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第十八章
怨念の残骸
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悪霊祓いは無事に終わった…
その日、俺は妻に言われた通り、結界が創生された後の午後10時過ぎに帰宅した。
帰宅した時には既に多幸は社宅を後にしていた。
妻は疲労困憊の様子であったが、その日の出来事をつぶさに俺に説明した。
いろいろな出来事、怪奇現象等々を…
現に立ち会ってない俺としては、そのイメージがなかなか浮かんでは来なかったが、北部屋からの冷気をいち早く感じていた俺にとって、妻の話は真実に思えた。
説明を終えると妻は俺を北部屋に連れて行き、
「あの杭は絶対に抜かないように。」と押入れ四隅の西の一角を指差しながらそう言い、
こうも付け足した。
「多幸さんが言うには、あの杭が抜け落ちない内にこの社宅から離れるようにと」
「抜け落ちる…、あんなにしっかり打ち込んでいるのに…」
「必ず戻って来るんだって。」
「黒髪の白い女がか?」
「そう。必ずこの部屋に戻って来るので、その時の合図が、杭が抜け落ちた時だって…」
「分かった。早く引っ越そう」
「うん…」
妻からの説明の後、俺は風呂に入った。
俺は湯船に浸かりながら、あの四隅の窪みを見遣った。
「そこから見ていたのか…」と
俺は呟きながら、風呂の小窓を開けた。
浴室の湯気は小窓から夜の暗闇に競うように流れ出て行った。
俺は入浴を済ませ、小窓を閉めて、風呂から上がり、髪を乾かしながら、リビングに行くと、セキセイインコがテーブルの上で遊んでいた。
「この子、今日一日、籠から出せずじまいだっからね。」と妻が言いながら、インコと遊んでいた。
既に午後11時を回っていたが、インコは元気にテーブルの上を飛び跳ねていた。
俺はその光景を見遣りながら、寝室に煙草を取りに行った。
背広のポケットから煙草を取り出し、リビングに戻ると、妻もインコも居なかった。
俺は何も気に留めることなく、換気扇の下で煙草を蒸していた。
すると、妻がリビングに戻って来て、
「あれ?ピヨちゃん(インコの名前)が、居ない?」
「お前と一緒じゃないのか?」
「私、トイレに行っただけよ。テーブルの上で遊んでいたのに…」と言い、
妻はインコの名前を呼びながら、部屋中を探した。
インコは見つからない。
急に事態が一変したことにお互い気づいた俺達は、各部屋を探しまくった。
俺が北部屋を探していると、
「貴方、来て!此処が開いている!」
と妻の叫ぶ声が風呂場から聞こえた。
俺は風呂場に向かうと、閉めたはずの小窓が開いていた。
「貴方、開けた?」
「開けたけど、閉めた。絶対に閉めた!」
「でも開いてる…、此処から出たんだ…」
「そんな馬鹿な!インコは鳥目で夜は見えないんだ!
明るいところから暗闇に出るはずがない!」
「だって、居ないじゃない…」
俺達は急いで部屋を出て、社宅内を探し回った。
特に各階段の電灯の着いてる箇所を探したが、インコは見当たらなかった。
次の朝
「居たわ!ピヨちゃん、居たわ!」と妻が叫びながら俺の部屋に入って来た。
「何処に居たんだ?」
「向こうの棟の3階のベランダ!」
俺達は急いでそこに向かった。
朝、妻は諦めずに1人インコを探していると、廃墟となった棟の空き部屋からインコの鳴き声がしたとのこと。
確かにインコは居た。
俺達は餌で釣りながら、何とかインコを保護した。
妻は部屋に戻るなり、昨夜の異変が気味悪く感じたのか、多幸に電話で相談した。
「そうですか…、鳥は何処に居たのですか?」
「リビングで遊んでいました。」
「そうですか…、もしかすると、リビングにもあの女の念が残っていたかも知れません…」
「そう言えば、秋頃、息子が帰省した時、息子がリビングで黒髪の長い白い女が座っているのを見たと…」
「……………」
「あの、鳥は関係あるのですか?」
「鳥は見たのでしょう。夜目でない限り暗闇に鳥が向かうはずはありません。
恐らく…」
「恐らく…?」
「リビングの中で結界にもがき苦しむ、あの女の怨念の姿を見たのでしょう。
それを怖がり、窓から外に…」
「主人は絶対閉めたと言ってます。」
「閉めたのは間違いないでしょう。
ただ、あの強い念を持った女であれば、小窓を開けるくらい簡単なことです。」
「では、儀式は失敗したんですか?」
「いえ、失敗ではありません。事実、結界から逃げ出している。
ただ…」
「何ですか?」
「西に向かった本身と、この社宅近くに潜んだ分身が…、」
「どうなるんですか?」
「分身が本身を呼びます!
予定より早く戻って来ます。
悪い事は言いません。
いち早く、社宅から出てください!」
俺は多幸の説明を妻から聞くと、
「お前と浩子は明日にでも実家に戻れ!
そして、栗東に引っ越してから、滋賀に戻って来るんだ!」
「貴方は大丈夫?」
「俺は大丈夫さ!霊は俺を怖がってるんだろ!」
「あっ!」
「どうした?」
「そうそう、多幸さんが貴方に確認するようにと…」
「何を?」
「『白い服を着た若い女の夢を見た記憶はないか?』と」
「見たことないなぁ」
「良かったわ。」
「?」
「あのね、この現象は全て、その若い女の夢から始まっているんだって!」
「夢から始まる…」
俺は咄嗟に妻には嘘を言った。
本当は…
『白い服を着た若い女の夢』
似たような夢を20歳半ば頃から今に至るまで、頻繁に見ていたのだ。
「あの夢に関係があるのか…」
俺はそう心に呟いた。
その日、俺は妻に言われた通り、結界が創生された後の午後10時過ぎに帰宅した。
帰宅した時には既に多幸は社宅を後にしていた。
妻は疲労困憊の様子であったが、その日の出来事をつぶさに俺に説明した。
いろいろな出来事、怪奇現象等々を…
現に立ち会ってない俺としては、そのイメージがなかなか浮かんでは来なかったが、北部屋からの冷気をいち早く感じていた俺にとって、妻の話は真実に思えた。
説明を終えると妻は俺を北部屋に連れて行き、
「あの杭は絶対に抜かないように。」と押入れ四隅の西の一角を指差しながらそう言い、
こうも付け足した。
「多幸さんが言うには、あの杭が抜け落ちない内にこの社宅から離れるようにと」
「抜け落ちる…、あんなにしっかり打ち込んでいるのに…」
「必ず戻って来るんだって。」
「黒髪の白い女がか?」
「そう。必ずこの部屋に戻って来るので、その時の合図が、杭が抜け落ちた時だって…」
「分かった。早く引っ越そう」
「うん…」
妻からの説明の後、俺は風呂に入った。
俺は湯船に浸かりながら、あの四隅の窪みを見遣った。
「そこから見ていたのか…」と
俺は呟きながら、風呂の小窓を開けた。
浴室の湯気は小窓から夜の暗闇に競うように流れ出て行った。
俺は入浴を済ませ、小窓を閉めて、風呂から上がり、髪を乾かしながら、リビングに行くと、セキセイインコがテーブルの上で遊んでいた。
「この子、今日一日、籠から出せずじまいだっからね。」と妻が言いながら、インコと遊んでいた。
既に午後11時を回っていたが、インコは元気にテーブルの上を飛び跳ねていた。
俺はその光景を見遣りながら、寝室に煙草を取りに行った。
背広のポケットから煙草を取り出し、リビングに戻ると、妻もインコも居なかった。
俺は何も気に留めることなく、換気扇の下で煙草を蒸していた。
すると、妻がリビングに戻って来て、
「あれ?ピヨちゃん(インコの名前)が、居ない?」
「お前と一緒じゃないのか?」
「私、トイレに行っただけよ。テーブルの上で遊んでいたのに…」と言い、
妻はインコの名前を呼びながら、部屋中を探した。
インコは見つからない。
急に事態が一変したことにお互い気づいた俺達は、各部屋を探しまくった。
俺が北部屋を探していると、
「貴方、来て!此処が開いている!」
と妻の叫ぶ声が風呂場から聞こえた。
俺は風呂場に向かうと、閉めたはずの小窓が開いていた。
「貴方、開けた?」
「開けたけど、閉めた。絶対に閉めた!」
「でも開いてる…、此処から出たんだ…」
「そんな馬鹿な!インコは鳥目で夜は見えないんだ!
明るいところから暗闇に出るはずがない!」
「だって、居ないじゃない…」
俺達は急いで部屋を出て、社宅内を探し回った。
特に各階段の電灯の着いてる箇所を探したが、インコは見当たらなかった。
次の朝
「居たわ!ピヨちゃん、居たわ!」と妻が叫びながら俺の部屋に入って来た。
「何処に居たんだ?」
「向こうの棟の3階のベランダ!」
俺達は急いでそこに向かった。
朝、妻は諦めずに1人インコを探していると、廃墟となった棟の空き部屋からインコの鳴き声がしたとのこと。
確かにインコは居た。
俺達は餌で釣りながら、何とかインコを保護した。
妻は部屋に戻るなり、昨夜の異変が気味悪く感じたのか、多幸に電話で相談した。
「そうですか…、鳥は何処に居たのですか?」
「リビングで遊んでいました。」
「そうですか…、もしかすると、リビングにもあの女の念が残っていたかも知れません…」
「そう言えば、秋頃、息子が帰省した時、息子がリビングで黒髪の長い白い女が座っているのを見たと…」
「……………」
「あの、鳥は関係あるのですか?」
「鳥は見たのでしょう。夜目でない限り暗闇に鳥が向かうはずはありません。
恐らく…」
「恐らく…?」
「リビングの中で結界にもがき苦しむ、あの女の怨念の姿を見たのでしょう。
それを怖がり、窓から外に…」
「主人は絶対閉めたと言ってます。」
「閉めたのは間違いないでしょう。
ただ、あの強い念を持った女であれば、小窓を開けるくらい簡単なことです。」
「では、儀式は失敗したんですか?」
「いえ、失敗ではありません。事実、結界から逃げ出している。
ただ…」
「何ですか?」
「西に向かった本身と、この社宅近くに潜んだ分身が…、」
「どうなるんですか?」
「分身が本身を呼びます!
予定より早く戻って来ます。
悪い事は言いません。
いち早く、社宅から出てください!」
俺は多幸の説明を妻から聞くと、
「お前と浩子は明日にでも実家に戻れ!
そして、栗東に引っ越してから、滋賀に戻って来るんだ!」
「貴方は大丈夫?」
「俺は大丈夫さ!霊は俺を怖がってるんだろ!」
「あっ!」
「どうした?」
「そうそう、多幸さんが貴方に確認するようにと…」
「何を?」
「『白い服を着た若い女の夢を見た記憶はないか?』と」
「見たことないなぁ」
「良かったわ。」
「?」
「あのね、この現象は全て、その若い女の夢から始まっているんだって!」
「夢から始まる…」
俺は咄嗟に妻には嘘を言った。
本当は…
『白い服を着た若い女の夢』
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「あの夢に関係があるのか…」
俺はそう心に呟いた。
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