1 / 10
0.公爵令嬢の逃亡
オリビアはみすぼらしい馬車に揺られ窓から外を見た。そこには静まり返った漆黒の闇が広がるばかりで、馬車のガタゴトという音が響く。夜盗を避け追手を気にしながら国境を越える。自分が以前この道を進んだ時は留学のためだった。乗り心地のいい馬車に護衛を連れた快適な旅。今は粗末な馬車で激しい揺れに耐えなければならない。
どうしてこんなことに……。恐怖と心細さに瞳には涙が滲む。果たして目的の国まで無事にたどり着くことが出来るのだろうか。
馬車の中には両親が一緒にいるが誰も言葉を発しない。一様に顔色は悪く今は何も考えられないことが見て取れる。突然の状況を皆が受け入れられずにいた。
オリビアはこの国の公爵令嬢であり父は植物研究の権威であった。オリビアもまた国の為に民の為にと誠心誠意、父と共に研究に打ち込んできた。また王太子殿下の婚約者として妃教育・社交にと精一杯励んできた。
それなのに、自分たちの何が一体いけなかったというのか? どうすればよかったのか?
オリビアは身分の低い男爵令嬢にひどい仕打ちをしていると非難された。そんなはずはない。彼女とはまともに話したことすらないのに、心当たりのない罪で責められた。父も王家に対し謀反を企んでいると噂された。研究以外に興味のない父にそんなことが出来るはずもない。
だからオリビアも両親も冤罪であればいずれ疑いが晴れると信じていた。それが晴れるどころか調査も裁判もなく捕縛命令が出てしまった。追いつめられ着の身着のまま全てを捨てて国を出る決断をした。オリビアたちには他の選択肢は存在しなかった。
国を民を思い研究に捧げた時間も、王太子妃になるための努力もすべて踏みにじられた。まるで道端の花を何の感情も抱かず踏み潰すかのように容易く。
旅を進めていく中で最初は悲しみと絶望が、あとから行き場のない怒りと憎しみが去来した。
国にとって王族にとってのオリビアという一個人は守るべき民ではなく利用価値のなくなった人間……これほど軽い存在なのだ。
たとえ逃げ延びたとしても生まれた時から貴族であった自分たちが自力で生きていけるのだろうか。今着ているものも着慣れぬ平民が着るような服だ。そして持ち出すことの出来た財産はそれほど多くない。
これからを思うと不安に胸が押し潰されそうになる。
今のオリビアに出来ることはただ神に祈ることだけだった……。
どうしてこんなことに……。恐怖と心細さに瞳には涙が滲む。果たして目的の国まで無事にたどり着くことが出来るのだろうか。
馬車の中には両親が一緒にいるが誰も言葉を発しない。一様に顔色は悪く今は何も考えられないことが見て取れる。突然の状況を皆が受け入れられずにいた。
オリビアはこの国の公爵令嬢であり父は植物研究の権威であった。オリビアもまた国の為に民の為にと誠心誠意、父と共に研究に打ち込んできた。また王太子殿下の婚約者として妃教育・社交にと精一杯励んできた。
それなのに、自分たちの何が一体いけなかったというのか? どうすればよかったのか?
オリビアは身分の低い男爵令嬢にひどい仕打ちをしていると非難された。そんなはずはない。彼女とはまともに話したことすらないのに、心当たりのない罪で責められた。父も王家に対し謀反を企んでいると噂された。研究以外に興味のない父にそんなことが出来るはずもない。
だからオリビアも両親も冤罪であればいずれ疑いが晴れると信じていた。それが晴れるどころか調査も裁判もなく捕縛命令が出てしまった。追いつめられ着の身着のまま全てを捨てて国を出る決断をした。オリビアたちには他の選択肢は存在しなかった。
国を民を思い研究に捧げた時間も、王太子妃になるための努力もすべて踏みにじられた。まるで道端の花を何の感情も抱かず踏み潰すかのように容易く。
旅を進めていく中で最初は悲しみと絶望が、あとから行き場のない怒りと憎しみが去来した。
国にとって王族にとってのオリビアという一個人は守るべき民ではなく利用価値のなくなった人間……これほど軽い存在なのだ。
たとえ逃げ延びたとしても生まれた時から貴族であった自分たちが自力で生きていけるのだろうか。今着ているものも着慣れぬ平民が着るような服だ。そして持ち出すことの出来た財産はそれほど多くない。
これからを思うと不安に胸が押し潰されそうになる。
今のオリビアに出来ることはただ神に祈ることだけだった……。
あなたにおすすめの小説
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました
景
恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。
メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
こうして私は悪魔の誘惑に手を伸ばした
綴つづか
恋愛
何もかも病弱な妹に奪われる。両親の愛も、私がもらった宝物もーー婚約者ですらも。
伯爵家の嫡女であるルリアナは、婚約者の侯爵家次男ゼファーから婚約破棄を告げられる。病弱で天使のような妹のカリスタを抱き寄せながら、真実の愛を貫きたいというのだ。
ルリアナは、それを粛々と受け入れるほかなかった。
ゼファーとカリスタは、侯爵家より譲り受けた子爵領へと移り住み、幸せに暮らしていたらしいのだが。2年後、『病弱』な妹は、出産の際に命を落とす。
……その訃報にルリアナはひっそりと笑みを溢した。
妹に奪われてきた姉が巻き込まれた企みのお話。
他サイトにも掲載しています。※ジャンルに悩んで恋愛にしていますが、主人公に恋愛要素はありません。