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32.解決
「それはスコット様を嫌いということ?」
エイダはそれに答えず姿勢を正すと私に向かって頭を下げた。
「セシルを婚約破棄に追い込んだこと、申し訳ありませんでした。本当にごめんなさい。でも色々あって……セシルは気付いていると思うけどスコットが好きになった恩人は私じゃない。あれはセシルでしょう?」
「どういうことだ?」
ヴァンスが急に割って入って低い声で問う。ヴァンスが不機嫌なオーラを出したので私はどう説明していいか困ってしまった。するとエイダがヴァンスに言った。
「私に説明させてください」
ヴァンスが鋭い目でエイダを見るも、頷いて続きを促す。スコットは数学の問題を解いてくれた人を好きになったが、その女性を後ろ姿でしか確認できずそれをエイダだと思い込んだ。でも問題を解いたのは私。そして勘違いしたまま後ろ姿の私をエイダだと思って告白をしたことを話した。うん、とってもややこしい。
「あいつが本当に好きだったのはセシルだと言うことか?」
ヴァンスが苛立たしげに言う。
「違うと思います。スコット様はエイダの顔を見て運命を感じたそうなので」
「顔……? セシルのほうが美人で可愛いのに?」
ヴァンスの呟きに顔が赤くなる。誰が見てもエイダのほうが可愛いのに、ヴァンスには私が可愛く見えるらしい。恥ずかしさを誤魔化すようにエイダに問いかけた。
「エイダはその相手が私だといつ気付いたの?」
「学園でスコットが回答の書かれた教科書を私に見せてくれたの。『あなたのおかげで助かった』って。数字がセシルの字だったわ。私たち昔一緒に計算を解いて遊んだことがあったでしょう? だから覚えていたのよ」
「そんなこともあったわね……」
思い出した。お父様自作の計算問題をエイダと一緒に解いて遊んだこともあった。エイダは得意げにすらすらと解いていた。そういえばエイダは勉強が好きだった。
「セシルは誤解しているかもしれないけれど、スコットに学園で恩人だと言われた時、私じゃないとちゃんと否定したのよ。でもスコットは私が謙遜していると思い込んで『あなただ!』って言い張って、本当に困ったわ。私、すぐに帰らないと義母に叱責されるから適当にあしらったのよ。結局帰りが遅くなってその日の夕飯は抜かれたわ。正直恨んだわよ。誤解は解けてなさそうだったけれど、もう会うこともないから、いいかなと思っていたらあの日、会ってしまったの」
「あの日?」
「ええ、私には父の決めた結婚相手がいたの。その相手は七十歳を過ぎている商人よ。すでに支度金としてかなりのお金を受け取っていたみたい。私はどうしても嫌で逃げたわ。でもすぐに父の追手に見つかってしまって、道の真ん中で助けてって叫んだけれど、側にいた人たちは厄介事に関わりたくないから目を逸らして通り過ぎて行った。そこを偶然居合せたスコットが助けてくれたの。『僕の父はベイリー侯爵だぞ!』って父親の力を使うところが格好悪くて情けないけど、私を庇うように立って守ってくれた。スコットの足は恐怖で震えていて、怖いはずなのに私を見捨てないでくれた。それが泣きたくなるほど嬉しくて、その場でプロポーズをされて思わず即答してしまったわ。思い返せば私は冷静じゃなかった。だけどあの瞬間は危機を救ってくれた王子様に思えたし、スコットがセシルと婚約していることも忘れていたの」
「……」
――情報量が多い。エイダが実家から逃げ出そうとしたことも、軟弱なスコットがエイダを守ろうとしたことも、驚きすぎて言葉が出ない。
スコットには自分の体を張ってまで悪党と立ち向かう正義感はないと思う。きっとエイダの危機に無我夢中の行動だったのだろう。
(もしかしたら二人は運命だったのかも? 私の存在を挟んで遠回りをした……なんて解釈するのは都合が良すぎるわね)
「冷静になってから焦った。だってスコットに確認したらセシルとの婚約は継続中、それなのに私にプロポーズをするなんて控えめに言ってもクズ男よね。まあ、受け入れた私も同類だけど……。こんなこと駄目だってわかっていたけれど、でも父の決めた人と結婚したくなかった。それなら使用人でいたほうがまし。だから私、自分が最低な人間になる覚悟をしたのよ。必死になって頭をフル回転させて考えた。……そうやってセシルからスコットを奪ったのよ。いざ一緒に過ごせばスコットは王子様じゃない。自分に甘く勉強が嫌いで無責任。でも、あの瞬間私を助けてくれたのはスコットだけ。理由はそれだけでいいの。クズでも甘ったれでも情けなくても、私、スコットのことが好きなのよ」
全然スコットを誉めていないわよね? それでも好きだと言い切った。エイダには強かさがある。力を持たない身で窮地から逃れようとした。話を聞いたら、もうエイダの勝ちでいい!
「スコット様を好きになってくれてありがとう!」
「はっ?」
心を込めてそう言うとエイダが間抜けな声を出した。
「だから、スコット様を好きになってくれてありがとう」
エイダは怪訝な顔で私をじっと見る。
「セシル、本気で言っているの? ここは怒るところでしょう? それに私スコットがセシルに贈ったものを奪いに押しかけたのよ。あの時の私はね。セシルは両親に愛されて幸せで不自由なく暮らしているのだから、少しくらい意地悪してもいいと思っていたのよ、最低でしょう?」
「あの時は確かに腹が立ったけれど、今はむしろお礼を言いたいわ。あれはいらなくなったものだし、処分する手間が省けたもの」
「そうだな。それは私も感謝する。セシルには私以外の男が贈った品物など必要ない」
ずっと黙って聞いていたヴァンスが大きく頷いた。私とエイダはきょとんして顔を見合わせた。
「オルブライト公爵子息は本当にセシルを大切に思っているのね」
「そうだ」
胸を張るヴァンスが可愛いのですが! 私も負けじと言った。
「婚約破棄されたおかげで私はヴァンス様と婚約できたでしょう。今とても幸せなの。だからエイダには感謝しているわ」
エイダはくしゃりと顔を歪ませると泣き笑いの顔になった。
「……セシル、婚約おめでとう」
「ありがとう。私、エイダには幸せになって欲しいな」
スコットにはぜひとも足の小指をぶつけて痛がってもらいたいが、エイダは幸せになっても許させる、というか私が許しちゃう! あれ? でもスコットと結婚生活続けて幸せになれるのかな? スコットは今度こそ改心するかな。でもエイダがそれを望んでいるのなら、きっと自力でなんとかしそうだからいいでしょう。
「セシルは変わっていないのね。ねえ、覚えてる? 子供の頃、仔猫が木の上にいて私がよじ登って助けたら、セシル怒ったでしょう? 『エイダが怪我したら大変なのに、大人を呼んでくるまでどうして待ってくれないの!』って。セシルは無謀にも木の下で両手を広げて、私が落ちたら受け止めようとしていた。自分が怪我をしても私を助けようとしてくれた。優しすぎるのよ……身勝手な私を……もっと怒ってほしかった。前に私がヒース伯爵夫人に話しかけられて困っていたら助けてくれたでしょう? あの時すごく自分が恥ずかしかった。私のしたことは父や義母と同じだって……本当にごめんなさい」
エイダも昔の仲が良かった時のことを覚えていてくれた。また仲良くなれそうで嬉しい。
顔を伏せたエイダの瞳からは涙が溢れていた。その姿を見て私は自分の決断は正しいと思えた。それを告げるためにヴァンスを見ると優しく微笑んで頷いてくれた。
「エイダ。私から今回のことについてのスコット様への処分を伝えます」
私が厳かに言うとエイダは涙を拭いて顔を上げ、まっすぐに私の目を見た。
「はい。どんな内容でも受け入れます」
エイダは最初から廃嫡になることを覚悟してここに来た。もう十分だ。
「ひとつ目はスコット様が二度と私に単独で接触しないこと。ふたつめは反省のために三か月の自宅謹慎です」
エイダは息を呑むと、瞳を揺らして声を詰まらせながら言った。
「っ……それって……甘くない? スコットはセシルに暴力を振るって、私はセシルからドレスやアクセサリーまで盗んだのに」
「暴力じゃなかったわ。あれは腕がぶつかって驚いただけだし、ドレスやアクセサリーはエイダにあげたのよ。ねえ、ヴァンス様」
「セシルがそう言うのなら、そうなのだろう」
不満げだがヴァンスは肩を竦めて同意してくれた。オルブライト家の代表としてエイダに対しこれで終わりだと示唆したのだ。エイダは指で目尻の涙を拭うと、私たちに深く頭を下げお礼を言った。
「ありがとうございます」
後日、私とスコットとヴァンスが揉めた時の目撃者がいて噂になってしまった。危うく醜聞好きの貴族たちを喜ばせそうになったが、ヴァンスが新たな噂を流して否定した。
その新たな噂の内容はスコットとエイダが喧嘩をして、スコットが仲裁を私に頼みに来た。それをヴァンスが目撃し誤解して嫉妬した。でもすぐに誤解を解きスコットとエイダは仲直りをし、私とヴァンスは愛を深め丸く収まったという……恥ずかしすぎるものだ。
でもこれはスコットの為ではなく、私の名誉を守るために流してくれた噂なのだから恥ずかしくても耐えなくちゃ。だけど気になることがある。
「この噂、誇張されてヴァンス様が嫉妬深い人間になっていますよ?」
心配してそう言うとヴァンスは軽く首を傾げ事も無げに言った。
「事実だから問題ない」
私のことで嫉妬? 嘘! でもヴァンスの顔は至極真面目だった。私は顔を真っ赤にしてこれ以上何も言えなかった。
こうしてすべてが丸く(?)収まったのだった。
エイダはそれに答えず姿勢を正すと私に向かって頭を下げた。
「セシルを婚約破棄に追い込んだこと、申し訳ありませんでした。本当にごめんなさい。でも色々あって……セシルは気付いていると思うけどスコットが好きになった恩人は私じゃない。あれはセシルでしょう?」
「どういうことだ?」
ヴァンスが急に割って入って低い声で問う。ヴァンスが不機嫌なオーラを出したので私はどう説明していいか困ってしまった。するとエイダがヴァンスに言った。
「私に説明させてください」
ヴァンスが鋭い目でエイダを見るも、頷いて続きを促す。スコットは数学の問題を解いてくれた人を好きになったが、その女性を後ろ姿でしか確認できずそれをエイダだと思い込んだ。でも問題を解いたのは私。そして勘違いしたまま後ろ姿の私をエイダだと思って告白をしたことを話した。うん、とってもややこしい。
「あいつが本当に好きだったのはセシルだと言うことか?」
ヴァンスが苛立たしげに言う。
「違うと思います。スコット様はエイダの顔を見て運命を感じたそうなので」
「顔……? セシルのほうが美人で可愛いのに?」
ヴァンスの呟きに顔が赤くなる。誰が見てもエイダのほうが可愛いのに、ヴァンスには私が可愛く見えるらしい。恥ずかしさを誤魔化すようにエイダに問いかけた。
「エイダはその相手が私だといつ気付いたの?」
「学園でスコットが回答の書かれた教科書を私に見せてくれたの。『あなたのおかげで助かった』って。数字がセシルの字だったわ。私たち昔一緒に計算を解いて遊んだことがあったでしょう? だから覚えていたのよ」
「そんなこともあったわね……」
思い出した。お父様自作の計算問題をエイダと一緒に解いて遊んだこともあった。エイダは得意げにすらすらと解いていた。そういえばエイダは勉強が好きだった。
「セシルは誤解しているかもしれないけれど、スコットに学園で恩人だと言われた時、私じゃないとちゃんと否定したのよ。でもスコットは私が謙遜していると思い込んで『あなただ!』って言い張って、本当に困ったわ。私、すぐに帰らないと義母に叱責されるから適当にあしらったのよ。結局帰りが遅くなってその日の夕飯は抜かれたわ。正直恨んだわよ。誤解は解けてなさそうだったけれど、もう会うこともないから、いいかなと思っていたらあの日、会ってしまったの」
「あの日?」
「ええ、私には父の決めた結婚相手がいたの。その相手は七十歳を過ぎている商人よ。すでに支度金としてかなりのお金を受け取っていたみたい。私はどうしても嫌で逃げたわ。でもすぐに父の追手に見つかってしまって、道の真ん中で助けてって叫んだけれど、側にいた人たちは厄介事に関わりたくないから目を逸らして通り過ぎて行った。そこを偶然居合せたスコットが助けてくれたの。『僕の父はベイリー侯爵だぞ!』って父親の力を使うところが格好悪くて情けないけど、私を庇うように立って守ってくれた。スコットの足は恐怖で震えていて、怖いはずなのに私を見捨てないでくれた。それが泣きたくなるほど嬉しくて、その場でプロポーズをされて思わず即答してしまったわ。思い返せば私は冷静じゃなかった。だけどあの瞬間は危機を救ってくれた王子様に思えたし、スコットがセシルと婚約していることも忘れていたの」
「……」
――情報量が多い。エイダが実家から逃げ出そうとしたことも、軟弱なスコットがエイダを守ろうとしたことも、驚きすぎて言葉が出ない。
スコットには自分の体を張ってまで悪党と立ち向かう正義感はないと思う。きっとエイダの危機に無我夢中の行動だったのだろう。
(もしかしたら二人は運命だったのかも? 私の存在を挟んで遠回りをした……なんて解釈するのは都合が良すぎるわね)
「冷静になってから焦った。だってスコットに確認したらセシルとの婚約は継続中、それなのに私にプロポーズをするなんて控えめに言ってもクズ男よね。まあ、受け入れた私も同類だけど……。こんなこと駄目だってわかっていたけれど、でも父の決めた人と結婚したくなかった。それなら使用人でいたほうがまし。だから私、自分が最低な人間になる覚悟をしたのよ。必死になって頭をフル回転させて考えた。……そうやってセシルからスコットを奪ったのよ。いざ一緒に過ごせばスコットは王子様じゃない。自分に甘く勉強が嫌いで無責任。でも、あの瞬間私を助けてくれたのはスコットだけ。理由はそれだけでいいの。クズでも甘ったれでも情けなくても、私、スコットのことが好きなのよ」
全然スコットを誉めていないわよね? それでも好きだと言い切った。エイダには強かさがある。力を持たない身で窮地から逃れようとした。話を聞いたら、もうエイダの勝ちでいい!
「スコット様を好きになってくれてありがとう!」
「はっ?」
心を込めてそう言うとエイダが間抜けな声を出した。
「だから、スコット様を好きになってくれてありがとう」
エイダは怪訝な顔で私をじっと見る。
「セシル、本気で言っているの? ここは怒るところでしょう? それに私スコットがセシルに贈ったものを奪いに押しかけたのよ。あの時の私はね。セシルは両親に愛されて幸せで不自由なく暮らしているのだから、少しくらい意地悪してもいいと思っていたのよ、最低でしょう?」
「あの時は確かに腹が立ったけれど、今はむしろお礼を言いたいわ。あれはいらなくなったものだし、処分する手間が省けたもの」
「そうだな。それは私も感謝する。セシルには私以外の男が贈った品物など必要ない」
ずっと黙って聞いていたヴァンスが大きく頷いた。私とエイダはきょとんして顔を見合わせた。
「オルブライト公爵子息は本当にセシルを大切に思っているのね」
「そうだ」
胸を張るヴァンスが可愛いのですが! 私も負けじと言った。
「婚約破棄されたおかげで私はヴァンス様と婚約できたでしょう。今とても幸せなの。だからエイダには感謝しているわ」
エイダはくしゃりと顔を歪ませると泣き笑いの顔になった。
「……セシル、婚約おめでとう」
「ありがとう。私、エイダには幸せになって欲しいな」
スコットにはぜひとも足の小指をぶつけて痛がってもらいたいが、エイダは幸せになっても許させる、というか私が許しちゃう! あれ? でもスコットと結婚生活続けて幸せになれるのかな? スコットは今度こそ改心するかな。でもエイダがそれを望んでいるのなら、きっと自力でなんとかしそうだからいいでしょう。
「セシルは変わっていないのね。ねえ、覚えてる? 子供の頃、仔猫が木の上にいて私がよじ登って助けたら、セシル怒ったでしょう? 『エイダが怪我したら大変なのに、大人を呼んでくるまでどうして待ってくれないの!』って。セシルは無謀にも木の下で両手を広げて、私が落ちたら受け止めようとしていた。自分が怪我をしても私を助けようとしてくれた。優しすぎるのよ……身勝手な私を……もっと怒ってほしかった。前に私がヒース伯爵夫人に話しかけられて困っていたら助けてくれたでしょう? あの時すごく自分が恥ずかしかった。私のしたことは父や義母と同じだって……本当にごめんなさい」
エイダも昔の仲が良かった時のことを覚えていてくれた。また仲良くなれそうで嬉しい。
顔を伏せたエイダの瞳からは涙が溢れていた。その姿を見て私は自分の決断は正しいと思えた。それを告げるためにヴァンスを見ると優しく微笑んで頷いてくれた。
「エイダ。私から今回のことについてのスコット様への処分を伝えます」
私が厳かに言うとエイダは涙を拭いて顔を上げ、まっすぐに私の目を見た。
「はい。どんな内容でも受け入れます」
エイダは最初から廃嫡になることを覚悟してここに来た。もう十分だ。
「ひとつ目はスコット様が二度と私に単独で接触しないこと。ふたつめは反省のために三か月の自宅謹慎です」
エイダは息を呑むと、瞳を揺らして声を詰まらせながら言った。
「っ……それって……甘くない? スコットはセシルに暴力を振るって、私はセシルからドレスやアクセサリーまで盗んだのに」
「暴力じゃなかったわ。あれは腕がぶつかって驚いただけだし、ドレスやアクセサリーはエイダにあげたのよ。ねえ、ヴァンス様」
「セシルがそう言うのなら、そうなのだろう」
不満げだがヴァンスは肩を竦めて同意してくれた。オルブライト家の代表としてエイダに対しこれで終わりだと示唆したのだ。エイダは指で目尻の涙を拭うと、私たちに深く頭を下げお礼を言った。
「ありがとうございます」
後日、私とスコットとヴァンスが揉めた時の目撃者がいて噂になってしまった。危うく醜聞好きの貴族たちを喜ばせそうになったが、ヴァンスが新たな噂を流して否定した。
その新たな噂の内容はスコットとエイダが喧嘩をして、スコットが仲裁を私に頼みに来た。それをヴァンスが目撃し誤解して嫉妬した。でもすぐに誤解を解きスコットとエイダは仲直りをし、私とヴァンスは愛を深め丸く収まったという……恥ずかしすぎるものだ。
でもこれはスコットの為ではなく、私の名誉を守るために流してくれた噂なのだから恥ずかしくても耐えなくちゃ。だけど気になることがある。
「この噂、誇張されてヴァンス様が嫉妬深い人間になっていますよ?」
心配してそう言うとヴァンスは軽く首を傾げ事も無げに言った。
「事実だから問題ない」
私のことで嫉妬? 嘘! でもヴァンスの顔は至極真面目だった。私は顔を真っ赤にしてこれ以上何も言えなかった。
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