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1.令嬢は考える
「この贈り物には意味があるのかしら?」
「もしかしてこの品々が私の好みだと思われたのかしら?」
「それとも彼自身の趣味なのかしら?」
独り言である。
私は机の上にある婚約者からの贈り物を見て物憂げに頬杖をついた。
「格好いいし優しい人」
「口下手だけど気遣ってくれる」
「仕事も真面目で家族思いだし」
「それなのにこんなことを気にするなんて私の我儘よね……」
引き続き全部独り言である。
「エルシャ様。悩むくらいならオリス様に直接お聞きしてはいかがですか?」
侍女が私の前にお茶を置く。カップを持ち上げ口をつけた。
オリス様とは私の婚約者のオリス・アルタウス伯爵のことだ。
「お茶、美味しいわ……ありがとう」
エルシャはボンノ伯爵家の娘で21歳になった。貴族令嬢として世間的に行き遅れギリギリである。オリス様は私にとって三人目の婚約者になる。正直なところ彼を逃したくないという気持ちもあるが、二度の破談経験からまたこの縁談も駄目になるのではという不安を捨てきれない。些細な事にも敏感に反応し考え込んでしまう。悩み始めたきっかけは彼から贈られたプレゼントを見てからだ。そんな心の中の葛藤が独り言となってしまった。
彼とは顔合わせの日から徐々に距離を縮めていい関係を築けている。そう思えばこそ、何かのきっかけで壊れてしまうのではという不安があった。杞憂だと思いたいが過去の破談は私の自尊心を酷く損ない、とても楽天的な気持ちにはなれない。
我が家はまあまあ豊かな伯爵家でお父様は家族思いだ。特に野心はないので政略的な婚約を結ぶことをエルシャに求めなかった。
「もしエルシャに好きな人がいるのならその人と結婚できるようにするが?」と言ってくれたが特に好ましいと思う人はいなかった。
それならば任せとけとお父様が選んだ一人目の婚約者は同じ年の子爵子息だった。年齢が近い方が話が合う。高くない爵位の家に嫁げば社交の負担が少なくて済むだろうという理由だった。結婚後に貴族同士のギスギスした付き合いの負担を考えてくれた親心から決まった。
同じ年のその人は物静かな人でときめくような恋心は芽生えなかったが、信頼できる友人のような存在となっていった。今の関係ならばお互いを尊重し合える夫婦になれるだろうと思っていた。
ところがある日、子爵子息の幼馴染の結婚式の日に二人は手を取り合って駆け落ちをしてしまった。寝耳に水の出来事で当時まだ十六歳だった私はショックで寝込んだ。
好きな人がいるのならそう言って欲しかった。ましてや駆け落ちをするくらいなら婚約の解消を申し出てくれればよかったのに、そんな素振りもなく突然の出来事に裏切られた気持ちになった。彼は数日後に連れ戻され父親の子爵様とボンノ伯爵邸を訪れた。その彼の口からは予想していた謝罪の言葉ではない言葉が発せられた。
「どうしても彼女が好きで忘れられなかった。エルシャとは結婚したくなかった」
私はショックで何も言い返すことが出来なかった。
「もしかしてこの品々が私の好みだと思われたのかしら?」
「それとも彼自身の趣味なのかしら?」
独り言である。
私は机の上にある婚約者からの贈り物を見て物憂げに頬杖をついた。
「格好いいし優しい人」
「口下手だけど気遣ってくれる」
「仕事も真面目で家族思いだし」
「それなのにこんなことを気にするなんて私の我儘よね……」
引き続き全部独り言である。
「エルシャ様。悩むくらいならオリス様に直接お聞きしてはいかがですか?」
侍女が私の前にお茶を置く。カップを持ち上げ口をつけた。
オリス様とは私の婚約者のオリス・アルタウス伯爵のことだ。
「お茶、美味しいわ……ありがとう」
エルシャはボンノ伯爵家の娘で21歳になった。貴族令嬢として世間的に行き遅れギリギリである。オリス様は私にとって三人目の婚約者になる。正直なところ彼を逃したくないという気持ちもあるが、二度の破談経験からまたこの縁談も駄目になるのではという不安を捨てきれない。些細な事にも敏感に反応し考え込んでしまう。悩み始めたきっかけは彼から贈られたプレゼントを見てからだ。そんな心の中の葛藤が独り言となってしまった。
彼とは顔合わせの日から徐々に距離を縮めていい関係を築けている。そう思えばこそ、何かのきっかけで壊れてしまうのではという不安があった。杞憂だと思いたいが過去の破談は私の自尊心を酷く損ない、とても楽天的な気持ちにはなれない。
我が家はまあまあ豊かな伯爵家でお父様は家族思いだ。特に野心はないので政略的な婚約を結ぶことをエルシャに求めなかった。
「もしエルシャに好きな人がいるのならその人と結婚できるようにするが?」と言ってくれたが特に好ましいと思う人はいなかった。
それならば任せとけとお父様が選んだ一人目の婚約者は同じ年の子爵子息だった。年齢が近い方が話が合う。高くない爵位の家に嫁げば社交の負担が少なくて済むだろうという理由だった。結婚後に貴族同士のギスギスした付き合いの負担を考えてくれた親心から決まった。
同じ年のその人は物静かな人でときめくような恋心は芽生えなかったが、信頼できる友人のような存在となっていった。今の関係ならばお互いを尊重し合える夫婦になれるだろうと思っていた。
ところがある日、子爵子息の幼馴染の結婚式の日に二人は手を取り合って駆け落ちをしてしまった。寝耳に水の出来事で当時まだ十六歳だった私はショックで寝込んだ。
好きな人がいるのならそう言って欲しかった。ましてや駆け落ちをするくらいなら婚約の解消を申し出てくれればよかったのに、そんな素振りもなく突然の出来事に裏切られた気持ちになった。彼は数日後に連れ戻され父親の子爵様とボンノ伯爵邸を訪れた。その彼の口からは予想していた謝罪の言葉ではない言葉が発せられた。
「どうしても彼女が好きで忘れられなかった。エルシャとは結婚したくなかった」
私はショックで何も言い返すことが出来なかった。
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