サクリファイスリベリオン ~冤罪で追いつめられた元凄腕ハンターは、ギルドの陰謀を暴き人脈を駆使して復讐する~

高美濃 四間

文字の大きさ
65 / 66
最終章 激動の最終決戦

決着の時

しおりを挟む
 ウィルムが感情を抑えた声で「ジャック」と呼ぶと、それまで入口のところで待機していたジャックが横まで歩み寄る。
 ウィルムは興奮を鎮めるように息を整え、文官たちへ向けて告げた。
 
「紹介します。アルビオン商会のハンター、ジャックです。俺はここに来る前、彼の率いるハンター一味の襲撃を受けました」

「「「っ!?」」」

 衝撃の事実に会議室が騒然とする。

「どういうことなんだ……」

 ルークも目を見張り困惑に眉をしかめていた。
 ウィルムがなぜ全身傷だらけなのかは分かっただろう。
 だが、なぜ自分を襲撃した犯人を連れて来たのかは、誰も理解を示せていない。
 ましてや、ジャックには拘束もなにもしておらず、いつでもウィルムを攻撃できる状態。誰もが危険に思ったことだろう。
 しかし、そうはならない。
 今のウィルムとジャックは金で繋がれた、依頼主と受注者の関係だからだ。
 先の戦いの最後、シャームが死に依頼主を失ったジャックは、ウィルムの提示した多額の報酬金での依頼を快く引き受けた。
 それは、これまでの竜人襲撃に関するすべての情報の提供と、この場での証言。

「彼はすべてを話してくれました。領主選当日、俺を襲撃するように依頼したのは、ギルドだったのです。その証拠に、家には副会長のシャームさんが現れ俺をハンターたちの元へ誘導しました」

「そういうことだったのか」

 ルークが納得したように呟くと、ウィルムは頷いた。
 窮地に陥ったグレイヴは、未だしらばくれようと首を横へ振り「し、知らない」と呟いて後ずさる。
 壁際ではホルムスが顔面蒼白になって、醜い丸顔に大量の脂汗を浮かべている。
 彼らの反応を見れば、ウィルムの言葉が嘘でないことは明白。
 カドルも顔を引きつらせ口を閉ざしていた。

「それだけではありません。これまでの竜人失踪。それらも、彼らアルビオン商会のハンターたちが秘密裏に、ギルドから依頼されて実行したものだったのです」

 ウィルムはジャックに目配せし、これまでの依頼の内容を話させる。
 それは今までギルドが行ってきたあらゆる悪事。
 ドラチナスで働く者にとって、誰も看過できない悪の所業。
 ジャックの証言の合間に、ウィルムとカエデが説明を加え、竜人失踪とアビス出現の全貌がついに明らかになった。
 文官たちは唖然とした表情で、誰も頭の整理がついていないようだ。
 そしてウィルムは、怒りを抑えた低い声でグレイヴへ問う。

「これでもまだ、言い訳できますか?」

「ぅっ……」

 グレイヴは茫然とした表情で床にひざまづき、ガクンと肩を落とし俯いた。
 そこへ追撃するように、怒りで頬を歪ませたルークが言い放つ。

「これでアビスの謎も、竜人の失踪もすべてが分かった……つまり、五年前から起こったすべてのことがギルドの自作自演。一部の特権階級だけが富を築くための陰謀。大切なドラチナス領民を犠牲にして、経済発展だと? 領民をバカにするのも、いい加減にしろ!」

 そして、顔面蒼白でその様子を見ていたカドルへ向き直る。

「カドル殿、ここまで聞いてそれでも、ギルドにドラチナス経済を任すおつもりか?」

「そっ、それは……」

 カドルがなにも言い返せず口ごもっていると、ルークは幹事へ目を向け堂々と告げた。

「幹事殿、討論に決着はつきました! 採決を!」

「は、はいぃっ!」

 激動の領主選、ついに決着。
 終始ギルドの扱いが争点となり、一度はギルドとの繋がりの深いカドルが優勢となったものの、カエデやウィルムといった、権力に抗う強い意志を持った者たちが流れを変えた。
 そして今、領主選幹事によって文官たちの採決がとられ、集計の結果がすぐに出る。
 満場一致でルークの勝利だ。

「そんな……」

 カドルは茫然自失とした表情で呟く。
 しかし当然の結果だ。
 この状況で、ギルドを支援すると言ったカドルを支持する者など誰もいない。
 皆、希望ある選択をしたのだ。
 そして、ルークはすぐに騎士を呼び、ぐったりとうな垂れるグレイヴとホルムスを騎士団の駐屯所へ連行させた。

「終わったのか。これでようやく」

 ウィルムは声を震わせ、唇を固く結んでギュッと目を瞑る。
 そして体を震わせる彼の背にそっと細い手が添えられた。
 ウィルムには一瞬、それがアクアの手のような錯覚を覚え、目から涙がこぼれ落ちる。

「――ありがとう、ウィルム。あなたのおかげで、この町は生まれ変わるの。本当にお疲れさま」

 カエデがしんみりと囁くように告げると、ウィルムは肩を震わせた。
 ルークは表情を引き締め、深く頷いて文官一同を見渡す。
 そして、大きく深呼吸すると堂々と告げた。

「私はっ、この町を変えてみせます。我ら領民が、バケモノに屈することなく、自らの力で羽ばたけるように!」

 戦士たちとギルドの最終決戦は、希望に満ちた、盛大な拍手を合図に幕を閉じたのだった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...