君につづく道〜禁断の13〜

びぅむ

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第4章  背中合わせの答え

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翔平は指輪のケースから指輪を外すと、腕を伸ばして私の左手の薬指に指輪をはめようとしていた。

いいの?

受け入れたら、もう坂井さんとは完全に終わりだよ。遊びでズルズル付き合うような女じゃない。ハッキリしない関係なら、ここでキッパリ終わりにする。

『俺の可愛い雪子』
『雪子。うちに寄ってけよ』
『キスとやらしいことは別だろ?』
『俺とのキスより、気持ち良かった?』

なんで……?

なんで、坂井さんの顔が浮かぶの?あんな駄目な人…他にいないのに。

キスされた時、有頂天になるくらい嬉しくて、眠れなかった。会うたび、キスしてくれたよね。キスする時は、凄く優しいの。甘くて、優しくて。愛されてると錯覚してしまいそうなの。

坂井さんの瞳。声。匂い。癖も、煙草を吸う仕草も。全てが鮮明に、脳裏に蘇る。付き合えるとも限らないのに。

坂井さんのこと、私はこんなにも……。

私は、指輪をはめようとしている翔平の手を止めた。


「ごめんなさい。結婚、できません」


「雪ちゃん?!」

翔平は驚いて私を見つめた。

「理由、聞いても良いかな」

理由…。それは…。

「君の周りにいる何人かの会合の友達が、原因?」

「会合…?そうね。会合かもしれない。一年に数回、みんなの都合を合わせて落ち合うことになっている仲間がいる。でも、原因、ではないわ。その人たちの話、少し、聞いてくれる?」

私が静かに話し始めると、翔平は頷いた。
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