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第三十三章
過去を覗く者に未来計画は施されない!
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長崎には2年間居た。
忌まわしい過去の表出化を願い、運命の道を辿り熊本から長崎に来た。
その過去の全貌を見ることは出来なかったが、「高貴の微笑み」との別れの争点効は掴んだ。
合わせて、会社人生の限界、組織人としての行止まりが見え隠れし出したのが、この長崎2年の終盤であった。
雑魚のイタチ野郎、本社の犬に躾を教え込んだのは、遊びに過ぎなかった。
その本社の犬に迎合し、遠慮し、職責を放棄する会社上層部の思惑が見えたことに、最早、この会社における俺の居場所は無くなったと言っても過言ではなかった。
俺がこの会社を去るのは時間の問題となっていた。
女支店長を始め、小心者の支店長代理らは、会社全体、会社の未来を考えることなく、自身の保身に全力を注入し、今ある幹部職員の処遇、そう、昇進問題に躍起となり、それぞれが今よりも上に昇ることへ餌を撒いた。
そして、それは指導者としての実績だと宣った。
しかし、俺から見れば、その愚行は、実力ない者が自ずと選択する、餌の、ご褒美の分け合いに過ぎず、そして、そもそも、その餌が腐って見えていた。
やがて、餌の分け合いが終わり、時は新年に移り、長崎の生活も残り3ヶ月となった。
俺の次の行き先は、またしても大阪となった。
大阪には苦い思い出しかなかったが、俺にとって、次にどこに赴任するのか、何のポストに昇進するのか、そんなことは、どうでもよかった。
この腐った組織における死に場所がどこになるか、どのような死に方をするのか、そのことのみに俺の興味は注がれていた。
どうせ犬死するなら、この組織の腐り加減を見たい気持ちもあった。
俺は大阪行きに承諾した。
このように、長崎の終盤における俺の会社生活は、より一層、惰性となり、モチベーションなど存在せず、牙も爪も引っ込め、言ってみれば、至って無駄で平穏な日々を送っていた。
ただ、俺のこれまで蓄積した「怒り」のアーカイブは、映写機で回され、映像として映されることを望み出していた。
そう。
俺の心は、「高貴の微笑み」の出現を待ち侘びていたのだ。
俺の悪い心は了知していたのだ。
愛の過ぎ去りは闇を呼び起こし、そして、そこに鎮座する者は、神しか居らぬことを…
その時は訪れた。
仕事始め早々であった。
正月は家族の居る福岡に帰省していた俺は、1週間振りに、長崎の「丘の上」の社宅に戻った。
その日、俺の心には喜びも怒りもなく、今思えば、「無」に近い状態であり、ウィスキーを軽く飲み、薬を多量摂取することもなく、何となく、気怠い気持ちを抱きながら、その夜は早々に布団に着いた。
どれくらい寝たであろう。
俺はそろそろ夜明けかと思い、自然と瞼が開いた。
何という爽快な目開き!
こんなに軽く瞼が開き、目が覚めるのは何十年振りかというような程、軽い目覚めであった。
しかし、俺は時計を見て落胆した。
時計の針は、やっと次の日になっていただけであった。
俺は警戒した。
この軽い夜中の目覚め
誰の企みか…
俺の警戒心は的中した。
寝室の扉の向こうの台所の床が軋んだ。
「黒い影」か!
俺は咄嗟に右手を握り拳に変躰させた。
いつものとおり、寝室の扉が空気に押されるようにそぉーと開き始めた。
そして、半開きの扉から、黒い手が見え、やがて、奴が全貌を露わにさせた。
「黒い影」は、びっこを引きながら、ヨロ、ヨロと俺に近づいて来たが、ある一定の距離を保つと、そこに座った。
俺は「よかろう」と思い、今度は「高貴の微笑み」を迎えるため、天井を睨んだ。
しかし、いつものように天井が落ちることはなく、回転することもなく、暗闇の暗闇を創造することもなかった。
俺は残念そうに「黒い影」に言った。
「今日はお前だけか?」と
「黒い影」は何も答えなかった。
俺は「黒い影」に更に問うた。
「何のようだ。」と
「黒い影」がこう言った。
「お前が彼女を殺した。」
「俺は殺した覚えはない。」
「いや、お前は彼女を殺した。」
「俺がいつ、彼女を殺したんだ?」
「お前が彼女に過去を問うた時だ。」
「別れの理由を問うただけだ」
「違う。お前は過去を問うた。」
「過去を問えば、彼女は死ぬのか?」
「そういうことだ。」
「詳しく説明しろ!」
「黒い影」は、頭に被ったパーカーのような頭巾を脱ぎ、包帯に巻かれた頭部を露わにし、俺にこっ酷くやられた傷痕を見せつけ、こう物語を始めた。
「お前は何故、過去の全貌を見ようとする。過去は過去であり、今、現在には存在しないものだ。それなのにお前は過去に固執する。
いいか!
人間には、過去も未来もないのだ。
人間が見ているのは現在のみだ。
過去は終わったものだ。
未来はこれから始まるものだ。
あるのは今だけだ。
過去を見ようとする人間は、過去を呪う者のみだ。
そして、自身の呪われた過去を見ることは、他人の過去を覗くことになるのだ。
お前は過去を見たいと思い、遡及した。
それはそれで良い。
しかし、それは、過去に戻りたくない者をも帯同し、その者に見たくもない過去を見せつけたのだ。
全ての過去は神の憐れみに任せるべきなのだ。
人間が勝手に過去を見てはならないのだ。
神の憐れみに抗い、過去を見た者は、神の摂理から除かれるのだ。
そして、その愚かな者にあるものは、過去のみとなり、神の深い愛情に満ち溢れる現在を放棄し、合わせて、神の偉大なる摂理である未来計画をも手放すことになるのだ。」と
「彼女は過去に閉じ込められたのか?」
「そういうことだ。」
「過去には何がある。」
「何もない「無」のみだ。」
「「無」は「死」か?」
「そうとは言えん。」
「何故だ!」
「神の偉大なる摂理による「死」は未来に属する。その「死」は「無」ではない。そこにあるのは「希望」だ。「未知なる希望」だ。「死」はその中の一つの扉に過ぎない。
だが、過去の「死」には何もない。「無」の世界だ。そこには、神の恩恵は届かない。」
俺はその瞬間、全てが見えた。
「あいつは死んだのか…」
「お前が殺した。お前が自殺に追い込んだ。お前が殺したんだ。」
「俺が追い込んだ…」
「そうだ!お前が彼女の過去を執拗に非難した。終わったはずの過去を、今更どうにもならぬ過去を、お前が責め続けた。」
「俺が責め続けた…」
「そうだ!「無」しかない過去で、彼女に何が出来る!
お前はそれを分かっていながら、来る日も来る日も彼女を責め続けた!
彼女は、「無」である過去で自殺した。今を未来を見ようともせず、執拗に過去に拘るお前の傲慢さの犠牲となり、自殺したのだ!」
「彼女は自殺した…」
「お前の望むどおり自殺した。お前の復讐は叶った。彼女の愛を犠牲にし、お前のエゴのみが今に残った。」
「俺のエゴのみ…」
「そうだ!お前が別れに拘り、彼女を悪人に仕立て上げ、呪い続けた。
彼女は死ぬまでお前を愛していた。
お前の傍らに居ないだけであり、彼女のお前に対する愛に何の変化はなかった。
お前はそれを分かっていた。」
「俺は分かっていた…」
「そうだ。何度も夢で見たはずだ。彼女のお前に乞う願いは、神への願いにも匹敵していた。何度も何度もお前に乞うたはずなのに。
お前は彼女を赦そうとはせず、過去の全貌に固執したんだ!」
「俺は何故、過去で死なない?」
「お前は既に死んでいる。お前は生きた屍だ。お前の未来に神の摂理はない。」
「俺の未来計画はないのか?」
「そういうことだ。」
「お前は神か?」
「俺は神ではない。」
「お前は神の使いか?」
「神の使いでもない。」
「じゃぁ、お前は何者だ!」
「分からないのか?愚か者よ。俺はお前の「過去」からの使者だ!」
「俺の過去からの使者?」
「彼女は言った。「覗かないで」と。
その過去だ!
お前と彼女の「過去」からの使者だ。」
「俺と彼女の過去?」
「そうだ!二度と覗くな!
いいか!
二度と覗くな!」
俺が2回目に目覚めたのは朝の6時頃であった。
今度の目覚めは、いつもどおり気怠い重い目覚めからして、本物の目覚めだと感じた。
「黒い影」が俺に伝えた事は脳裏に木霊していた。
俺は思った。
「彼女は既に死んだ者と思えか…。
過去に逃げる用事も取り上げるつもりか。
そして、俺には未来計画もない…
あるのは、この腐れた現実だけか…
そろそろ、何もかも潮時か…」と
忌まわしい過去の表出化を願い、運命の道を辿り熊本から長崎に来た。
その過去の全貌を見ることは出来なかったが、「高貴の微笑み」との別れの争点効は掴んだ。
合わせて、会社人生の限界、組織人としての行止まりが見え隠れし出したのが、この長崎2年の終盤であった。
雑魚のイタチ野郎、本社の犬に躾を教え込んだのは、遊びに過ぎなかった。
その本社の犬に迎合し、遠慮し、職責を放棄する会社上層部の思惑が見えたことに、最早、この会社における俺の居場所は無くなったと言っても過言ではなかった。
俺がこの会社を去るのは時間の問題となっていた。
女支店長を始め、小心者の支店長代理らは、会社全体、会社の未来を考えることなく、自身の保身に全力を注入し、今ある幹部職員の処遇、そう、昇進問題に躍起となり、それぞれが今よりも上に昇ることへ餌を撒いた。
そして、それは指導者としての実績だと宣った。
しかし、俺から見れば、その愚行は、実力ない者が自ずと選択する、餌の、ご褒美の分け合いに過ぎず、そして、そもそも、その餌が腐って見えていた。
やがて、餌の分け合いが終わり、時は新年に移り、長崎の生活も残り3ヶ月となった。
俺の次の行き先は、またしても大阪となった。
大阪には苦い思い出しかなかったが、俺にとって、次にどこに赴任するのか、何のポストに昇進するのか、そんなことは、どうでもよかった。
この腐った組織における死に場所がどこになるか、どのような死に方をするのか、そのことのみに俺の興味は注がれていた。
どうせ犬死するなら、この組織の腐り加減を見たい気持ちもあった。
俺は大阪行きに承諾した。
このように、長崎の終盤における俺の会社生活は、より一層、惰性となり、モチベーションなど存在せず、牙も爪も引っ込め、言ってみれば、至って無駄で平穏な日々を送っていた。
ただ、俺のこれまで蓄積した「怒り」のアーカイブは、映写機で回され、映像として映されることを望み出していた。
そう。
俺の心は、「高貴の微笑み」の出現を待ち侘びていたのだ。
俺の悪い心は了知していたのだ。
愛の過ぎ去りは闇を呼び起こし、そして、そこに鎮座する者は、神しか居らぬことを…
その時は訪れた。
仕事始め早々であった。
正月は家族の居る福岡に帰省していた俺は、1週間振りに、長崎の「丘の上」の社宅に戻った。
その日、俺の心には喜びも怒りもなく、今思えば、「無」に近い状態であり、ウィスキーを軽く飲み、薬を多量摂取することもなく、何となく、気怠い気持ちを抱きながら、その夜は早々に布団に着いた。
どれくらい寝たであろう。
俺はそろそろ夜明けかと思い、自然と瞼が開いた。
何という爽快な目開き!
こんなに軽く瞼が開き、目が覚めるのは何十年振りかというような程、軽い目覚めであった。
しかし、俺は時計を見て落胆した。
時計の針は、やっと次の日になっていただけであった。
俺は警戒した。
この軽い夜中の目覚め
誰の企みか…
俺の警戒心は的中した。
寝室の扉の向こうの台所の床が軋んだ。
「黒い影」か!
俺は咄嗟に右手を握り拳に変躰させた。
いつものとおり、寝室の扉が空気に押されるようにそぉーと開き始めた。
そして、半開きの扉から、黒い手が見え、やがて、奴が全貌を露わにさせた。
「黒い影」は、びっこを引きながら、ヨロ、ヨロと俺に近づいて来たが、ある一定の距離を保つと、そこに座った。
俺は「よかろう」と思い、今度は「高貴の微笑み」を迎えるため、天井を睨んだ。
しかし、いつものように天井が落ちることはなく、回転することもなく、暗闇の暗闇を創造することもなかった。
俺は残念そうに「黒い影」に言った。
「今日はお前だけか?」と
「黒い影」は何も答えなかった。
俺は「黒い影」に更に問うた。
「何のようだ。」と
「黒い影」がこう言った。
「お前が彼女を殺した。」
「俺は殺した覚えはない。」
「いや、お前は彼女を殺した。」
「俺がいつ、彼女を殺したんだ?」
「お前が彼女に過去を問うた時だ。」
「別れの理由を問うただけだ」
「違う。お前は過去を問うた。」
「過去を問えば、彼女は死ぬのか?」
「そういうことだ。」
「詳しく説明しろ!」
「黒い影」は、頭に被ったパーカーのような頭巾を脱ぎ、包帯に巻かれた頭部を露わにし、俺にこっ酷くやられた傷痕を見せつけ、こう物語を始めた。
「お前は何故、過去の全貌を見ようとする。過去は過去であり、今、現在には存在しないものだ。それなのにお前は過去に固執する。
いいか!
人間には、過去も未来もないのだ。
人間が見ているのは現在のみだ。
過去は終わったものだ。
未来はこれから始まるものだ。
あるのは今だけだ。
過去を見ようとする人間は、過去を呪う者のみだ。
そして、自身の呪われた過去を見ることは、他人の過去を覗くことになるのだ。
お前は過去を見たいと思い、遡及した。
それはそれで良い。
しかし、それは、過去に戻りたくない者をも帯同し、その者に見たくもない過去を見せつけたのだ。
全ての過去は神の憐れみに任せるべきなのだ。
人間が勝手に過去を見てはならないのだ。
神の憐れみに抗い、過去を見た者は、神の摂理から除かれるのだ。
そして、その愚かな者にあるものは、過去のみとなり、神の深い愛情に満ち溢れる現在を放棄し、合わせて、神の偉大なる摂理である未来計画をも手放すことになるのだ。」と
「彼女は過去に閉じ込められたのか?」
「そういうことだ。」
「過去には何がある。」
「何もない「無」のみだ。」
「「無」は「死」か?」
「そうとは言えん。」
「何故だ!」
「神の偉大なる摂理による「死」は未来に属する。その「死」は「無」ではない。そこにあるのは「希望」だ。「未知なる希望」だ。「死」はその中の一つの扉に過ぎない。
だが、過去の「死」には何もない。「無」の世界だ。そこには、神の恩恵は届かない。」
俺はその瞬間、全てが見えた。
「あいつは死んだのか…」
「お前が殺した。お前が自殺に追い込んだ。お前が殺したんだ。」
「俺が追い込んだ…」
「そうだ!お前が彼女の過去を執拗に非難した。終わったはずの過去を、今更どうにもならぬ過去を、お前が責め続けた。」
「俺が責め続けた…」
「そうだ!「無」しかない過去で、彼女に何が出来る!
お前はそれを分かっていながら、来る日も来る日も彼女を責め続けた!
彼女は、「無」である過去で自殺した。今を未来を見ようともせず、執拗に過去に拘るお前の傲慢さの犠牲となり、自殺したのだ!」
「彼女は自殺した…」
「お前の望むどおり自殺した。お前の復讐は叶った。彼女の愛を犠牲にし、お前のエゴのみが今に残った。」
「俺のエゴのみ…」
「そうだ!お前が別れに拘り、彼女を悪人に仕立て上げ、呪い続けた。
彼女は死ぬまでお前を愛していた。
お前の傍らに居ないだけであり、彼女のお前に対する愛に何の変化はなかった。
お前はそれを分かっていた。」
「俺は分かっていた…」
「そうだ。何度も夢で見たはずだ。彼女のお前に乞う願いは、神への願いにも匹敵していた。何度も何度もお前に乞うたはずなのに。
お前は彼女を赦そうとはせず、過去の全貌に固執したんだ!」
「俺は何故、過去で死なない?」
「お前は既に死んでいる。お前は生きた屍だ。お前の未来に神の摂理はない。」
「俺の未来計画はないのか?」
「そういうことだ。」
「お前は神か?」
「俺は神ではない。」
「お前は神の使いか?」
「神の使いでもない。」
「じゃぁ、お前は何者だ!」
「分からないのか?愚か者よ。俺はお前の「過去」からの使者だ!」
「俺の過去からの使者?」
「彼女は言った。「覗かないで」と。
その過去だ!
お前と彼女の「過去」からの使者だ。」
「俺と彼女の過去?」
「そうだ!二度と覗くな!
いいか!
二度と覗くな!」
俺が2回目に目覚めたのは朝の6時頃であった。
今度の目覚めは、いつもどおり気怠い重い目覚めからして、本物の目覚めだと感じた。
「黒い影」が俺に伝えた事は脳裏に木霊していた。
俺は思った。
「彼女は既に死んだ者と思えか…。
過去に逃げる用事も取り上げるつもりか。
そして、俺には未来計画もない…
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