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第七章 カムラ急襲

山脈の報告

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 その日、シュウゴは討伐大隊長グレンへ竜の山脈の報告に来ていた。
 今回は一対一で応接室のソファに座っている。

「――それは大変だったな」

 グレンは真剣な表情でシュウゴの報告に耳を傾けていた。短い金髪に厳つい顔だから無駄に迫力がある。今回はいつも背に納めているツヴァイハンダーを部屋の外に置いており、信頼を得られているのだと実感する。

「クラスA相当のアークグリプスに近づくのは確かに危険だ。誤って初心者が遭遇しないよう、開放ランクはCからにしておくか……」

「それが妥当かと」

 シュウゴは頷く。
 山頂へ続く山道の前には、クラスAモンスターのアークグリプスが待ち構えており、山頂への道を阻んでいるとシュウゴは説明した。また、山頂からは猛々しい龍の咆哮が響き渡り、非常に危険だとも言っておいた。カムラの人間が山頂へ近づかないための嘘だ。

「ちなみに、デビルテングのランクはどれほどのものだ?」

「クラスCかと。イービルアイよりは強いですが、飛び道具がないので、単体であれば討伐も難しくないです」

「分かった」

 そう言ってグレンは律儀にメモをとる。

「あと、山頂に近づくほど凶霧が薄くなり、資源も豊富になります。回遊する魔物も減るので安全です」

 自分の報告は以上だとシュウゴが告げると、グレンは「ほぅ」と感心したように頬を緩めた。

「貴重な情報だ。助かるよ。実は、君の少し後にも山脈に登ったハンターがいたんだが、 急に凶霧が濃くなったり、気温が上がったりして引き返したらしくてね」

「そ、そうですか……」

 魔神が現れたときのことだろう。あれは黒い冷気を発し、ドラゴンソウルはそれを消し去るだけの熱量を放った。

「なにか心当たりはあるか?」

「い、いえ、そのときは俺も引き返していて、なにが起こったのかさっぱりです」

「それも当然か。ともかく協力に感謝する。ハナくんにもよろしく伝えておいてくれ。それと大隊長代理の席もまだ空いていると、それとなく伝えておいてくれると助かる」

「は、はぁ」

 ハナの実力と人格を見込んだ討伐隊のオファーだろう。だがシュウゴは、大隊長代理の話は忘れていたことにしようと思った。ハナが好みそうにない話だからだ。

「それじゃあ、これからも協力を頼むよ」

 グレンはそう言って立ち上がると、手を差し出した。シュウゴも立ち上がりその手を握る。

「はい。それでは」

 シュウゴは応接室を出ると、討伐隊員たちの好奇の視線を浴びなら駐屯所を去った。


「――お? 柊くんだ~おかえりなさ~い」

 家に戻ると、布団に寝転がっていたニアが顔を上げ間延びした声を上げた。
 ニアをカムラへ連れ帰ってからというもの、この狭い家に四人で住んでいる。
 デュラは壁際に片膝立ちしているからまだいいが、寝るときはシュウゴが美少女二人からサンドイッチにされるという、なんともけしからん状況になっていた。

「うん、ただいま」

 シュウゴはニアを連れ帰った日のことを思い起こす……
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