サクリファイスリベリオン ~冤罪で追いつめられた元凄腕ハンターは、ギルドの陰謀を暴き人脈を駆使して復讐する~

高美濃 四間

文字の大きさ
42 / 66
第五章 生贄の反逆

敗北

しおりを挟む
 その悪夢の出来事は、すぐに領主の元へと伝わった。

「――ご、ご報告します!」

 領主の館の一階会議室をバタンッと大きな音を立てて開け放ち、騎士の一人が慌てて駆け込んだ。
 会議室では領主アンフィスを始め、補佐官のカドルやルーク、その他多数の文官が領内の経済政策について話し合っているところだった。
 一同の視線は、息を切らせて片膝を立てた騎士に集まる。
 肩当を見るに、隊長格の階級章だ。

「騒がしいぞ! いったいなにがあったと言うのだ!?」

 カドルが不機嫌そうに眉をしかめ、苛立たしげに声を荒げる。
 すると、騎士は片膝を立てた状態で顔を上げ、早口でまくし立てる。

「じっ、実は、『ドラチナス西方の森林』で新種のアビスが出現しました!」

「なに!?」

 アンフィスが大声で叫び、バンッと机に両手を打ちつけて立ち上がる。
 周囲の文官たちも顔色を変えざわめき出した。

「い、今なんて……」

 ルークは予想だにしない事態に思考が停止し、口を半開きにしたまま固まっていた。
 騎士は報告を再開する。

「別の個体を討伐していたアルビオン商会のハンター三名が重傷を負い、一名が死亡しました。目撃者の証言によりますと、新種アビスの力は既存の個体を遥かに凌ぐとのこと。それにアルビオン商会の話では、不意を突かれたとはいえ、敗退したハンターたちはアビスの討伐実績豊富な手練れとのことです」

「な、なんということだ……」

 アンフィスは茫然自失とした表情で呟き、ガタンと崩れ落ちるように椅子に腰を落とした。
 その反応も無理はない。
 ドラチナスが経済不況に陥っている今、装備の生産や消耗品の流通は以前よりも減少し、活動しているハンターの数も減っている。
 とてもではないが、新たな脅威に耐えうる状況ではない。
 もしこれが五年前同様、新種のアビスが現在の一般装備で敵わない性質を持っている場合、尋常ではない被害が出る。

「どうして、どうしてこうなった……」

 会議室が騒然とする中、ルークは唖然と呟く。
 そのときふと、向かいに座っていたカドルの顔が視界に入った。

「っ!?」

 彼は、狂気すら感じさせる酷薄な笑みを浮かべていた。
 ルークは悟る。
 これは彼らの……ギルドの仕業だと。
 どう考えても間違いない。だが証拠なしにそれを言及することはできず、ルークは深く後悔した。
 ウィルムの話を信じ、早急にアビスの研究をあばくべきだったのだと。
 ギルドに資金援助さえしなければ、大きな動きに出られないとたかをくくっていた。それが大きな間違いで、真に止めるべきはアビスの研究だったのだ。
 ルークが顔を苦痛に歪めて頭を抱える中、一人の文官がガタンッと音を立てて立ち上がる。

「りょ、領主様っ! い、いったいどうすれば!?」

「えぇいっ、慌てるなっ!」

 混乱してやみくもに叫ぶ老年の文官へ、アンフィスが一喝する。
 彼の冷静な声に、ざわめく文官たちは声のトーンを下げた。
 まったく動じていない彼の姿は、誰が見ても頼もしいと思えるだろう。ルークは焦点の定まらない虚空に視線をさまよわせ、そんなことを思う。
 茫然とするルークにも、カドルの鶴の一声で、ギルドへの緊急支援が決定されたことはかろうじて分かった。
 そして――

「――さて、もっと早くにギルドを支援していれば、これから出るであろう被害はまだ軽微なもので済んだのかもしれません。この責任、いったい誰がとってくれるのでしょうねぇ」

 次の瞬間、会議室中の視線が一斉にルークを射抜いた。
 彼は幽鬼のような生気の抜けた顔を上げる。
 逃げ場はない。
 ルークは、自分がギルドとの戦いに敗れたことを悟ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...