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第十九章
苦悩のみ残存する記憶喪失
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美咲は高校3年になり、クラスのメンバーも大分変わった。
美咲は、紫穂、中野、吉川、それに茂樹が助けた川島と同じ国立文系のクラスであった。
しかし、そこには茂樹の姿はなかった。
「堀内、自殺未遂で記憶喪失になってるってよ!藤田、知ってたぁ~」
「うん、知ってるよ。」
「何で自殺未遂したんだろう?また、ヤクザに脅され、怖くなったんじゃねぇか。」
「デビルマン、黙れ!」
「おいおい、中野、俺は藤田と話してんだ、あっ、そっか、お前、堀内のこと好きだったんだなぁ、ごめん、ごめん」
「うるさい、悪魔!おめえの顔、見るだけでも胸糞悪いわ!」
「中野、そんなに嫌うなって!一緒のクラスじゃん!堀内居ないからさ、この学校も落ち着くよなぁ~、藤田!」
(…デビルマン、死ね!…)
その時であった。
「バッキー!」と痛烈な音が鳴り、吉川がもんどり打って横転した。
「茂樹が居たら、お前、殺されているぜ。」
川島が吉川を殴り飛ばし、胸ぐらを掴み、さらにもう一発、右頬を殴り飛ばした。
「お、お、おい、川島、やめろョ~」
川島は手で避けようとする吉川に構わず、吉川の身体中を蹴りまくった。
誰も川島を止める者は居なかった。
茂樹が退学しても、茂樹の存在は大きかった。
茂樹は川島を始め、オネェの慎吾や、クラスで村八分されているような奴に優しく接していた。
それは自分の孤独感と奴等が共通するところを感じていたからであった。
茂樹が退学して喜んでたのは、学校教員と3年の工藤ら、そして、デビルマンぐらいであった。
皆んな、代わり番子に茂樹の見舞いに訪れた。
美咲は皆んなが来ない時間帯を茂樹の母親から聞き、面会時間ギリギリの夜9時頃、毎日のように茂樹の手を握りしめ、心で愛を念じる日々を送っていた。
茂樹の自殺未遂から3か月程経った。
美咲がいつものように見舞いに行くと、茂樹の病室が慌ただしく、看護婦が出入りしていた。
そして、茂樹のベットが部屋から運び出され、その横に母親が付き添っていた。
茂樹のベットは手術室に搬送された。
そのドアの前で手を合わせてお祈りしてる母親に美咲は慌てて駆け寄り、
「茂樹君、どうしたんですか?」と尋ねた。
「美咲ちゃん!さっきね、茂樹が『母さん』って突然言ってね、記憶が戻ったんだと喜んでたら、急に、茂樹、頭を押さえて、『痛い』、『痛い』って叫び出したて…」
すると、いきなり手術室が開き、茂樹のベットは急いで運ばれて行った。
ベットの後ろにいた医者が母親に気付き、看護師に指示をして、徐に母親に近づき説明をした。
「今、応急的に鎮痛薬を投入しました。お母さん、茂樹君、脳梗塞の可能性があります。」
「えっ」と母親と美咲は絶句した。
「脳波の問題だけじゃなかったんですか…」
「右脳の血流の問題として電波治療を行ってきました。入院してから記憶障害以外に病状はなかったですし、当初のMRIの検査でも脳内血栓の症候は見当たらなかったんですが…」
医者も困惑している様子であった。
「今から再度、脳のMRI検査をしますので…」と言うと、医者は早足で茂樹のベットを追いかけた。
母親と美咲は茂樹の病室で待機した。
母親は泣くように美咲に話した。
「さっきね、私があの時と同じように、皆さんに分からないようにね、美咲ちゃんの写真を茂樹の枕の下に入れてあげたの…
そしたら、急にね、茂樹、私の方を向いてね『母さん』って言ったのよ!
私、嬉しくてねぇ~、良かったわぁ~って思った矢先に、急に…」
美咲の目からも涙が溢れていた。
美咲は自然に右手で十字を切って神に祈った。
(…神様、茂樹君を御守りください…)と
茂樹のベットが運ばれてきた。ベットに横たわる茂樹の両腕に点滴が注入されていた。
母親は、医者からの説明を受けるため診断室に呼ばれた。
美咲は病室に残り、死人のように横たわる茂樹を見つめていた。
医者は母親に説明した。
「この動脈の瘤です。この血栓により脳血管が詰まり、白くなっている脳細胞が壊死している状態です。
現在はこの血栓を溶かす薬と鎮痛剤を点滴してます。
ただし、血栓がかなり大きいので、カテーテル手術が必要になります。」と
母親は医者に聞いた。
「何で血栓が大きくなったんですか?すぐに気づいたのに…」
医者が母親の肩を押さえこう言った。
「お母さん、茂樹君、記憶を失っていた間もかなりのストレスを感じていたものと思われます。
私も長年、脳外科をしていますが、脳波異常の記憶障害の患者がこの3か月間、それも入院していながら、脳梗塞を発症したケースは始めてです。
お母さん、茂樹君は何をそんなに苦しんでいたのですか?」
「苦しみですか?何も弱音を吐かない子でして…、特に私が離婚してからは、無口になってしまい…」と言い、母親は泣き出した。
医者が言った。
「脳外科として、脳梗塞の治療は全力を尽くします。
ただ、彼の病気の根本はそれでは治らないと思います。
お母さん、脳梗塞の最大の原因は過度のストレスです。
彼の場合、他の記憶を失っていても、ある一定の苦しみだけは脳というか…、心の中で意識し続けていた可能性が高いです。
まぁ、まずは外科的な治療を施し、その後、内面的、心理的な治療が必要になるかと思います。」と
母親が病室に戻って来た。
母親は生きた屍となった茂樹を見遣りながら美咲に説明した。
「茂樹ね、記憶を失っていた間も、何かの苦しみだけは感じていたみたいなの。
非常に強い、ストレス…、自殺未遂した程だもんね…、
この子、私に何にも言わないからね…、
私、この子を救ってあげられないのが、辛くて…」と涙を流しながら美咲に説明した。
美咲は何も言えなかった。それは、私の裏切りのせいですとも…
そして、美咲は一瞬、恐怖を感じてしまった。
(…ここまで、私の裏切りを…、軽い付き合いと何度も言ったのに…、そんなに私は取り返しのつかないことをしたの?茂樹君…、そんなに私は酷いことをしたの?…)と
何故、茂樹が自殺未遂をしたのか、何が原因であったのか、何を苦しんでいたのか…
それは茂樹本人しか分からないことであり、その苦悩を加速させた原因は心の病『うつ病』であることは確かであるが、その『うつ病』の原因が美咲にあるのかどうか、それは、所謂、『鶏が先か卵が先か』の問答であり、おそらく、茂樹本人にも分からないことだと思われる…
美咲は、紫穂、中野、吉川、それに茂樹が助けた川島と同じ国立文系のクラスであった。
しかし、そこには茂樹の姿はなかった。
「堀内、自殺未遂で記憶喪失になってるってよ!藤田、知ってたぁ~」
「うん、知ってるよ。」
「何で自殺未遂したんだろう?また、ヤクザに脅され、怖くなったんじゃねぇか。」
「デビルマン、黙れ!」
「おいおい、中野、俺は藤田と話してんだ、あっ、そっか、お前、堀内のこと好きだったんだなぁ、ごめん、ごめん」
「うるさい、悪魔!おめえの顔、見るだけでも胸糞悪いわ!」
「中野、そんなに嫌うなって!一緒のクラスじゃん!堀内居ないからさ、この学校も落ち着くよなぁ~、藤田!」
(…デビルマン、死ね!…)
その時であった。
「バッキー!」と痛烈な音が鳴り、吉川がもんどり打って横転した。
「茂樹が居たら、お前、殺されているぜ。」
川島が吉川を殴り飛ばし、胸ぐらを掴み、さらにもう一発、右頬を殴り飛ばした。
「お、お、おい、川島、やめろョ~」
川島は手で避けようとする吉川に構わず、吉川の身体中を蹴りまくった。
誰も川島を止める者は居なかった。
茂樹が退学しても、茂樹の存在は大きかった。
茂樹は川島を始め、オネェの慎吾や、クラスで村八分されているような奴に優しく接していた。
それは自分の孤独感と奴等が共通するところを感じていたからであった。
茂樹が退学して喜んでたのは、学校教員と3年の工藤ら、そして、デビルマンぐらいであった。
皆んな、代わり番子に茂樹の見舞いに訪れた。
美咲は皆んなが来ない時間帯を茂樹の母親から聞き、面会時間ギリギリの夜9時頃、毎日のように茂樹の手を握りしめ、心で愛を念じる日々を送っていた。
茂樹の自殺未遂から3か月程経った。
美咲がいつものように見舞いに行くと、茂樹の病室が慌ただしく、看護婦が出入りしていた。
そして、茂樹のベットが部屋から運び出され、その横に母親が付き添っていた。
茂樹のベットは手術室に搬送された。
そのドアの前で手を合わせてお祈りしてる母親に美咲は慌てて駆け寄り、
「茂樹君、どうしたんですか?」と尋ねた。
「美咲ちゃん!さっきね、茂樹が『母さん』って突然言ってね、記憶が戻ったんだと喜んでたら、急に、茂樹、頭を押さえて、『痛い』、『痛い』って叫び出したて…」
すると、いきなり手術室が開き、茂樹のベットは急いで運ばれて行った。
ベットの後ろにいた医者が母親に気付き、看護師に指示をして、徐に母親に近づき説明をした。
「今、応急的に鎮痛薬を投入しました。お母さん、茂樹君、脳梗塞の可能性があります。」
「えっ」と母親と美咲は絶句した。
「脳波の問題だけじゃなかったんですか…」
「右脳の血流の問題として電波治療を行ってきました。入院してから記憶障害以外に病状はなかったですし、当初のMRIの検査でも脳内血栓の症候は見当たらなかったんですが…」
医者も困惑している様子であった。
「今から再度、脳のMRI検査をしますので…」と言うと、医者は早足で茂樹のベットを追いかけた。
母親と美咲は茂樹の病室で待機した。
母親は泣くように美咲に話した。
「さっきね、私があの時と同じように、皆さんに分からないようにね、美咲ちゃんの写真を茂樹の枕の下に入れてあげたの…
そしたら、急にね、茂樹、私の方を向いてね『母さん』って言ったのよ!
私、嬉しくてねぇ~、良かったわぁ~って思った矢先に、急に…」
美咲の目からも涙が溢れていた。
美咲は自然に右手で十字を切って神に祈った。
(…神様、茂樹君を御守りください…)と
茂樹のベットが運ばれてきた。ベットに横たわる茂樹の両腕に点滴が注入されていた。
母親は、医者からの説明を受けるため診断室に呼ばれた。
美咲は病室に残り、死人のように横たわる茂樹を見つめていた。
医者は母親に説明した。
「この動脈の瘤です。この血栓により脳血管が詰まり、白くなっている脳細胞が壊死している状態です。
現在はこの血栓を溶かす薬と鎮痛剤を点滴してます。
ただし、血栓がかなり大きいので、カテーテル手術が必要になります。」と
母親は医者に聞いた。
「何で血栓が大きくなったんですか?すぐに気づいたのに…」
医者が母親の肩を押さえこう言った。
「お母さん、茂樹君、記憶を失っていた間もかなりのストレスを感じていたものと思われます。
私も長年、脳外科をしていますが、脳波異常の記憶障害の患者がこの3か月間、それも入院していながら、脳梗塞を発症したケースは始めてです。
お母さん、茂樹君は何をそんなに苦しんでいたのですか?」
「苦しみですか?何も弱音を吐かない子でして…、特に私が離婚してからは、無口になってしまい…」と言い、母親は泣き出した。
医者が言った。
「脳外科として、脳梗塞の治療は全力を尽くします。
ただ、彼の病気の根本はそれでは治らないと思います。
お母さん、脳梗塞の最大の原因は過度のストレスです。
彼の場合、他の記憶を失っていても、ある一定の苦しみだけは脳というか…、心の中で意識し続けていた可能性が高いです。
まぁ、まずは外科的な治療を施し、その後、内面的、心理的な治療が必要になるかと思います。」と
母親が病室に戻って来た。
母親は生きた屍となった茂樹を見遣りながら美咲に説明した。
「茂樹ね、記憶を失っていた間も、何かの苦しみだけは感じていたみたいなの。
非常に強い、ストレス…、自殺未遂した程だもんね…、
この子、私に何にも言わないからね…、
私、この子を救ってあげられないのが、辛くて…」と涙を流しながら美咲に説明した。
美咲は何も言えなかった。それは、私の裏切りのせいですとも…
そして、美咲は一瞬、恐怖を感じてしまった。
(…ここまで、私の裏切りを…、軽い付き合いと何度も言ったのに…、そんなに私は取り返しのつかないことをしたの?茂樹君…、そんなに私は酷いことをしたの?…)と
何故、茂樹が自殺未遂をしたのか、何が原因であったのか、何を苦しんでいたのか…
それは茂樹本人しか分からないことであり、その苦悩を加速させた原因は心の病『うつ病』であることは確かであるが、その『うつ病』の原因が美咲にあるのかどうか、それは、所謂、『鶏が先か卵が先か』の問答であり、おそらく、茂樹本人にも分からないことだと思われる…
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