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26話 神達の買い物の日に

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 日が照らせば夜の風景とは一気に変わり、町中は人で溢れかえる。
 その人達に紛れて、3人の神が買い物に出かけていた。
 
 「あのジャム……欲しい……」
 「余はこのジャム嫌いだ。こっちのジャムの方がいい」
 「やだ……こっちの方がいい……」
 「どっちも同じだよ」

 グラティオラスとルーレルのやりとりを見て、仕方なく買い物に付いてきたヘルラレンは、呆れた口調で2人の会話に混ざった。
 ジューザラスとライは現在特訓に行っているが、そこについて行きたかったようだ。
 ちなみに、シェラレイもライ達に付いていってどこかに飛び回りに行くようだ。

 「だめだ。というかルーレル、今余達の家には何種類のジャムがあると思う?」
 「分からない……」
 「それはそうだろうな。なんてったって、10種類以上もあるのだからな。それも、全部ルーレルの好きなやつ」

 グラティオラスは、ルーレルの腕を掴み前へ引っ張っていった。
 
 「ジャム……」
 「家にあるジャムを無くしたら買ってやろう」
 「わかった……」
 
 ルーレルは諦めた様子になり、手を引かれながら前を向いて歩く。
 だが、数歩歩けばジャムを見るという行動を繰り返し、悲しそうに下を向いて歩く。

 くっ……!
 そんな顔でジャムを見るでない!
 余が罪悪感を抱いてしまうではないか!

 グラティオラスはそう思いながらも、後ろを振り返らずに進んでいく。
 
 「はぁ……」
 
 そんな2人の様子を見て、ヘルラレンは深くため息をつくのだった。

 



 グラティオラスが持つ袋の中には、食材が大量に入っていて今にも溢れてしまいそうな程だ。
 だが、ヘルラレンとルーレルは手伝う事なく進んでいく。

 「早くー」
 「無理に決まってるだろ。それに、余の手も限界だ」
 「えー……」
 
 面倒くさそうな表情を浮かべながらも、グラティオラスの所まで戻り荷物を持った。
 しかし、想像以上の重さだったのか、顔を顰めて両手で持った。

 グラティオラスは額に浮かべた汗を拭くと、すぐ隣にある店に気づいた。
 
 「ここで休憩しないか?」
 「休憩?」
 「ライ達もいない事だし、別に何を食べたってバレないはずだ」
 「なんでもいいの……?」
 「特にジューザラスには内緒だからな」
 「わかった……」

 3人は、ライ達に食べたことを言わないと約束して、店の中に入った。
 もうそろそろ昼間ということもあり、店内には大勢の冒険者で溢れかえっていた。

 昼前から酒を飲む者、豪快に肉に食らいつく者、たわいのない会話をする者、その中に神達は混じりそれぞれ食べたい物を注文する。
 
 「そういえばルーレル、ライはどのくらい強くなったのだ?」
 
 早めの昼食ということで、グラティオラスは肉と果物ジュースを注文し、先に運ばれてきた果物ジュースに口を付けながら質問した。

 「見違えるほど成長した……。成長スピードが……異常……」
 「ルーレルの教え方が上手いのだな」
 「じゃあ、私また今度戦おーっと」

 ヘルラレンは運ばれてくる食事に目を輝かせながら、フォークを手に取った。
 
 「いっただっきまー……す……」
 
 ヘルラレンは浮かべた笑顔を消しながら、食事代を支払って出ていった女に目を奪われていた。
 そのヘルラレンの様子にグラティオラスは首を傾けながら、同じように出口に視線を向けた。
 だが、そこには誰もいない。

 「どうした?」
 「なんか……黒髪の長髪の女がいたんだけど、そいつが――あ、やっぱり違ったー」
 「嘘をつくな。どうしてそんな分かりやすい嘘をつく」
 「本当に違ったんだってー。見間違えただけだよー」

 アハハ、と笑いながらヘルラレンは、何とか話題を変えようとする。
 
 勘違いに決まっている。
 勘違いじゃないとおかしい。

 ヘルラレンはありえない事に頭が少し混乱しながらも、勘違いをしたという事をグラティオラスに言い続けた。
 
 もし言ったら、グラティオラスの心に傷を負わせてしまうかもしれない。
 の出来事は、グラティオラスが1番責任を感じているはずだ。
 だから、絶対に言えない。

 店を出ていった女から、消滅したはずのの気配を感じたなんて、絶対に――。
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