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23話 二人で息を合わせて

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 飛青竜スリースンは、俺に切り落とされた翼を庇うような姿勢をとりながら、俺達を金の瞳で睨みつけてきた。
 たったそれだけでも強い圧を感じてしまう。
 
 まぁ、ルーレルがかけてきた圧とは比べものにならないけどな。

 俺は剣を構えて、視線を動かさずに横にいるルーレルに声をかける。
 ルーレルも視線を飛青竜から離そうとしない。

 「2人で息を合わせて動くぞ。じゃないとあいつの攻撃でやられる」
 「わかった……。じゃあ……私に合わせて……」
 「え? そんな急に言わ――」

 言われてもと言おうとしたが、俺はそこで言葉を止めた。
 ルーレルは出来ないことを言わないはずだ。
 この短期間で様々なことを教わったが、何一つ無理なことは言わなかった。
 だから、そんなあいつを俺は信じる。

 ルーレルと剣を交えて、少しだけでもあいつのことを理解することが出来たはずだ。
 ルーレルの避け方、攻撃パターン、動き方……それらを全て思い出して合わせるんだ!

 「行くよ……」
 「準備は出来てる」

 俺達は同時に地面を踏み込み、大地を疾走した。
 
 飛青竜は俺達の足を止めるために、青い火球を口から吐き出した。
 もし俺1人で戦っていたら、この火球を避けていただろう。
 だが、今はその選択をしない。
 
 この足の動きは恐らく――。

 ルーレルの足の動きを見て、何をしたいのかを予測する。
 それを成功させるために、俺には何が出来るのか。
 それは――。
 
 「ありがとう……」

 俺はルーレルの前に走りながら移動して、目の前に迫る火球を剣で受け止める。
 火球が消滅していくのを確認すると、ルーレルは高く飛んで、金の矢を空中で造り上げた。

 「行け……」 

 矢はそう指示されると、綺麗な直線を描きながら飛青竜の頭に向かって飛んでいく。

 「キュララララァァァァ!!!」

 その矢が脅威に感じたのか、長い尻尾を使って地面に叩き落とした。
 矢が当たった部分は無傷では済まず、深い傷を負い血を流した。

 俺は飛青竜の目線が上に向いている間に、出来るだけ距離を縮めて次の攻撃に移る。

 「破壊の魔法ゾレスーラ!」

 俺は飛青竜の顔に向かって、至近距離で魔法を放った。
 だが、この硬い鎧を魔法なんかが通るわけがない。
 強靭な爪が生える手を上にあげて、俺の体を引き裂こうとする。
 
 「残念だな。お前は上を見ておくべきだった」

 魔獣に言葉は通じない。
 それ故、避けることはもう出来ない。

 俺の体が爪に切り裂かれる瞬間、ルーレルは上から太い腕を切り落とした。
 俺はその隙に右側に移動して、俺とルーレルで飛青竜の顔の左右についた。

 「じゃあな、飛青竜」

 2本の剣は同時に首に食い込み、太い骨も残すことなく切り落とした。
 
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