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第五章 生贄の反逆
窮地
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「――グギャオォォォォォォォォォォンッ!」
「がぁっ!」
「ぐわぁぁぁっ!」
薙ぎ払われた剛腕によって戦士たちが吹き飛ぶ。
がなり立てる禍々しい咆哮が恐怖として胸に刻まれ、ルークは足がすくんだ。勝手に頬が引きつり歯がガタガタと震える。
そんなとき、暴れまわるアビスの近くで、頭を抱え座り込んだ少女が目に入った。
「まずいっ!」
「ルーク様、危険です! お下がりください!」
「できるかっ!」
ルークは恐怖に支配されかけた心を奮い立たせ、震える足を無理やり動かし、少女の元へ駆け寄る。
護衛の騎士たちもすぐに後ろに続き、ルークを追い抜いてアビスに突っ込んでいった。護衛としての責務を果たすために。
「君、大丈夫か!?」
「……へ?」
ルークが膝を立て少女に目線を合わせると、少女は肩を震わせて顔を上げ、酷く怯えた目でルークを見る。
彼はできるだけ少女を怯えさせないよう柔らかい表情を作った。
「ここは危険だ。早く逃げよう。お父さんかお母さんは?」
「見つからないの……」
「そっか……じゃあお兄さんと逃げよう」
ルークは少女の震える小さな手を握り立ち上がった。
そのとき、背後で大きな衝撃音が響く。
「がはっ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
ルークが背後を振り向くと、護衛の騎士たちは長剣を叩き折られ、勢いよく吹き飛ばされるところだった。
彼らの実力はドラチナス騎士団の中でもトップクラス。
それが手も足も出ないとなると、もう打つ手がない。
「くっ……」
絶望で立ちすくむルークへ、ついにアビスが顔を向けた。
ルークの膝が震える。
それでも少女を背にかばってアビスを睨みつけた。
地面をゴロゴロと転がりうつ伏せに倒れた騎士が、血まみれの顔を上げて必死に叫ぶ。
「ルーク様、お逃げ――」
「――ギャオルゥゥゥゥゥッ!」
アビスは騎士の声を遮って叫び、地を蹴って大きく跳んだ。
そして一瞬でルークの目の前に舞い降りた。
衝撃によって砂埃が吹き荒れる。
「くっ!」
ルークは少女をかばうように抱きしめ、背をアビスへ向けた。
普段の冷静な彼なら、そんなことをしても無意味だと分かったはず。
しかし無情にも、アビスは翡翠の竜鱗に覆われた右腕を振り上げ、強靭な爪で引き裂こうとする。
満身創痍の戦士たちや成り行きを見守る民衆も、絶望に顔を歪めるだけでなにもできない。
「ルーク様ぁぁぁぁぁっ!」
騎士の必死な叫びも虚しく、それはルークたちの頭上へと振り下ろされた。
――ドガアァンッ!
重い打撃が地を砕き、衝撃音を響かせる。
砂埃が舞う。
……同時に、『熱風』が吹き荒れた。
「――ぇ?」
ルークは自分の意識がまだあることに気付き、まぶたを上げる。
抱きしめていた少女も無事で、目をギュッとつぶっている。
困惑しながら横を見ると、大きな翡翠の腕があった。
アビスは狙いを外したのか? そうとしか考えられず、ますます混乱するが、背後を振り向くと――
「……ぇ?」
違った。
アビスの右腕を見ると、肘から先がない。
綺麗に切断されているのだ。
そして、ルークとアビスの間に立ちはだかっているのは、ひとりの『竜人』。
「……ウィルム、なのか?」
ルークが目を見開いて唖然と呟くと、ウィルムは横顔を向けて頷いた。
彼は猛獣の毛皮で作られた腰当に、黄褐色のレザーアーマーを装備している。
その右手には、灼熱の熱気を宿し紅蓮に輝く剣。
それが凄まじい熱気を放っていた。
「がぁっ!」
「ぐわぁぁぁっ!」
薙ぎ払われた剛腕によって戦士たちが吹き飛ぶ。
がなり立てる禍々しい咆哮が恐怖として胸に刻まれ、ルークは足がすくんだ。勝手に頬が引きつり歯がガタガタと震える。
そんなとき、暴れまわるアビスの近くで、頭を抱え座り込んだ少女が目に入った。
「まずいっ!」
「ルーク様、危険です! お下がりください!」
「できるかっ!」
ルークは恐怖に支配されかけた心を奮い立たせ、震える足を無理やり動かし、少女の元へ駆け寄る。
護衛の騎士たちもすぐに後ろに続き、ルークを追い抜いてアビスに突っ込んでいった。護衛としての責務を果たすために。
「君、大丈夫か!?」
「……へ?」
ルークが膝を立て少女に目線を合わせると、少女は肩を震わせて顔を上げ、酷く怯えた目でルークを見る。
彼はできるだけ少女を怯えさせないよう柔らかい表情を作った。
「ここは危険だ。早く逃げよう。お父さんかお母さんは?」
「見つからないの……」
「そっか……じゃあお兄さんと逃げよう」
ルークは少女の震える小さな手を握り立ち上がった。
そのとき、背後で大きな衝撃音が響く。
「がはっ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
ルークが背後を振り向くと、護衛の騎士たちは長剣を叩き折られ、勢いよく吹き飛ばされるところだった。
彼らの実力はドラチナス騎士団の中でもトップクラス。
それが手も足も出ないとなると、もう打つ手がない。
「くっ……」
絶望で立ちすくむルークへ、ついにアビスが顔を向けた。
ルークの膝が震える。
それでも少女を背にかばってアビスを睨みつけた。
地面をゴロゴロと転がりうつ伏せに倒れた騎士が、血まみれの顔を上げて必死に叫ぶ。
「ルーク様、お逃げ――」
「――ギャオルゥゥゥゥゥッ!」
アビスは騎士の声を遮って叫び、地を蹴って大きく跳んだ。
そして一瞬でルークの目の前に舞い降りた。
衝撃によって砂埃が吹き荒れる。
「くっ!」
ルークは少女をかばうように抱きしめ、背をアビスへ向けた。
普段の冷静な彼なら、そんなことをしても無意味だと分かったはず。
しかし無情にも、アビスは翡翠の竜鱗に覆われた右腕を振り上げ、強靭な爪で引き裂こうとする。
満身創痍の戦士たちや成り行きを見守る民衆も、絶望に顔を歪めるだけでなにもできない。
「ルーク様ぁぁぁぁぁっ!」
騎士の必死な叫びも虚しく、それはルークたちの頭上へと振り下ろされた。
――ドガアァンッ!
重い打撃が地を砕き、衝撃音を響かせる。
砂埃が舞う。
……同時に、『熱風』が吹き荒れた。
「――ぇ?」
ルークは自分の意識がまだあることに気付き、まぶたを上げる。
抱きしめていた少女も無事で、目をギュッとつぶっている。
困惑しながら横を見ると、大きな翡翠の腕があった。
アビスは狙いを外したのか? そうとしか考えられず、ますます混乱するが、背後を振り向くと――
「……ぇ?」
違った。
アビスの右腕を見ると、肘から先がない。
綺麗に切断されているのだ。
そして、ルークとアビスの間に立ちはだかっているのは、ひとりの『竜人』。
「……ウィルム、なのか?」
ルークが目を見開いて唖然と呟くと、ウィルムは横顔を向けて頷いた。
彼は猛獣の毛皮で作られた腰当に、黄褐色のレザーアーマーを装備している。
その右手には、灼熱の熱気を宿し紅蓮に輝く剣。
それが凄まじい熱気を放っていた。
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