60 / 66
最終章 激動の最終決戦
ウィルムの戦い
しおりを挟む
ウィルムがシャームの後を追っていると、町の西南にある公園の草むらの奥へ進み、やがて森へと足を踏み入れた。
近くに採取フィールドの洞窟があるが、ハンターたちは南端の正門から出てフィールドへ向かうため、新種も旧アビス出現せず採取ポイントもないこのエリアには、基本的に立ち寄らない場所だ。
ウィルムが強い警戒心を抱きながら歩いていくと、土砂の隆起した低い崖の下でシャームが足を止める。頭上まで原生林が生い茂っているため、空は見えない。
シャームが背後を振り向くと、顔には陰湿な笑みを貼りつけ鋭い眼光を放っていた。
「今一度問います。カエデ君の居場所はどこですか?」
「は?」
想定外の問いにウィルムは眉をしかめる。
その意図が分からない。
カエデの居場所を知るため、シャームの誘いに乗ったというのに、なぜ自分へ問いが返されているのか。
遠くで不気味な獣の金切り声が響き渡り緊張感が増す。
ウィルムが無言で後ずさると、シャームはこれ見よがしに肩を落とし深いため息を吐いた。
「そうですか……あなたには振り回されてばかりだ。だからせめて、ここで潔く死になさい」
驚くほど低く冷たい声で告げられた。
「死ね」と。
ウィルムの背筋に怖気が走り、反射的に身構える。
ガサガサと崖の上から草を掻き分ける足音が漏れ、ウィルムが見上げると、そこには武装した五人の男の姿があった。
「やはり、アルビオン商会か……」
ウィルムは苦しげに頬を歪ませ、これまで自分を襲撃してきた犯人の確証を得る。
崖の上に立つのは、かつてイノセントからの護衛依頼を引き受けてくれた、筋骨隆々の獣人が三人、以前ジャックと行動を共にしていた豹顔の細身の獣人が一人、そして黒装束を纏い、古傷を負ったいかつい顔と鋭い眼光をフードの内側から覗かせているジャックだ。
それぞれ、刃幅が広く重量感ある片手剣や、暗殺に特化したダガー、長剣よりは短い刃渡りの曲刀を装備している。
「あなたはもう終わりです。せいぜい、ギルドに盾突いたことを後悔しなさい」
シャームがそう告げると共に、ハンターたちが足をバネのように曲げて地を蹴り、刃の切っ先をウィルムへ向け、崖から飛び降りてくる。
ウィルムは深く息を吸って腰を落とし両腕を構えると、覚悟を決めた。
――ヒュンッ!
ウィルムは頭上から振り下ろされた獣人の斬撃を飛び退いてかわす。
すると、その左横に着地した細身の豹男が急接近してくる。
前傾姿勢でダガーを振り下ろしてくるが、二人の距離はあと二メートル弱。明らかにリーチが足りない。その油断が命取り――
「くっ!」
ウィルムは慌てて体を横へ反らす。
彼はダガーをただ振り下ろしたのではない。投擲したのだ。
いったい誰がこの至近距離でダガーを投擲すると思うだろう。
戦闘開始直後だからこその奇策。
しかし、ダガーはウィルムの脇腹に掠ったものの、ギリギリで避け切った。
「はぁぁぁっ!」
今度はウィルムが反撃する番だ。
足を踏み出し、握った拳を豹男へまっすぐに叩きつける。
敵は両腕をクロスさせ打撃を受け止めると、そのままの勢いで飛び退いて距離をとった。
直後、その横から猛スピードでウィルムへ迫る者がいた。
曲刀を手にしたジャックだ。
「うらぁっ!」
「っ!?」
ウィルムは低姿勢から振り上げられた斬撃を間一髪かわすが、次々に連撃が繰り出される。
空を切り変幻自在に宙を走る刃。
しなやかな太刀筋は読みづらく、肩、脇腹、頬と、またたく間に切り傷を作っていく。
まるで暴風のような連続攻撃だ。
反撃の糸口を掴めず、ウィルムがなんとか受け流していると、左右から獣人二人が駆けてくる。
もし三方向から攻撃されれば、ひとたまりもない。
「はぁぁぁっ!」
ジャックの上段での斬り払いを見切ったウィルムは、屈んでかわすと同時に拳を上に引き、勢いよく地面を拳を打ち付ける。
砂塵が巻き上がり、一瞬の目くらましを作った。
これでジャックは反撃を警戒し、追撃はできない。
ウィルムはすぐに飛び退いて距離をとろうとするが、ジャックはそれを読んでいた。
視界の悪い中、一直線に突っ込んで来る。
「甘い!」
振り下ろしてきた曲刀、それを握る手首へ狙いをつけ、ウィルムは蹴り上げる。
見事ジャックの右手首に直撃。その手から曲刀が飛んだ。
しかしジャックは怯まず、左ストレートを放ってくる。
ウィルムは右腕で受け、衝撃によろけ後ずさる。
「ジャック……」
近くに採取フィールドの洞窟があるが、ハンターたちは南端の正門から出てフィールドへ向かうため、新種も旧アビス出現せず採取ポイントもないこのエリアには、基本的に立ち寄らない場所だ。
ウィルムが強い警戒心を抱きながら歩いていくと、土砂の隆起した低い崖の下でシャームが足を止める。頭上まで原生林が生い茂っているため、空は見えない。
シャームが背後を振り向くと、顔には陰湿な笑みを貼りつけ鋭い眼光を放っていた。
「今一度問います。カエデ君の居場所はどこですか?」
「は?」
想定外の問いにウィルムは眉をしかめる。
その意図が分からない。
カエデの居場所を知るため、シャームの誘いに乗ったというのに、なぜ自分へ問いが返されているのか。
遠くで不気味な獣の金切り声が響き渡り緊張感が増す。
ウィルムが無言で後ずさると、シャームはこれ見よがしに肩を落とし深いため息を吐いた。
「そうですか……あなたには振り回されてばかりだ。だからせめて、ここで潔く死になさい」
驚くほど低く冷たい声で告げられた。
「死ね」と。
ウィルムの背筋に怖気が走り、反射的に身構える。
ガサガサと崖の上から草を掻き分ける足音が漏れ、ウィルムが見上げると、そこには武装した五人の男の姿があった。
「やはり、アルビオン商会か……」
ウィルムは苦しげに頬を歪ませ、これまで自分を襲撃してきた犯人の確証を得る。
崖の上に立つのは、かつてイノセントからの護衛依頼を引き受けてくれた、筋骨隆々の獣人が三人、以前ジャックと行動を共にしていた豹顔の細身の獣人が一人、そして黒装束を纏い、古傷を負ったいかつい顔と鋭い眼光をフードの内側から覗かせているジャックだ。
それぞれ、刃幅が広く重量感ある片手剣や、暗殺に特化したダガー、長剣よりは短い刃渡りの曲刀を装備している。
「あなたはもう終わりです。せいぜい、ギルドに盾突いたことを後悔しなさい」
シャームがそう告げると共に、ハンターたちが足をバネのように曲げて地を蹴り、刃の切っ先をウィルムへ向け、崖から飛び降りてくる。
ウィルムは深く息を吸って腰を落とし両腕を構えると、覚悟を決めた。
――ヒュンッ!
ウィルムは頭上から振り下ろされた獣人の斬撃を飛び退いてかわす。
すると、その左横に着地した細身の豹男が急接近してくる。
前傾姿勢でダガーを振り下ろしてくるが、二人の距離はあと二メートル弱。明らかにリーチが足りない。その油断が命取り――
「くっ!」
ウィルムは慌てて体を横へ反らす。
彼はダガーをただ振り下ろしたのではない。投擲したのだ。
いったい誰がこの至近距離でダガーを投擲すると思うだろう。
戦闘開始直後だからこその奇策。
しかし、ダガーはウィルムの脇腹に掠ったものの、ギリギリで避け切った。
「はぁぁぁっ!」
今度はウィルムが反撃する番だ。
足を踏み出し、握った拳を豹男へまっすぐに叩きつける。
敵は両腕をクロスさせ打撃を受け止めると、そのままの勢いで飛び退いて距離をとった。
直後、その横から猛スピードでウィルムへ迫る者がいた。
曲刀を手にしたジャックだ。
「うらぁっ!」
「っ!?」
ウィルムは低姿勢から振り上げられた斬撃を間一髪かわすが、次々に連撃が繰り出される。
空を切り変幻自在に宙を走る刃。
しなやかな太刀筋は読みづらく、肩、脇腹、頬と、またたく間に切り傷を作っていく。
まるで暴風のような連続攻撃だ。
反撃の糸口を掴めず、ウィルムがなんとか受け流していると、左右から獣人二人が駆けてくる。
もし三方向から攻撃されれば、ひとたまりもない。
「はぁぁぁっ!」
ジャックの上段での斬り払いを見切ったウィルムは、屈んでかわすと同時に拳を上に引き、勢いよく地面を拳を打ち付ける。
砂塵が巻き上がり、一瞬の目くらましを作った。
これでジャックは反撃を警戒し、追撃はできない。
ウィルムはすぐに飛び退いて距離をとろうとするが、ジャックはそれを読んでいた。
視界の悪い中、一直線に突っ込んで来る。
「甘い!」
振り下ろしてきた曲刀、それを握る手首へ狙いをつけ、ウィルムは蹴り上げる。
見事ジャックの右手首に直撃。その手から曲刀が飛んだ。
しかしジャックは怯まず、左ストレートを放ってくる。
ウィルムは右腕で受け、衝撃によろけ後ずさる。
「ジャック……」
0
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる