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エピローグ
戦士たちの安息
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ドラチナスは生まれ変わり、新たな発展へと動き出した。
グレイヴやホルムス、その他アルビオンなどのギルド上層部の取り調べの結果、前領主アンフィス暗殺の犯人はギルドの暗躍によるものと判明。
事件以降、失踪していた領主側近たちはギルドによって監禁されていたが、すぐに見つかり、彼らが無実であることとギルドの手の者が襲撃犯であることを証言したのだ。
さらに、カドルもギルドからの大量の金品受領が明らかになり、これまでのギルドの悪事を知って協力していたため、罪は非常に重い。
結果、ギルド幹部とカドルは、罰としてすべての資産を没収された上で放逐。もう二度と、ドラチナスの地を踏む事は許されなかった。
そしてルークは、ギルドのすべての悪事を民たちへ公表し、新領主としてギルドの解体を断行する。
この町に巣食っていた病魔は綺麗に取り除かれ、真の平和が訪れた。
しかしその反動は大きい。
ホルムスを失い、ギルドの後ろ盾もなくなったドラチナス金庫は、すぐに経営危機を迎えた。ドラチナスの金融市場を牛耳っていたドラチナス金庫の危機的状況は、商人たちの資金難に直結する。
そこで新たに参入して来たのが、他領土、他国の金貸したちだ。
ギルドの解体と大幅減税を聞きつけた彼らは、儲けのチャンスと捉えて大量の資金を投入し、商会や店のオーナーの座をドラチナス金庫から奪っていった。
金融市場を独占し、悪徳な商売をしていたドラチナス金庫が崖っぷちに追い込まれるのも無理はなく、彼らも国の大商会によって買収されたのだった。
市場参入者の中にはエルフの投資家シーカーもいた。
彼はクルセイド鉱石商のオーナーとして、ウィルムから情報を得て誰よりも早く準備を整え、投資家として一番乗りで市場へ飛び込んだ。それによってウィルムは、「ドラチナスへの先行投資権の提供」というシーカーとの約束を果たす。
ウィルムは鉱石商としての商売を再開し、またジュエル鉱石商との密な取引を続けている。
かつての噂は消え失せ、新種アビス打倒の立役者として、商人の信用も取り戻していた。
カエデのほうは、シャームを失い外資に買収されたフローラを辞め、今はウィルムの商売を手伝っている。
ときたま町へ遊びに来るフェアとはよく言い合いになっているが、二人がなぜそこまで仲が悪いのか、ウィルムには分からない。
エルダも「青春っていいわぁ」とうっとり呟いているが、さらに混乱するだけだった。
ある日の朝、ウィルムは町の西端にある墓地を訪れていた。
静かな風の吹く墓地は、一面の緑に囲まれ灰色の墓石が綺麗に並んでいる。
「――兄さん、アクア、ラド、みんな……やっとかたがついたよ。ようやく平和なドラチナスに戻ったんだ」
ウィルムは勇敢なる竜人たちの墓前に立ち、これまでのことを包み隠さず報告した。
彼がどんなに苦しくても、どれだけ絶望しても、最後まで諦めずに戦い抜くことができたのは、仲間たちとの記憶が心の支えになっていたからだ。
「ありがとう」
この平和はみんなの力で勝ち取ったものだと、ウィルムは心からそう思っている。
だからこそ――領主を連れて来た。功労者である彼らを紹介するために。
ルークが横で膝を折り、たくさんの花束が供えられた墓へ深く頭を下げた。
「竜人のみなさん、すべてはウィルムから聞きました。ドラチナスの領主として、領民であるあなた方の犠牲を許してしまったことを深くお詫び申し上げます。もう二度、この町で無辜の民の犠牲を許さないと、今ここに誓います。ですからどうか、これからもドラチナスの行く末を見守っていてください」
ウィルムはルークの言葉を聞きながら、雲一つない青空を見上げ目を瞑る。
感慨深かった。
これでようやく、竜人たちの存在が認められた気がしたのだ。
「さて、と……」
ウィルムがゆっくり目を開けて視線を戻すと、ルークが立ち上がっていた。
「もう行かれるんですか?」
「うん。今日は客人が来る予定でね」
「大変ですね」
「いいんだ。君たちのおかげで、ようやく我々は前に進むことができた。ここからは私たち政治家の領分だ。安心して任せてくれ」
「はい」
ウィルムが頷くと、ルークは満足そうに頬を緩ませて墓を去って行く。
遠ざかるその背中を見送り、ウィルムは最後にと、再び墓のほうへ目を向けた。
「アク、ア……」
供えられている花束の中に光るものがあった。
かつて、アクアがウィルムへプレゼントしたミスリル銀製のブレスレットだ。
アビスと化した彼女から回収した後、綺麗に磨いてここに供えていた。
ペアルックになっているもう片方は、いまだウィルムの腕に着けており、二つのブレスレットはまるで共鳴し合うかのように、眩しく輝き合うのだった。
ウィルムの未来を明るく照らすように。
グレイヴやホルムス、その他アルビオンなどのギルド上層部の取り調べの結果、前領主アンフィス暗殺の犯人はギルドの暗躍によるものと判明。
事件以降、失踪していた領主側近たちはギルドによって監禁されていたが、すぐに見つかり、彼らが無実であることとギルドの手の者が襲撃犯であることを証言したのだ。
さらに、カドルもギルドからの大量の金品受領が明らかになり、これまでのギルドの悪事を知って協力していたため、罪は非常に重い。
結果、ギルド幹部とカドルは、罰としてすべての資産を没収された上で放逐。もう二度と、ドラチナスの地を踏む事は許されなかった。
そしてルークは、ギルドのすべての悪事を民たちへ公表し、新領主としてギルドの解体を断行する。
この町に巣食っていた病魔は綺麗に取り除かれ、真の平和が訪れた。
しかしその反動は大きい。
ホルムスを失い、ギルドの後ろ盾もなくなったドラチナス金庫は、すぐに経営危機を迎えた。ドラチナスの金融市場を牛耳っていたドラチナス金庫の危機的状況は、商人たちの資金難に直結する。
そこで新たに参入して来たのが、他領土、他国の金貸したちだ。
ギルドの解体と大幅減税を聞きつけた彼らは、儲けのチャンスと捉えて大量の資金を投入し、商会や店のオーナーの座をドラチナス金庫から奪っていった。
金融市場を独占し、悪徳な商売をしていたドラチナス金庫が崖っぷちに追い込まれるのも無理はなく、彼らも国の大商会によって買収されたのだった。
市場参入者の中にはエルフの投資家シーカーもいた。
彼はクルセイド鉱石商のオーナーとして、ウィルムから情報を得て誰よりも早く準備を整え、投資家として一番乗りで市場へ飛び込んだ。それによってウィルムは、「ドラチナスへの先行投資権の提供」というシーカーとの約束を果たす。
ウィルムは鉱石商としての商売を再開し、またジュエル鉱石商との密な取引を続けている。
かつての噂は消え失せ、新種アビス打倒の立役者として、商人の信用も取り戻していた。
カエデのほうは、シャームを失い外資に買収されたフローラを辞め、今はウィルムの商売を手伝っている。
ときたま町へ遊びに来るフェアとはよく言い合いになっているが、二人がなぜそこまで仲が悪いのか、ウィルムには分からない。
エルダも「青春っていいわぁ」とうっとり呟いているが、さらに混乱するだけだった。
ある日の朝、ウィルムは町の西端にある墓地を訪れていた。
静かな風の吹く墓地は、一面の緑に囲まれ灰色の墓石が綺麗に並んでいる。
「――兄さん、アクア、ラド、みんな……やっとかたがついたよ。ようやく平和なドラチナスに戻ったんだ」
ウィルムは勇敢なる竜人たちの墓前に立ち、これまでのことを包み隠さず報告した。
彼がどんなに苦しくても、どれだけ絶望しても、最後まで諦めずに戦い抜くことができたのは、仲間たちとの記憶が心の支えになっていたからだ。
「ありがとう」
この平和はみんなの力で勝ち取ったものだと、ウィルムは心からそう思っている。
だからこそ――領主を連れて来た。功労者である彼らを紹介するために。
ルークが横で膝を折り、たくさんの花束が供えられた墓へ深く頭を下げた。
「竜人のみなさん、すべてはウィルムから聞きました。ドラチナスの領主として、領民であるあなた方の犠牲を許してしまったことを深くお詫び申し上げます。もう二度、この町で無辜の民の犠牲を許さないと、今ここに誓います。ですからどうか、これからもドラチナスの行く末を見守っていてください」
ウィルムはルークの言葉を聞きながら、雲一つない青空を見上げ目を瞑る。
感慨深かった。
これでようやく、竜人たちの存在が認められた気がしたのだ。
「さて、と……」
ウィルムがゆっくり目を開けて視線を戻すと、ルークが立ち上がっていた。
「もう行かれるんですか?」
「うん。今日は客人が来る予定でね」
「大変ですね」
「いいんだ。君たちのおかげで、ようやく我々は前に進むことができた。ここからは私たち政治家の領分だ。安心して任せてくれ」
「はい」
ウィルムが頷くと、ルークは満足そうに頬を緩ませて墓を去って行く。
遠ざかるその背中を見送り、ウィルムは最後にと、再び墓のほうへ目を向けた。
「アク、ア……」
供えられている花束の中に光るものがあった。
かつて、アクアがウィルムへプレゼントしたミスリル銀製のブレスレットだ。
アビスと化した彼女から回収した後、綺麗に磨いてここに供えていた。
ペアルックになっているもう片方は、いまだウィルムの腕に着けており、二つのブレスレットはまるで共鳴し合うかのように、眩しく輝き合うのだった。
ウィルムの未来を明るく照らすように。
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