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第二章 繁栄の生贄
ハンター
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翌日、覚悟を決めたウィルムは、とあるハンター派遣商会へ足を運んでいた。
これが彼に残された唯一の道だからだ。
「い、いらっしゃいませ……」
カウンターで応対した獣人の受付嬢は、愛らしい丸顔をわずかに引きつらせている。
ウィルムのことを噂で知ってのことだろう。
クエスト掲示板の前にいたハンターたちも、ウィルムの存在に気付き、批難がましい視線をチラチラと向けてくる。
まるで針のむしろだ。
それに、今のウィルムの装備は昔愛用していたものなだけに、かなり古臭い。
両肩に棘の生えた黄褐色のレーザーアーマーに、黒のインナーシャツ。猛獣の毛皮で作られた厚い腰当ての横には、ロングソードを納めた鞘を携えている。
今どきこんな装備では、アビスに立ち向かうことはできない。
ウィルムは居心地の悪さに眉をしかめつつも告げる。
「すみません、ここははじめてで……」
「あっ、ご登録からですね! まずは契約書をご確認ください」
ウィルムは渡された契約書を確認してサインした後、この商会でのハンター業のルール説明を受ける。
その後、初心者向けのクエストをいくつか紹介してもらい、その中から素材採取のクエストを選んだ。
この商会は主に、近隣の森で採れる薬草や食材、洞窟で採れる鉱石素材などの採取が目的のクエストをメインに取り扱っており、基本的に安全性が高い。
その分、報酬も少ないため、ここで経験を積んでからアルビオン商会などの討伐クエストや要人の護衛などをメインで扱う商会へ登録する者も多い。
「それでは、お気をつけて~」
クエストの受注手続きを終えたウィルムは、受付嬢の声を背に商会を出た。
外へ出てすぐに、ウィルムは深いため息を吐く。
先ほどいたハンターたちの中には、明らかな敵意を向ける者もいて、かなり居心地が悪かった。ただ、突っかかってくるような面倒なハンターもいなかった。
それがハンター派遣大手のアルビオン商会を選ばなかった理由の一つだ。
あそこは荒くれ者も多い。
ウィルムはクエストの採取エリアである『原生の森』へ向かって歩いていく。
町の外れへ向かっているだけあって、大通りの通行人は次第に、クエスト帰りのハンターや見慣れない衣装の商人が多くなってきた。
いかつい顔のハンターたちはウィルムの姿を見て、バカにするように薄ら笑いを浮かべるが、クエストで疲れているのかすぐに興味を失う。
そんな中、ウィルムは強い視線を感じた。
「ん?」
通行の妨げにならないよう、ゆっくり歩きながら周囲を見回すと、建物の影からウィルムを見つめる人間がいた。
よく護衛を依頼していた、アルビオン商会所属のハンター、ジャックだ。
その後ろには二人の細身の獣人がいる。
獣人にしては細い体躯で、顔の造形は豹に近いタイプだ。
ウィルムは見知った顔に気を緩め、そちらへ足を向けるが、すぐに立ち止まった。
「どうして……」
彼らの視線は、どう見ても好意的なものではなかった。
むしろ殺気と言ったほうが近いのかもしれない。
その冷徹な眼差しに背筋が凍る。
そのとき、ウィルムが急に立ち止まったことで、後ろを歩いていた人とぶつかってしまった。
「てめっ、ボサッとしてんじゃねぇっ」
そう吐き捨てた相手に、ウィルムは慌て謝り頭を下げる。
相手が苛ただしげに舌打ちをして去って行った後、再びジャックのいた場所へ目を向けると、既にいなくなっていた。
「君もなのか、ジャック」
ウィルムは一抹の寂しさを感じながらも、クエストへ繰り出すのだった。
これが彼に残された唯一の道だからだ。
「い、いらっしゃいませ……」
カウンターで応対した獣人の受付嬢は、愛らしい丸顔をわずかに引きつらせている。
ウィルムのことを噂で知ってのことだろう。
クエスト掲示板の前にいたハンターたちも、ウィルムの存在に気付き、批難がましい視線をチラチラと向けてくる。
まるで針のむしろだ。
それに、今のウィルムの装備は昔愛用していたものなだけに、かなり古臭い。
両肩に棘の生えた黄褐色のレーザーアーマーに、黒のインナーシャツ。猛獣の毛皮で作られた厚い腰当ての横には、ロングソードを納めた鞘を携えている。
今どきこんな装備では、アビスに立ち向かうことはできない。
ウィルムは居心地の悪さに眉をしかめつつも告げる。
「すみません、ここははじめてで……」
「あっ、ご登録からですね! まずは契約書をご確認ください」
ウィルムは渡された契約書を確認してサインした後、この商会でのハンター業のルール説明を受ける。
その後、初心者向けのクエストをいくつか紹介してもらい、その中から素材採取のクエストを選んだ。
この商会は主に、近隣の森で採れる薬草や食材、洞窟で採れる鉱石素材などの採取が目的のクエストをメインに取り扱っており、基本的に安全性が高い。
その分、報酬も少ないため、ここで経験を積んでからアルビオン商会などの討伐クエストや要人の護衛などをメインで扱う商会へ登録する者も多い。
「それでは、お気をつけて~」
クエストの受注手続きを終えたウィルムは、受付嬢の声を背に商会を出た。
外へ出てすぐに、ウィルムは深いため息を吐く。
先ほどいたハンターたちの中には、明らかな敵意を向ける者もいて、かなり居心地が悪かった。ただ、突っかかってくるような面倒なハンターもいなかった。
それがハンター派遣大手のアルビオン商会を選ばなかった理由の一つだ。
あそこは荒くれ者も多い。
ウィルムはクエストの採取エリアである『原生の森』へ向かって歩いていく。
町の外れへ向かっているだけあって、大通りの通行人は次第に、クエスト帰りのハンターや見慣れない衣装の商人が多くなってきた。
いかつい顔のハンターたちはウィルムの姿を見て、バカにするように薄ら笑いを浮かべるが、クエストで疲れているのかすぐに興味を失う。
そんな中、ウィルムは強い視線を感じた。
「ん?」
通行の妨げにならないよう、ゆっくり歩きながら周囲を見回すと、建物の影からウィルムを見つめる人間がいた。
よく護衛を依頼していた、アルビオン商会所属のハンター、ジャックだ。
その後ろには二人の細身の獣人がいる。
獣人にしては細い体躯で、顔の造形は豹に近いタイプだ。
ウィルムは見知った顔に気を緩め、そちらへ足を向けるが、すぐに立ち止まった。
「どうして……」
彼らの視線は、どう見ても好意的なものではなかった。
むしろ殺気と言ったほうが近いのかもしれない。
その冷徹な眼差しに背筋が凍る。
そのとき、ウィルムが急に立ち止まったことで、後ろを歩いていた人とぶつかってしまった。
「てめっ、ボサッとしてんじゃねぇっ」
そう吐き捨てた相手に、ウィルムは慌て謝り頭を下げる。
相手が苛ただしげに舌打ちをして去って行った後、再びジャックのいた場所へ目を向けると、既にいなくなっていた。
「君もなのか、ジャック」
ウィルムは一抹の寂しさを感じながらも、クエストへ繰り出すのだった。
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