サクリファイスリベリオン ~冤罪で追いつめられた元凄腕ハンターは、ギルドの陰謀を暴き人脈を駆使して復讐する~

高美濃 四間

文字の大きさ
28 / 66
第四章 大資本の激突

一つの成果

しおりを挟む
「――何事ですか?」

 店の奥、薬師の研究室から出て来たのは、白衣を纏った長身痩躯の男だった。
 五十代前半ほどの歳に見える人間で、顔には深い皺が目立ち頬がこけ、目の下にはクマができている。不健康そうな姿は、いかにも研究者といった風貌だが、暗い表情から放たれる鋭い眼光に射抜かれたウィルムは動けない。それどころか、自然と足が震えてさえいる。
 男がゆっくりと歩み寄ってカエデの後ろに立つと、彼女は戸惑いに揺れる瞳を向けた。
 
「シャーム店長……」

「っ!?」

 その名を聞いた瞬間、ウィルムは全身が怖気立つ。
 フローラ店長『シャーム』。彼はギルドの副会長であり、今回の件に最も深く関わっているであろう重要人物だ。
 ウィルムの頬が緊張に強張る。
 なにがなんでも真実を吐かせなければならない。
 臨戦態勢に入って身構えていると、シャームは見下すような冷たい視線をウィルムへ向け、カエデへ問う。

「カエデくん、こちらの方は?」

「……鉱石商のウィルム・クルセイドさんです」

「ほぅ……それで、なにがあったのですか?」

「それが……」

 カエデはすぐには説明できず口ごもる。
 シャームはウィルムの名を聞いて、興味を持ったように目を細めていた。
 ウィルムは大きく息を吸って気を落ち着かせると、アビスから回収した白衣の切れ端をシャームの目の前へ突き出した。

「それはなんですか?」

「とぼけないでください。この店の白衣でしょう? これがアビスの体から見つかったんです」

「はぁ。しかしその白衣、うちのではありませんね」

「……は?」

 特に動じた様子もなくキッパリと言い切ったシャームに、ウィルムは唖然とする。
 そんなはずはない。
 これはフローラの白衣だとカエデも認めたのだ。その証拠に、彼女も目を見張って固まってしまっている。
 シャームはこのまま無関係で押し通すつもりのようで、ポーカーフェイスを崩さない。
 ウィルムは慌てて食いついた。

「そんなわけがないでしょう!? この白衣がアビスから見つかったということは、フローラがアビスを生み出したんじゃないんですか? 竜人の体質を利用してっ!」

「なにを言っているのですか? 世迷言を口にするのは勝手ですが、我々に迷惑をかけないで頂きたいですな」

「くっ……」

 シャームは眉一つ動かさず淡々と告げた。
 彼がウィルムに向ける目は、なんの興味も持たない冷たいものだった。真実を暴露したというのに、なんとも思っていないようだ。それは、竜人の犠牲をなんとも思っていないということでもある。 
 ウィルムは無性に腹が立った。

「よくもそんなことがっ!」

「これ以上は話すだけ無駄です。さっさと立ち去ってください。さもなくば、人を呼びますよ?」

 突っぱねるように告げられ、ウィルムは言葉を詰まらせた。
 ここで粘ったところで、ギルドの仲間を呼ばれてはすべて握りつぶされてしまう。
 それでは意味がない。
 引き際を誤るわけにはいかないのだ。
 ウィルムは悔しさに奥歯を強く噛みしめ、虫けらを見るような視線を向けてくるシャームを睨みつけると、無言できびすを返した。
 
「――彼の世迷言です。先ほどのことはもう忘れなさい」

 ウィルムが店を出る間際、シャームがカエデにそう言っているのが聞こえた。
 収穫がなかったわけではない。
 少なくとも、カエデが協力者でないことが分かったのだ。
 それは今のウィルムにとって、大きな成果だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...