理想≠夢

天然水

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 気づけば尚子は”そこ”にいた。

 
 今まで眠っていた気もするし、職場で働いていた気もする。
 自分の直前の状況をまったく思い出せないし、何処か頭がボンヤリしている感覚が抜けないため初めは「なんだ、夢の中か」と思っていたが・・・体感で1日程経った今も目が覚める気配が無い。


 「もしかして自分は死んでしまったのだろうか?」

 
 尚子はふと最悪の事態を思い浮かんでしまったが、不思議と不安や恐怖心が湧き出てこない。
 周りを見渡すと、所謂”天国”や”地獄”といった死後の世界をイメージするものなどなく、おしゃれな街並みが広がっているだけだ。


 人の気配もないし、お腹もすいてこないし、尿意も催さない・・・。



 まぁ、そこそこ長い夢なんだろう。

 と自分を納得させると、尚子はとりあえず当てもないまま歩き出した。



 「夢だって思ったらいつも無理矢理思い浮かべるイケメン俳優君も、いつまで経っても登場してくれないしなぁ~。あぁ~あ!年取ってその辺のスキルも衰えてきたかぁ~…。嫌だなぁ~、マジで年取りたくねぇ~、不老になりてぇ~。」

 
 誰もいないのをいいことに、いつもの”イイ子”のメッキが剥がれている。
 
 
 尚子は今年30歳になる独身OLで、普段は事務職としてそこそこの給料を貰い世に言う”ブラック企業”でもない普通に休みも貰える会社で働いている。
 変わり映えのない日常に飽き飽きし、転職を考えたりしたが…ずるずると今の会社に数年留まっている内にその気力も無くなってしまった。
 
 
 「あ~、これ死んでたり昏睡状態だったりしたら困るだろうな~。職場に連絡行ってるかな?てか死んでたら無理だわ~!!親にPC見られたら死ねる…無理…やめて…」


 尚子は”もし”のことを思い浮かべて頭を抱え「ウガアァァァァ!!」と叫んだ。


 
 親や友達等、知り合いには絶対に見せられないモノが1つ2つ・・・・どころじゃない。

 「あぁ、本当。どうでもいいとか思ってたけどやっぱ死ぬのは困るわ…生きてることを全力で祈ろう。」



 言葉に形容し難い羞恥の感情を何とかやり過ごした尚子は、「よし!」と心を切り替え当てもない道をまた歩き始めた。

 
 
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