からなかったけど、ただジッとヤマトを見つめていたから、声をかけてみたんだ。そうしたらなにも言わずに店を出っていったわ」

「そっか……分かった、教えてくれてありがとう。護衛のほうは、近々募集をかけてみるよ」

「そんなの水臭いよヤマトくん。私たちに任せてくれればいいのに」

「そうです! 大切な先生の身になにかあっては大変ですので」

 ハンナとマヤはそう言うが、ヤマトは首を横へ振った。

「ありがたいけど、君たちはハンターの仕事があるだろう? こっちはこっちで上手くやるから、気にしないで」

「……ヤマトがそう言うなら仕方ない。本当に気を付けて」

「ヤマトさん、困ったらいつでも言ってくださいね」

「うん。みんな、今日はありがとう」

 その後、ヤマトはまだ事務的な処理があるからと、一人で残り四人を先に帰らせるのだった。
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