スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ

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38話 お前達に構ってる暇はない

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 はぁ……はぁ……あと少しだ……!
 あと少しでハーシュの所に!
 
 俺たちはジューザラスにあの場を任せたあと、1度も止まらず走り続けていた。
 グラ達は息切れを起こしておらず、ルーレルの肩に止まっているだけのシェラレイも当然息切れを起こしてはいない。
 息切れを起こしているのは俺だけか。

 て、そんな事はどうでもいい。
 もうすでに王都は見えている。
 このまま走り続けて少しでも早く――。

 そう思うと、どうしても邪魔が入るらしい。

 「おい、ライ・サーベルズ。止まれ」

 俺は走りながら視線を横に向けると、またピエロのマスクをつけたヤツが3人立っていた。
 1人増えていやがる。

 だが俺は一々立ち止まらないことにした。
 どうせジューザラスが相手にしているピエロ達と同じ目的だろうし。

 「無理だ! 俺達は今急いでる!」
 「そんなこと知ったことか。私たちは――」
 「先に行って……。私が……相手する……」
 「私もやってやります」
 
 ルーレルは走る足を止めて剣を引く抜くと、岩に立っているピエロ達にスッと構えた。
 ルーレルはいつも以上にやる気なようだが、肩に止まっているシェラレイもやる気のようだ。

 「頼んだぞ!」
 「任せて……」
 「生きる地獄を見せて差し上げます」

 仮面越しからピエロ達の唖然としている顔が想像できる。
 俺はお前達に構ってる暇はねぇんだよ!

 
 ◇◆◇◆◇


 「いいのですか? あなたお一人で」
 「別に問題ない……。余裕……」
 「そうですか。それにしても、アングリーとスマイリーは何をしているのやら。獲物を逃すなんて愚の骨頂ですね」
 「スケアリー様。ここは俺たちにお任せください」
 
 恐怖するピエロの仮面を被っている者がリーダーなのか、横に立っていたピエロ達は跪いた。
 
 「わかりました。では頼みますよ。ハッピー、ディスガスト」
 
 スケアリーと呼ばれたピエロは別の2人に許可を出すと、2歩後ろに下がって肩まで伸びる青髪を弄り始めた。
 
 それとは逆に、喜んでいるマスクをつけているピエロと、嫌気がさしているようなピエロのマスクをつける2人はルーレル達に体を向けた。
 
 マスクをつけた状態でよく戦えるな、と思ったがルーレルだがそんな事はすぐに頭から排除した。
 相手が圧倒的に弱いと感じてしまうと、どうでもいいことを考え始めてしまうには悪い癖だ。
 
 「好きな時に……来ていいよ……」

 ルーレルは挑発するように手の指先を前に出して軽く動かした。
 それを見たピエロ達は少しだけ体がピクッと反応した。
 マスクを付けているせいで表情は見えないが、多分怒ってるんだろうなとルーレルは考えた。

 仮面は笑ってるくせに。

 「随分と余裕そうですね。まさか、僕たちに勝てるとでも?」
 「言ってやるなディスガスト。少しでも強気なところを見せたいのだよ」
 
 ルーレルの挑発に挑発で返してくるピエロ達。
 だが、シェラレイはそれをさらに挑発で返した。

 「貴方達は確かに強いのでしょう。ですが、私達には到底及びません」
 「なんだと……?」
 「それが信じられないというなら来てみなさい」
 「チビな鳥が何を言っているのやら。いいだろう。焼いて食うことにしよう」
 「僕の分も分けてくださいね」

 ピエロ達はそう言うと、姿勢を低くして地面を強く蹴った。
 接近してくる速度は目で追えないほど速く、そして魔法を使用されればどうしようもないなく終わるだろう。
 人間なら、だが。

 「貫く魔法イラーサル!」
 「硬直させる魔法ディグゾ
 
 ピエロはルーレル達に向かって同時に魔法を発動し、一気に仕留めにかかってきた。
 片方が動きを止めて、もう片方が確実に仕留める。
 確かに良いコンビネーションなのは間違いない。
 
 ディグゾの魔法効果により、ルーレルとシェラレイの体は硬直してその場から動けなくなった。
 そうなれば攻撃はもう防げない。
 イラーサルによって見えない攻撃が飛んできて、ルーレルの体を激しく貫く――とピエロ達は考えた。

 だが、相手は神なのだ。
 人間が考えるような事を遥かに上回る事をしてくる。

 俺達を馬鹿にした事を後悔するのだな。
 わざわざ俺達の標的を逃しておいて自分が死ぬなど、実に哀れで仕方がない。
 
 ピエロはマスクの下で笑みを浮かべながら、ルーレルが貫かれて死ぬ姿を想像した。
 恐らく、この場にいたピエロ全員がそれを想像したはずだ。
 
 しかし、神というものはなのだ。
 
 「嘘……だろ……」

 血で染まる惨劇を想像していたピエロ達にとって、今のこの状況は全くかけ離れたものだった。

 「おいお前……一体何をやったんだぁ!」
 「攻撃を……弾いただけ……」 
 「弾いた? 弾いただと!?」
 
 俺の魔法が弾かれる?そんなことがあるわけがない! 
 俺がこの魔法を使って失敗することなど、今まで一度もなかった。
 それなのに、このガキみたいな女と鳥に本当に弾かれたとでもいうのか!

 もうすでに魔法の効果は切れ、ルーレルは肩を少し回して剣を引き抜いた。
 シェラレイも肩から飛び降りると、小鳥と同じ大きさから人よりも一回りでかい姿へと変化した。

 「……ふははっ! なんだその姿は! ただ体を大きくしただけで勝てるとでも思っているのか!」
 「勝てるも何も、貴方が馬鹿にした小鳥の大きさだけでも十分、?」
 「待てよ……もしかしてお前……!」
 「まさか気付いていなかったのですか? 私が空を支配する魔獣、飛青竜スリースンてことを」
  
 飛青竜と聞いて恐怖しない者は恐らく神を省いていないだろう。
 ピエロの目の前に立つ竜は、数々の冒険者を帰らぬ者とし、騎士団もを蹴散らした最凶の魔獣なのだから。

 シェラレイは一瞬怯んだ隙を見逃さず、体から無数の鱗を飛ばしてピエロの動きを封じた。

 「私の鱗がどれほど硬いか知っていますよね。もし少しでも動けば……貴方を囲う全ての鱗が牙を剥くでしょう」
 「クソ……」
 「ハッピー!」
 「よそ見……だめ……」
 
 なんなんだよ……なんてこの女はこんなに強いんだ!
 
 シェラレイがピエロを相手にしている間、ルーレルはもう1人の方を相手に剣を振っていた。
 だが、ルーレルにとってこんな相手では物足りない。

 少しでも強い相手と戦いたい。
 あのスケアリーと呼ばれた人なら強いかも……。
 
 「光剣の薔薇……」

 ルーレルが静かにそうつぶやくと、金に輝く光が集まっていき無数の剣がピエロを囲った。

 「もう貴方飽きたから……そこで待ってて……」
 「おい!」
 「少しでも動いたら……死ぬから……」
 
 まさかディスガストとハッピーが、こんなにも早くやられるなんて……。
 まあ良いでしょう。
 私がこの者達を倒せば良いだけなのです。
 どうせ大したことないのですから。
 
 この愚かな考えによって、後に地獄を見せられるなどこの時は知る由もなかった。
 
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