最強聖剣使いが魔王と手を組むのはダメですか?〜俺は魔王と手を組んで、お前らがしたことを後悔させてやるからな〜

東雲ハヤブサ

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9話 俺と父様

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 「クリム、剣はこうやって振るんだ」

 俺の剣術は父様に教えてもらった。
 父様は国王だったため、多忙な日々だったがそれでも空いている時間は、俺の勉強に付き合ってくれたり、剣の振り方、魔法の使い方を教えてくれた。
 母様は俺が5歳くらいの時に病気で亡くなってしまい、その時に初めて父様の涙を見た。
 
 母様を亡くしたのに、今までと同じように国民と接して、仕事をこなした。
 それでも、悲しみがなくなったわけではない。
 夜になって父様の部屋に行くと、小さな声で泣いているのが聞こた。

 誰にも計り知れないほどの悲しみを抱えながら、今までと同じように接する父様を、俺は心から尊敬していた。
 いつか必ず、父様のような人になると心に誓っていた。
 
 それから、ほとんど毎日のように剣術を教えてもらった。
 足の動かし方、腰の使い方、腕の使い方、剣の角度、攻撃パターン、剣に関することだけでも、数え切れないほどのことを教えてもらった。

 父様の剣術は、勇者にも匹敵するほど凄いものだった。
 勇者と聖剣使いの違いを簡単に説明すると、勇者は大きな功績と上げたもので、聖剣使いは名前の通り聖剣を扱う者のことだ。
 勇者の使用する武器は皆違うが、大抵剣を使う。
 国王でありながら、それ程の剣の腕前を持つ者はなかなかいない。
 父様はそれ程凄い人だったのだ。

 そんな父様に10年近く指導してもらえたおかげで、俺は相当な技量を習得することができた。
  
 そしてある日、俺の元に一通の手紙が届いた。
 その手紙には、聖剣使い選抜対象者に選ばれたと書かれていて、日時と場所が書かれていた。
 そして当日、書かれていた場所に向かうと、500を超える人数がいた。
 聖剣使いが選ばれるのを見ようと、集まってきていたのだ。

 その人達をかき分けて、前に立っていた騎士に手紙を渡すと、待機場所に案内された。
 そこにはすでに5人いて、俺は最後の1人だった。

 「只今より、聖剣使いの選抜を始める!」

 その声と共に、人々は大声をあげて盛り上がり、熱を膨らませていった。

 俺たちはまた騎士に連れられて、人々の前にやってきた。

 「この中から聖剣使いが選ばれるのか」
 「でも子供ばっかりだな」
 「バカ! それでも俺達より強いんだぞ!」
 「俺達の方が弱いって、なんか悲しいな……」

 勝手に何やら言っているが、殆どの会話は俺の耳には入ってこなかった。
 俺を含めて選抜対象者は、目の前の岩に刺さっている金に輝く聖剣に釘付けだった。
 聖剣は神によって作られた剣だとされている。
 本当に神が作ったのか知らないが、この剣に不思議な力が込められているのは事実だ。
 
 この剣を絶対に引き抜く。
 そのことしか、俺の頭にはなかった。
 
 「では始める」

 1人の騎士の声と共に、1番左に立っていた奴が岩を登り剣に手をかけた、足を踏ん張って両手で思い切り引っ張る。
 だが、剣はびくともしない。
 これが聖剣か。

 「次!」

 2人目も同じように岩に登っていき、剣を握る。
 だが、抜けない。

 「次!」

 同じように合図が出されるが、3人目も抜くことができなかった。
 そして、4人目も、抜けなかった。

 「次!」

 そして俺の番が来た。
 岩に手をかけて登っていく。
 少し大きな岩だが問題ない。

 足をかける場所を見つけて、さらに登っていく。
 それを繰り返していくうちに、金に輝く剣の姿が明らかになった。
 岩を問題なく登りきり、聖剣に手をかける。
 両足と両腕に力を入れて、強く引っ張る。

 「え?」

 だが、聖剣はびくともしなかった。
 何度引っ張っても全く動かない。
 本当に抜けるのか? 
 と思ってしまうほどだ。

 「もういいか?」
 
 騎士がそう聞いてくるが、俺はもう少しだけ待ってくださいと言って、剣を引っ張り続けた。

 動かない。
 びくともしない。
 俺じゃダメなのか?
 俺は聖剣使いにふさわしくないのか?
 もしこの剣に認められなかったら、父様に合わす顔がない。
 俺の額から汗が流れていく。
 そうしてだ!
 あれだけ長い時間、父様に稽古をつけてもらったのに!
 何が駄目なんだ!
 俺じゃ……俺じゃ聖剣使いには――。

 『肩の力を抜いて』
 「誰だ?」

 突如声が聞こえ、俺は後ろを振り返るがそこには下で騒ぐ人々しかいない。

 気のせいか。

 俺はそう思い、もう一度力を入れる。

 『ほら。また肩に力が入ってる。だから力を抜いてって、言ってるでしょ?』

 そう耳元で囁かれるような気がしたと思ったら、次は肩に手を当てられている感覚があった。

 「さっきから誰だ」
 『そんなことどうでもいいでしょ。ほら。力を抜いて、剣を引っ張るだけ』 
 「そんなことして抜けるか」
 『聖剣を手に入れたくないの?』

 俺はそう聞かれ黙ってしまった。

 『ふふふ。やっぱり欲しいのでしょ? だったら、私の言った通りに肩の力を抜いて、心を落ち着かせて、引っ張ればそれでいい』

 俺は言われた通りにすればいいか悩んだ。
 なぜなら、これだけ力を入れても抜けないのに、逆に力を抜いて引いても抜けるわけがない。
 でも、どうせこれ以上力を入れても抜けそうにないし、言われた通りにしてみるか。

 心を落ち着かせるために、深く息を吸って吐いた。
 それを何度か繰り返し、肩を回す。

 そして、体の力を抜き剣を握りしめる。
 
 『今よ』

 その声と同時に、剣を引っ張った。
 すると、今までにないような感覚が体に走った。
 剣がぐらっと揺れたかと思うと、そのまま上に上がって剣が抜けた。

 「え……抜けた……」
 『ふふふ。やっぱり言った通りでしょ? またね』

 そう言い残すと、俺の背後から気配が消えた。

 俺が呆然としているのに反し、人々は大声で騒いでいた。
 それに気がつくまで、しばらく時間がかかった。




 
 「父様! ただ今戻りました!」
 「おお! クリムっ!」
 
 すっかり城内は祝いムードになっていた。
 
 多くの人に囲まれていた父様は、俺の姿を見ると笑いながら歩み寄ってきた。
 
 「父様……俺……俺……」
 
 父様は、俺の身長に合わせるようにしゃがみ込むと、俺を力強く抱きしめた。
 
 「お前は俺の誇りだ。本当によくやったな」
 
 そしてその時、父様の涙をもう一度見た。



 
 父様のあの時の笑顔と、涙は俺は死ぬまで忘れない。
 もう一度父様の笑顔を見たい。
 だが、俺のそんな願いは、一生叶うことはない。
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