最強聖剣使いが魔王と手を組むのはダメですか?〜俺は魔王と手を組んで、お前らがしたことを後悔させてやるからな〜

東雲ハヤブサ

文字の大きさ
28 / 33

28話 依頼について

しおりを挟む
 俺たちが受けた依頼内容は、針千獣という厄介な魔獣な討伐だ。
 全身は毛で覆われていて、四肢は丸太のように太く、鋭い牙が生えている。
 この魔獣の名の通り、全身の毛は針のように硬く、刺さってしまえば返しが付いているため、中々抜くことができない。

 この魔獣を見かけたら、まず逃げろと言われているくらいだ。
 つい最近、針千獣を甘く見て近づいた冒険者が、全身に毛が刺され大量出血で死亡という悲惨な事件が起きてしまった。
 その事件はどう考えても冒険者が悪いのだが、もしそれが冒険者以外だったら取り返しがつかない。
 だから、そうならない為にも、街周辺に住み着いている針千獣も討伐依頼が出されているのだ。

 「でさぁ、どこにいるの? なんとか獣ってやつ」
 「ここら辺だったはずですよ。そう紙にも書いてありましたし」
 「その情報が間違ってなければいいけどな」
 「そういえば、聖剣使いってバレなくて良かったね。ここってヴァラグシア王国の領内だから、見つかってたらやばかったんじゃないの?」
 「間違いなくやばい。俺は一応追放されてる身だし」

 俺は聖剣使いになってから、自分から依頼を受けに行ったことがなかったせいで知らなかったことなのだが、どうやら依頼を受けるには冒険者でないと駄目らしい。
 俺は聖剣使いであり、冒険者ではない為、依頼を自分で受ける事はできないのだ。
 そういうことで、今回は俺とミラノがラーシェの同伴者となって依頼を受けている。
 もし、俺たちが冒険者だったならば、冒険者ギルドが報酬などを均等に割り振ってくれるらしいが、俺たちの場合は全てラーシェに報酬が渡される。

 自分たちで割り振れということらしい。
 
 「全然見つからないじゃん。早く暴れたかったのに――いたぁ!」

 突然飛び跳ねて走り去っていたミラノの先を見る。
 すると、確かに目標のがいた。
 それも三体も。
 
 どうやら情報は合っていたようだ。
 
 「急いでミラノさんを追いかけましょう」
 「そうだな。何か問題が起こる前に――」

 しかし、俺たちの心配を他所に、ミラノはすでに入っていた。
 自分の世界に。

 「岩を砕き全てを飲み込む。その神秘の力を我に与えよ。水竜渦天ドラゴンロード

 ミラノが詠唱を終えた直後、地面が少し振動を始めた。
 それと同時に、六つの水の竜巻が発生し、予測不能な動きをしながら針千獣に襲い掛かっていった。
 竜巻は容赦なく三体の獣の巨体を巻き込み、何十メールと巻き上げる。
 激しい渦の中で何度も回転し、凶器の毛が抜け落ち巨体は地面に思い切り叩きつけられた。

 「ギュギャァッ!」

 短く、しかし苦しむが伝わってくる悲鳴らしきものを上げながら、その命は散っていった。

 「俺たちが心配することは何も無かったな」
 「そう……ですね……」

 満足げな表情でミラノは歩いてくると、両手を腰に当てて胸を張った。

 「どう? 私強いでしょ!」
 「はいとしか言えませんよ。それに何本も渦をさせるなんて凄いですね」
 「でしょでしょ!」

 通常の人間がドラゴンロードを使うと、一本の渦しか出すことが出来ない。
 しかし、ミラノは複数の渦を出現させることが出来た。
 なぜ出来たのかという話だが、単純な話でただミラノの魔力量が多いからだ。

 火魔法の初級魔法である火炎の矢ファイアアローで言えば、一般的な魔力量を持つ冒険者が放てば、大体15本くらいの矢が出現して相手に向かっていく。
 それに対して、その倍の魔力量を持っている者が使えば、それに合わせて矢の数も倍に、飛んで行く速度も倍になるのだ。

 「ていうか、もう依頼達成しちゃったけどどうするの? 全然時間経ってなくない?」
 「ミラノが一瞬で倒しちゃったからな」
 「私の凄さが分かったね」

 しかし、本当にどうしようか。
 今戻ったところで、多分ラーシェのお兄さんは帰って来てないだろうし。
 また依頼を受けに行くか。
 でもそうすると、今度は逆にお兄さんを待たせてしまうかもしれない。
 それは失礼だ。
 
 んー。
 長い間待つことになるかもしれないけど、一旦笑うピエロの本部に戻るか。

 と、俺の中で今後の動きが決まった時、ミラノが肩を叩いて来て遠い山を指差した。

 「ねえ。魔獣か何かの鳴き声が聞こえなかった?」

 その方向を見てみるが、姿どころか鳴き声さえ聞こえない。

 「別に何も。どうせ発情期の魔獣が騒いでるんだろ」
 「発情期って……。流石にそうだとしても大声で叫ばなくない? 凶暴な魔獣に自分の位置を知らせることになっちゃうんだよ?」
 「そんなこと言われても、聞こえなかったものは聞こえなか……聞こえた」
 「私も聞こえました」

 そして俺は、嫌な予感がした。
 
 「竜種……じゃないよな」
 
 竜種だった場合、俺達なら倒せないことはない。
 しかし、無傷で済むことは恐らく無理だ。
 それだけ竜種は強い。

 「でも竜種だったらそれだけ手ごたえがあるよ」
 「こんな時に手ごたえを求めようとするな。とにかく一旦戻ろう。厄介な魔獣に襲われたら面倒くさい――」
 「もう遅いよ」
 「え?」

 俺の返事に応えるように、俺の後ろをミラノは顎でくいっと指した。

 「だってほら」

 俺とラーシェは、それにつられて後ろを振り返る。

 「ちょっとあれは流石に……」
 「俺達生きて帰れるか……?」

 この時期になると、魔獣達は群れを作る。
 その理由は、子孫を残すためだ。
 オスを筆頭に数匹のメスで構成される魔獣の群れは、通りかかる者すべてを敵とみなし命を奪うまで襲い続ける。
 弱い魔獣の群れならば討伐すれば良いのだが、もしそれが竜種だったらどうするのか。
 答えは簡単。
 死を受け入れるだけ。

 しかし、幸いなことに竜種が群れを作ることは滅多にない。
 稀に、本当に稀に群れを作り繁殖をするのだ。

 そして、少し離れた場所からその「稀」が俺達へと向かって来ていた。
 中々出来ない体験だ。

 「数は七体か。逃げた方がいいんじゃないか」
 「多分、ここまで近づいて来られていると、逃げるのは不可能だと思います」
 「じゃあ……戦うしかないってことか」
 「残念ながら」
 
 ラーシェは《不死鳥フェニックス》を発動し、俺も聖剣を手に取り《光之王》を発動する。
 体力の消耗が激しくなってしまうとは言えど、使わなかったら喰われる未来しか見えない。
 七体なんていう数の竜種は相手にしたことないが、ここは聖剣使いとして負けるわけにはいかない。
 だって負けたら死ぬもん。

 「ミラノ、ビビッて逃げるなよ」
 「私クラティス様の幹部だよ? 怒らせた時のクラティス様を一回見た人なら、怖いものなんて無くなっちゃうよ」
 「……何したんだよ」
 「冬の時期に風呂場を水魔法で凍らせて、そこにクラティス様を閉じ込めた」
 「今生きてるだけ感謝しとけ」

 そんな冗談を交わしている間に、竜達との距離はだいぶ縮まった。
 物理的に。
 完全に奴らは俺達を捉えている。
 逃がしてくれるつもりもなさそうだ。

 「行くか」

 各々戦闘態勢に入り、一歩目を踏み出した――。
 直後、先頭にいた竜に何かが落下し、血しぶきを上げることなく灰となり姿が消滅していった。

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

処理中です...