憤慨

ジョン・グレイディー

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第二章

常軌を逸した逆恨み

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 憤りがおさまらない。俺の直情を邪魔した奴らめ。何の権利があって俺の直情を邪魔したのか!

 腐れ共が!

 企み、群れ、卑怯に俺から獲物を奪う。

 そして、俺から遠ざかり、一息着いている輩め。

 俺は覚えている。貴様らの企み、俺は覚えている。貴様らからの屈辱を…

   まぁ、良い。貴様らに言っても分かるまい。
 だからこそ、代わりに神を恨む。
 俺を幸せにしろとなど、厚顔無恥な戯言は言わないが、せめて、神よ、不幸の数は平等に与えよ。

 生を貰った時から不幸が介在したことは充分承知している。

 生きることは不幸の積み重ねである。
 
 分かっている。

 ただ、皆に不幸を与えろ!

 俺の直情を邪魔した企て者にも不幸を与えよ!
 それも俺の眼下に曝け出せ!そいつらの苦しみを俺に知らしめよ。
 俺は何も企てなどしていない。
 直情に従い、真っ正面から運命にぶち当たっただけだ。

 そのことに対し、あなたを、神を、恨むつもりは毛頭ない。
 そんな小さな事などではない。

 不幸は俺の傍にいつも介在しており、今更、不幸なしでは生きることさえできない。

 分かるか、神よ。

 俺の言っている事が分かるか?

 俺に分かるように企て者の不幸の量を知らしめよ。
 貴方しかできないだろう?

 人類がどんなに踠いても、感情の表出化を数値で表す事などできないのだ。

 夢でも良い、俺に分かるように、俺の直情を邪魔した企て者の不幸量を表せ!

 そうすれば、俺の心は落ち着きを取り戻す。

 この世に生を受けた者が幸せだけで死を迎える事など決してない事を俺は承知している。

 しかし、イカサマ野郎は、猿芝居しながら、不幸を隠し、俺より幸せであったと痩せ我慢している。
 それが俺には許せない。

 俺の直情を邪魔した企て者、俺の人生の転機に必ず現れる企て者、奴らを俺は覚えている。奴らを決して俺は許さない。

 これが今の私の心の声である。

 初めての屈辱は幼稚園の年長の時であった。

 スナック菓子の景品のヒーローカードが欲しく、スーパーで根こそぎ万引きした。
 
 警察が家に来た。

 母親は狼狽した。

 警察官は庭の岩影に隠したヒーローカードの束を難なく見つけ出した。

 そして、母親に威張ってこう言った。

「貴方の子は犯罪者です。将来、とんでもない犯罪を犯しますよ。」と

 母親は俺の両腕に包帯を巻き、俺にこう諭した。

「泥棒したら、この手がもがれるよ。」と

 高校2年の時、社会見学のバス旅行を俺はボイコットした。

 校内放送で俺の名前が呼ばれ、校長室に来る様に何度も何度も鳴り響いた。

 俺は校長室に行き、正座をさせられた。

 そこに校長らと体育の教師がいた。

 この体育の教師は俺が日頃から眼光鋭く睨み続けていた、黒豚野郎だ。

 いつも俺に怯えていたくせ、今日の黒豚は、意気揚々と俺の顔面を何度も殴り続け、俺に宣った。

「お前のような人間は碌でもない人生を送る。お前の親の育て方が悪いからだ」と

 ここぞ場かしに俺を罵り、殴り続けた。

 俺は口から血の唾を吐き、奴に一言だけこう言った。

「お前は何の権利のもとに俺を殴っているのか」と

 奴は返答に困った。何も言えなかった。

 俺の眼光は、奴の心の急所を抉り出すかのように、睨み突き刺した。

 奴の足元から震えが起こったのを俺は確認した。

 ポリ公、先公よ、お前らは何の権利のもと、俺に向かって宣うのか!

 拳銃を持った役立たずと、子供相手にしか宣う事ができない世間知らずの自己中達よ。

 俺はお前らを決して許さない。

 神よ聞くが良い。

 俺の逆恨みは、お前が企てたのだ。

 俺は企てなどしていない。

 お前だ!
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