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序章
1.目覚めと困惑
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目覚めるとそこは見知らぬ森だった。
「ここ何処だ……?」
手始めに辺りを見回して見るが木があるばかりで得られる情報は少なかった。
結構綺麗な場所だな、この場所以外で目覚めてたら俺はもっとパニックになってたかもしれない。
ゆっくり1つずつ状況を整理してみよう。
まずは体をゆっくり動かして見ることにする。とりあえず立てるし歩ける、体のどこにも痛みはない。
そして大事なものが無くなっている事に気がつく。
「俺は……誰だ……?」
記憶が無かった。自分が何者で、何処の出身で、今まで何をしていたのかが全くわからなかった。
わかるのはたったの2つだけ、年齢と名前だけは覚えていた。
名前は『キョウジ・ササキ』だ、間違いない。
年齢は16……のはずなんだが誕生日がわからんからこれから年齢を数えられないな……
とりあえず人のいる所に行かないと今晩の寝床も、食べ物も、着替えさえもない。
村か町を探そう、探し終わってからこれからの事を考えよう。
一通りやる事を決めて道を探そうと後ろを振り返った瞬間、見知らぬ女性と目が合い硬直する。
これはチャンス!この人に何処かの集落まで案内してもらおう!。
早速話し掛けようと口を開こうとすると、こちらが口を開くより先に見知らぬ女性が口を開いた。
「アンタこんな田舎の森で一体何してんのさ?」
どうやら声色や外見から、年齢は40代くらいのようだ。
「それがわからないんです、記憶喪失みたいで」
女性が怪訝そうな顔で続けて問う。
「アンタ名前は?」
「キョウジ・ササキです」
「東の国の名前だね、魔術は使えるのかい?」
「魔術……ですか?全然わからないです……」
「基礎も全くわからないのかい?」
女性が少し驚いたように聞く。
「全くわからないです」
「ふーん……記憶の抜け方がなんだか不自然だね……けど、記憶が無いのは本当みたいだね、村まで連れて行ってあげるからついておいで」
すると女性は道なのか怪しいくらいの狭い獣道を進み始めた。慌てて俺も後を追う。
「ありがとうございます、名前を聞いてもいいですか?」
「マルタ・ルーズよ、村の宿屋で女将をしてるの」
ありがたいことにトントン拍子に話が進んだが、何故マルタさんが記憶を無くしていることをこんなにあっさり信じてくれたのか、俺は不思議でしょうがなかった。
しばらく獣道らしからぬ獣道を進み続けると、だんだん道が開けて来て、いつの間にか普通の道になっていた。
そして、大きな大木の砦で囲まれた大きめの村が見えてくる、門の前には二人の槍を持った若者が立っていた。
マルタさんは門の前に着くやいなや若者二人に話し掛ける。
「森で記憶喪失の若い子を拾ったわ、中に入れていい?」
「マルタさんなんてもの拾ってるんですか……まあ、別に通るのはいいですけど、そいつ危なく無いんですか?」
右側に立っていた背の高い若い男が問い掛ける。
「大丈夫よ、わたしが保証するわ」
「ならいいです、通ってどうぞ」
いいのかよ!?この村の警備適当過ぎやしないか?それともマルタさんが過剰に信頼されてるのか?マルタさん何者だよ……。
中に入るとそこにはたくさんの家が並び立っていて、10mほど先に広場がありその先にまた家が立っていた。
マルタさんは広場の左側に立っていた大きな建物の前まで行き、扉を開けると中に入るように促してきた。
「ここがうちの宿屋だよ、うちにおいてある服を何着かあげるからそのボロボロの服捨てな、服を出してくる間に風呂に入って来ておくれ。」
「え、あ、ありがとうございます」
それにしても行動の早い人だ、おそらくマルタさんの中でもうやる事が決まっているのだろう。俺は大人しくマルタさんの言う事を聞くことにする。
入って右の突き当たりを指さされてそこが風呂場なのだとわかった。
今帰って来たばかりだと言うのに何故か風呂は高温を保ったお湯がしっかり湯船に張ってあった。
風呂場には大きな湯船と、綺麗な山の書いてある絵が描かれている壁があり、外にも岩の湯船があった。
マルタさんを待たせるのは悪いと思い、すぐに体を洗って風呂を上がる事にする。
風呂を上がるとすでにそこには服が畳まれて置いてあった。
扉の奥からマルタさんの声がする。
「着替えが終わったらダイニングに来なさい、階段登ればすぐにわかると思うから」
「わかりました」
すぐに着替えてダイニング向かうと、そこでマルタさんはパンに切れ込みを入れて中に蜂蜜を塗り込んでいるようだった。
「これから村長の所まで行くよ、これ食べながらついておいで」
マルタさんがナイスコントロールでそこそこ離れている俺にパンを投げ渡す。
「ありがとうございます」
さっきから俺ずっとありがとうございますとわかりましたしか言ってねえな。
パンを食べる俺を気遣ってなのか、マルタさんは先ほどより明らかにスピードを落として歩き始めた。俺はパンを齧りながら後ろを付いていく。
「キョウジ、風呂場の山の絵は見たかい?」
突然歩きながらマルタさんが口を開く。
「ええ、見ました」
「なにか感じたりしなかったかい?」
「いえ、特には何も感じませんでした、何かあるんですか?」
「風呂場に大きな山の絵を書くのは東の国の文化なんだよ、キョウジは名前が東の国の名前だからなにか思い出すかと思ったのだけど、やっぱりわたしの予想が当たってるかも知れないねえ」
マルタさんは少し得意気になる。
そうこうしているうちに大きな煙突のある家が見えてきた。
「あそこが村長の家よ、煙突がアホみたいにでかいから覚えやすいでしょ?」
「確かに大きな煙突ですね、なんであんなに大きな煙突何ですか?」
「それは村長が薬師だからだよ」
「薬師……ですか?」
「そう、森で取れる薬草とかで薬作ってんのよ、そんで町の医者に売って金を稼いでるのさ」
家の前に着くとマルタさんが勢いよく扉を開ける。
「村長いるかい?ちょいと話があるんだけど」
奥の大きな暖炉の前で椅子に座っている優しそうな老人がゆっくりとこちらを見る。
「そんなに大きな声を出さなくてもワシはここにいるぞ」
「森で記憶喪失の若い子を拾ったんだ、話を聞いてもらってもいいかい?」
「よいぞ、二人共そこの椅子に座りなさい」
俺は本だらけの村長の家を見回しながらゆっくりと椅子に座る。
「青年よ、名は何と言う?」
「キョウジ・ササキです」
「ほう……東の国の名じゃのう」
村長がマルタさんと同じことを呟く。
「記憶が無いと言う話じゃが、何か覚えている事は無いのか?」
「無いです、名前と年齢だけしかわからなかったです」
するとマルタさんが急に口を開き始める。
「魔術のひとつもわからないんだよ?なんだか不自然だとは思わないかい?」
「ふむ……意図的に誰かに記憶を抜かれたと言うのか?」
「わたしはそう思うね」
マルタさんが続けざまに話す。
「そこで提案なんだけどね、キョウジがこれからどうするかを決めるまでうちで雇おうと思うのよ」
「別によいとは思うが、今の所ワシ全然関係ないのじゃが……」
「村長にはキョウジに勉強を教えて欲しいのよ、魔術の事とか、記憶の事とか」
「あいわかった」
村長は快く引き受けた。
一方で俺は自分のわからない所で色々な事が決まり過ぎて混乱していた。どうせ記憶のない自分じゃ考えてもわからないからと無理矢理自分を落ち着かせる。
すると村長が俺の様子を察したように優しく話し掛けてきた。
「何がなんだかわからないようじゃが、しっかり教えてやるから安心せい」
俺は少し安堵する。
「ありがとうございます」
「じゃ、あとはよろしくね!」
そう言うとマルタさんは家を出て言ってしまった。
すぐに村長が立ち上がり本棚を杖でなぞり始める。
「準備をするから少し待っとれ、さて、何から教えようかのう……」
そうして俺はこの村に住むことになったらしい。
「ここ何処だ……?」
手始めに辺りを見回して見るが木があるばかりで得られる情報は少なかった。
結構綺麗な場所だな、この場所以外で目覚めてたら俺はもっとパニックになってたかもしれない。
ゆっくり1つずつ状況を整理してみよう。
まずは体をゆっくり動かして見ることにする。とりあえず立てるし歩ける、体のどこにも痛みはない。
そして大事なものが無くなっている事に気がつく。
「俺は……誰だ……?」
記憶が無かった。自分が何者で、何処の出身で、今まで何をしていたのかが全くわからなかった。
わかるのはたったの2つだけ、年齢と名前だけは覚えていた。
名前は『キョウジ・ササキ』だ、間違いない。
年齢は16……のはずなんだが誕生日がわからんからこれから年齢を数えられないな……
とりあえず人のいる所に行かないと今晩の寝床も、食べ物も、着替えさえもない。
村か町を探そう、探し終わってからこれからの事を考えよう。
一通りやる事を決めて道を探そうと後ろを振り返った瞬間、見知らぬ女性と目が合い硬直する。
これはチャンス!この人に何処かの集落まで案内してもらおう!。
早速話し掛けようと口を開こうとすると、こちらが口を開くより先に見知らぬ女性が口を開いた。
「アンタこんな田舎の森で一体何してんのさ?」
どうやら声色や外見から、年齢は40代くらいのようだ。
「それがわからないんです、記憶喪失みたいで」
女性が怪訝そうな顔で続けて問う。
「アンタ名前は?」
「キョウジ・ササキです」
「東の国の名前だね、魔術は使えるのかい?」
「魔術……ですか?全然わからないです……」
「基礎も全くわからないのかい?」
女性が少し驚いたように聞く。
「全くわからないです」
「ふーん……記憶の抜け方がなんだか不自然だね……けど、記憶が無いのは本当みたいだね、村まで連れて行ってあげるからついておいで」
すると女性は道なのか怪しいくらいの狭い獣道を進み始めた。慌てて俺も後を追う。
「ありがとうございます、名前を聞いてもいいですか?」
「マルタ・ルーズよ、村の宿屋で女将をしてるの」
ありがたいことにトントン拍子に話が進んだが、何故マルタさんが記憶を無くしていることをこんなにあっさり信じてくれたのか、俺は不思議でしょうがなかった。
しばらく獣道らしからぬ獣道を進み続けると、だんだん道が開けて来て、いつの間にか普通の道になっていた。
そして、大きな大木の砦で囲まれた大きめの村が見えてくる、門の前には二人の槍を持った若者が立っていた。
マルタさんは門の前に着くやいなや若者二人に話し掛ける。
「森で記憶喪失の若い子を拾ったわ、中に入れていい?」
「マルタさんなんてもの拾ってるんですか……まあ、別に通るのはいいですけど、そいつ危なく無いんですか?」
右側に立っていた背の高い若い男が問い掛ける。
「大丈夫よ、わたしが保証するわ」
「ならいいです、通ってどうぞ」
いいのかよ!?この村の警備適当過ぎやしないか?それともマルタさんが過剰に信頼されてるのか?マルタさん何者だよ……。
中に入るとそこにはたくさんの家が並び立っていて、10mほど先に広場がありその先にまた家が立っていた。
マルタさんは広場の左側に立っていた大きな建物の前まで行き、扉を開けると中に入るように促してきた。
「ここがうちの宿屋だよ、うちにおいてある服を何着かあげるからそのボロボロの服捨てな、服を出してくる間に風呂に入って来ておくれ。」
「え、あ、ありがとうございます」
それにしても行動の早い人だ、おそらくマルタさんの中でもうやる事が決まっているのだろう。俺は大人しくマルタさんの言う事を聞くことにする。
入って右の突き当たりを指さされてそこが風呂場なのだとわかった。
今帰って来たばかりだと言うのに何故か風呂は高温を保ったお湯がしっかり湯船に張ってあった。
風呂場には大きな湯船と、綺麗な山の書いてある絵が描かれている壁があり、外にも岩の湯船があった。
マルタさんを待たせるのは悪いと思い、すぐに体を洗って風呂を上がる事にする。
風呂を上がるとすでにそこには服が畳まれて置いてあった。
扉の奥からマルタさんの声がする。
「着替えが終わったらダイニングに来なさい、階段登ればすぐにわかると思うから」
「わかりました」
すぐに着替えてダイニング向かうと、そこでマルタさんはパンに切れ込みを入れて中に蜂蜜を塗り込んでいるようだった。
「これから村長の所まで行くよ、これ食べながらついておいで」
マルタさんがナイスコントロールでそこそこ離れている俺にパンを投げ渡す。
「ありがとうございます」
さっきから俺ずっとありがとうございますとわかりましたしか言ってねえな。
パンを食べる俺を気遣ってなのか、マルタさんは先ほどより明らかにスピードを落として歩き始めた。俺はパンを齧りながら後ろを付いていく。
「キョウジ、風呂場の山の絵は見たかい?」
突然歩きながらマルタさんが口を開く。
「ええ、見ました」
「なにか感じたりしなかったかい?」
「いえ、特には何も感じませんでした、何かあるんですか?」
「風呂場に大きな山の絵を書くのは東の国の文化なんだよ、キョウジは名前が東の国の名前だからなにか思い出すかと思ったのだけど、やっぱりわたしの予想が当たってるかも知れないねえ」
マルタさんは少し得意気になる。
そうこうしているうちに大きな煙突のある家が見えてきた。
「あそこが村長の家よ、煙突がアホみたいにでかいから覚えやすいでしょ?」
「確かに大きな煙突ですね、なんであんなに大きな煙突何ですか?」
「それは村長が薬師だからだよ」
「薬師……ですか?」
「そう、森で取れる薬草とかで薬作ってんのよ、そんで町の医者に売って金を稼いでるのさ」
家の前に着くとマルタさんが勢いよく扉を開ける。
「村長いるかい?ちょいと話があるんだけど」
奥の大きな暖炉の前で椅子に座っている優しそうな老人がゆっくりとこちらを見る。
「そんなに大きな声を出さなくてもワシはここにいるぞ」
「森で記憶喪失の若い子を拾ったんだ、話を聞いてもらってもいいかい?」
「よいぞ、二人共そこの椅子に座りなさい」
俺は本だらけの村長の家を見回しながらゆっくりと椅子に座る。
「青年よ、名は何と言う?」
「キョウジ・ササキです」
「ほう……東の国の名じゃのう」
村長がマルタさんと同じことを呟く。
「記憶が無いと言う話じゃが、何か覚えている事は無いのか?」
「無いです、名前と年齢だけしかわからなかったです」
するとマルタさんが急に口を開き始める。
「魔術のひとつもわからないんだよ?なんだか不自然だとは思わないかい?」
「ふむ……意図的に誰かに記憶を抜かれたと言うのか?」
「わたしはそう思うね」
マルタさんが続けざまに話す。
「そこで提案なんだけどね、キョウジがこれからどうするかを決めるまでうちで雇おうと思うのよ」
「別によいとは思うが、今の所ワシ全然関係ないのじゃが……」
「村長にはキョウジに勉強を教えて欲しいのよ、魔術の事とか、記憶の事とか」
「あいわかった」
村長は快く引き受けた。
一方で俺は自分のわからない所で色々な事が決まり過ぎて混乱していた。どうせ記憶のない自分じゃ考えてもわからないからと無理矢理自分を落ち着かせる。
すると村長が俺の様子を察したように優しく話し掛けてきた。
「何がなんだかわからないようじゃが、しっかり教えてやるから安心せい」
俺は少し安堵する。
「ありがとうございます」
「じゃ、あとはよろしくね!」
そう言うとマルタさんは家を出て言ってしまった。
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