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Chapter_2:コーズ&エフェクト
Note_51
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【フェニコプテラス】の下町【セカンドステップ】のホテル街、表道はこれから広場に向かおうとする人達が歩いてくる。皆が楽しそうに談話している。
職業としては服装から見て変哲のないエンジニア達だろう、依頼を受けて食事してから夜に整備を行う無所属の整備業者達である。彼らは夜の仕事のために、格安の住まいから広場に向かうのだ。
対して裏道においては、今まさに仕事の真っ最中であった。【惑星連合】の諜報員であるシリウスは5人の女性相手に、それぞれの義肢を全て破壊して打ち破る。
力量ある手練達を一掃していた。シリウスは彼女達に端末を差し伸べて問う。
「本題だ。彼を見ただろ。どこ行った。」
それは、桃毛の少年【サド・キャンソン】の写真であった。大傷の女性【スザンナ】は立ち上がり、白を切る。
「言うかよ。」
シリウスはスザンナの脛を蹴る。彼女は再び頭を垂れた。
「状況を理解しろよ。貴様らが“暴力”で解決しようものなら、我々も“暴力”で対処する。
質問を変えよう。最後だ……【サド・キャンソン】の居場所は?今は誰と一緒にいる。」
シリウスは僅かに威圧をかけて、スザンナを問い詰めていく。スザンナは自分の身を案じて正直に白状する。
「レ、レオって奴と一緒にいる。」
「【レオ・キャンソン】だな。おそらく、2人で脱出を試みるつもりか……。分かったよ。」
シリウスはこの場を立ち去ろうとした。しかし、彼女の部下は彼に憤っていた。
「ク……クソ野郎……!姉貴に暴力なんか振るいやがって……!舐め腐ってんじゃねぇよ!」
シリウスが部下に近づき、ビームソードで上に掲げる。
「姉貴のプライド踏み躙ってんじゃねぇよ!!!」
淡い叫びは届くはずもなく、そのまま光剣が振り下ろされる。
背後から気配を感じ取る。シリウスはそのまま背後に斬りかかった。
「おっとっと……」
その正体は男衆を率いる者【オスカル】であった。オスカルは挑発する。
「レディに向かって何やってんだ?」
「事情聴取だ。【レオ・キャンソン】の居所は……貴様には分からないようだな。通らせてもらうぞ。」
「そうはいかねぇ……。」
オスカルの挑発に構わず、シリウスはある存在に反応する。標的の気配を感じ取って、すぐそちらの方向に目を向ける。
レオ達は裏道の入り口で、アブロ議員からの返信を待っていた。マークⅢが反応する。
『レ、レオさん!サド君!』
「何だ?」
「どうしたの、マークⅢ?」
『い、い、いました!赤髪の奴、【シリウス】が奥に!!』
「んだと!?」
その情報を受けて、レオ達はホテル街から逃げようとする。なるべくシリウスから離れようとした。
「レオ!駐機場に人を出すからそこで受け取りだって!」
「……さんきゅ!」
レオ達は駐機場へと向かった。
シリウスは彼らの影を見ていた。来た道を戻ろうとするが、オスカル達に止められる。
「通らせてもらう。」
「させるわけねぇだろ!」
武器を持って襲いかかる。一度避けて、華麗な巴投げを決める。それと同時に、敵に蹴りを入れ盾にしつつ銃弾1発を避ける。
シリウスは敵を投げ捨て、オスカルに近づく。回し蹴りを彼の顔に直撃させた。
残る部下に実弾を1発当てた。シリウスは5人衆を制圧し、レオ達の元に向かう。
「ま……待て……!」
オスカルの声など届かない。シリウスは先を急いだ。もう、彼を止められる者はいない。
_____
レオ達はホテル街を出る。マップから地下の駐機場の入り口を探す。【第2中央塔】からの方が近いものの、かなり道が入り組んでいる。なんとか裏道から入れないか試すが、それらしきものはない。
とにかく目的地の方向に足を運ぶ。サドは後方を見て、シリウスが追ってきていないか確認している。
ホテル街の入り口からシリウスが出てきている。レオ達はすぐ裏道に入る。
『既に彼が近くにやってきています!』
「結構距離あった気がしたけど!?」
「……義足だろ。あそこまで速く走れるんだ。見つかったらすぐ追いつかれる。このまま突っ切るだけだ!」
レオは前へ進む。サドもさっさと入る。
そして、シリウスもまた彼らを見つけた。
「そこか……」
気づかれないよう、同じチンピラに絡まれないよう早歩きで近づく。
レオは最短距離で向かおうとする。段差はサドを先に降ろして、受け止めてもらう。そして駐機場へと向かう。
しかし、入り口前に兵士がいる。無論【マルクート家】の兵士達が立ち塞がっていた。
「ここまで厳しいとはな……押し通るか?」
「シリウスさんが呼ばれるかもしれない。特にレオと話したから、要注意人物としてマークしてると思う。」
「議員と連絡を取る。今度は通話で。」
サドは通話を行う。
『ディオン君!任務は成功したみたいね!』
「アブロさん。入り口前に兵士が……」
『……いるんでしょ。分かってる。こっちもチミ達に捕まえられたら困るもの。例の交渉がパーになっちゃう!
デニス君には、体を張ってもらう!』
「それって、どういう……っ!?」
2m級の移動用機体が、目の前を駆け抜ける。通り過ぎたと思ったら、少し先で止まってくれた。
座席から1人降りてくる。ライラだった。
「お前っ……!」
「レオさん!乗って!」
少し戸惑った。彼女を乗せたのは誰か…。
「早く!」
考えている暇はない。2人は急いで機体に乗り込む。サドを先に乗せる。
レオが後ろを見たときに、既に遠くの方から“奴”の姿はあった。
「!?」
「………。」
シリウスであった。どうしてここまで来たのか分からない。シリウスが走って来る。
万事休すかとレオが思った矢先に、一閃がレオの横を通り過ぎる。シリウスに命中する。腕で防御されたが、一旦止めることができた。
ライラが光線銃を使ったのだ。
ライラはレオを押しつけて一緒に乗り込む。運転席には、ある男がいた。
「ディオン様、レオ様、しっかり捕まってください!急発進ですよ!」
アブロの側近、デニスであった。ハンドルを前に押して前進させる。猛スピードに対して、兵士達は回避するしかない。シリウスは連絡を取る。
「地下の駐機場に逃げた。兵士はいるか?
……いないか。入り口前を通された。増援求む。」
シリウスは走り出し、兵士達の手当に向かう。
_____
移動用機体が、レオ達をレジスタンス機の近くまで送ってくれた。機体から降りて、サドはまずデニスにデータを渡した。
「こちらデータになります。」
「ありがとうございます。兵士達の目が睨みきかせていて、報酬を用意できませんでした。また次の機会にこちらの書類をお渡しください。
次に会ったときに、提示通りの金額をお渡しします。」
「そうですか。こちらも急いでるのでまた。」
小さな書類であった。それを受け取り、サドはレジスタンス機の方に歩く。そこにはレオとライラが話し合っていた。
「……どうして手を出した。」
「あなた達を狙っているんでしょ?」
「だからって、お前が来るまでも無いだろ?本当に危なかったんだから……」
「……サド君。」
ライラがサドの方に目を避ける。レオはため息をついた。
「んで、話したいことって何だ?」
ライラは手に持っている光線銃を…サドに返した。戦いのときに、サドが渡してくれたものだ。
「これを……返しに来たの。」
サドは受け取らなかった。
「……それは、ライラさんを守るための物。プレゼントのつもりですが……。」
「この武器のお陰で、私は自分を守ることができたし、守りたいものを守ることができた。最初こそ戸惑っちゃったけど……今は、本当に感謝してるから!」
ライラは笑顔で答えた。サドも答える。
「……それでしたら、引き続きあなたに預けますね。それでみんなを守ってほしいです。」
「サド君……。」
ライラが光線銃を握りしめる。最後にお礼ができたこと、しかし何か物足りず心が締めつけられそうだった。
「……行くぞ。」
「待って!」
ライラが2人を止める。そのもどかしさを口に出して告白する。
「私も2人と一緒に……」
「やめておけ。」
レオが止めた。サドも打って変わって、真剣な表情をしている。ライラはとにかく、胸の中にある思いを彼らに打ち明けた。
「……私はエンダー家を許せない。他の被害者も助けたいし、2人も守りたい。
レオさんとサド君について行けば、必ずその人達に会えるんでしょ?私も力になりたい!」
「別に力量の有無じゃねぇよ。あの人達に別れでも言ったのか?」
「……テリーサさんに伝えたの。他のみんなには秘密にしてね。
でも、2人だって別れを言わないで立ち去ったのに……ずるいよ。」
「………。」
レオは無言になった。サドが問う。
「ライラさん。エンダー家と戦うことは、最悪狙われる可能性も出てきます。あなたを巻き込ませたくない。もし大事に見舞われたら……僕は……リンに合わせる顔がありません。」
サドも辛かった。ライラを危険に晒すわけにはいかない。そして…
「私だって!2人を守りたい!」
「!」
それはライラも一緒だった。
「サド君だって、政府の人達に狙われてる立場なんでしょ!?それに、リンちゃんの為にたくさん尽くしてくれた。
それなのに、守れる力を持って……遠く離れた結果、守れないなんて……私は絶対に嫌だ。」
「ライラさん……」
「後戻りなんてしたくない。リンちゃんの無念を晴らして、今あるものを……大切にしたい!
見捨てて後悔したくない。守りたいものを守って……リンちゃんに恩返ししたい。」
ライラは強い視線でサドを見る。もはや、サドに彼女を止めることはできなかった。
遠くから兵士達がやって来た。レオは最後に問う。
「未練は無いな?」
ライラは静かに頷く。レオがレジスタンス機に乗り込んだ。
「サド!ライラを!」
「分かった!……こちらへ!」
サドもレジスタンス機に乗り込む。ライラは彼の手を借りて搭乗した。
そして、動き始める。兵士は命ずる。
「銃だ!奴らを止めろ!」
出口へと向かう。加速していくと、光が見えてくる。
レオ達は【フェニコプテラス】から脱出した。無事、怪我することなく切り抜けられた。
ライラは…振り返らなかった。代わりにサドを見つめて、何かを思っていた。彼は悩める彼女に1つ話題を振る。
「ライラさんに……1つだけ伝え忘れたことがあります。」
「……何?」
「リンの……ライラさんへのメッセージです。とても……重要なことです。」
サドは…端末をライラに手渡した。自分で確かめてもいない、リンからの素のメールを届けてくれた。
…リンの最後のメールを開封する。
“親愛なるメイジーへ
今までたくさん、メールで交流してくれて、最後までメールを出してくれて、本当にありがとうございます。
もっとメールでやり取りしたいのですが、私の体が保ちませんでした。なので、これからの目標をサド君に託したいと思います。
地球に行くこと、そこで色んな物を学んで楽しむこと、そしてメイジーさんに出会うこと。だからサド君と出会ったときは、彼をよろしくお願いします。
私のために、みんなのために、たくさん頑張ってくれたことは忘れません。メイジーさんのためにも尽くしてくれると思います。
私とサド君と友達の分と一緒に、幸せにしてあげてください。
リンより”
職業としては服装から見て変哲のないエンジニア達だろう、依頼を受けて食事してから夜に整備を行う無所属の整備業者達である。彼らは夜の仕事のために、格安の住まいから広場に向かうのだ。
対して裏道においては、今まさに仕事の真っ最中であった。【惑星連合】の諜報員であるシリウスは5人の女性相手に、それぞれの義肢を全て破壊して打ち破る。
力量ある手練達を一掃していた。シリウスは彼女達に端末を差し伸べて問う。
「本題だ。彼を見ただろ。どこ行った。」
それは、桃毛の少年【サド・キャンソン】の写真であった。大傷の女性【スザンナ】は立ち上がり、白を切る。
「言うかよ。」
シリウスはスザンナの脛を蹴る。彼女は再び頭を垂れた。
「状況を理解しろよ。貴様らが“暴力”で解決しようものなら、我々も“暴力”で対処する。
質問を変えよう。最後だ……【サド・キャンソン】の居場所は?今は誰と一緒にいる。」
シリウスは僅かに威圧をかけて、スザンナを問い詰めていく。スザンナは自分の身を案じて正直に白状する。
「レ、レオって奴と一緒にいる。」
「【レオ・キャンソン】だな。おそらく、2人で脱出を試みるつもりか……。分かったよ。」
シリウスはこの場を立ち去ろうとした。しかし、彼女の部下は彼に憤っていた。
「ク……クソ野郎……!姉貴に暴力なんか振るいやがって……!舐め腐ってんじゃねぇよ!」
シリウスが部下に近づき、ビームソードで上に掲げる。
「姉貴のプライド踏み躙ってんじゃねぇよ!!!」
淡い叫びは届くはずもなく、そのまま光剣が振り下ろされる。
背後から気配を感じ取る。シリウスはそのまま背後に斬りかかった。
「おっとっと……」
その正体は男衆を率いる者【オスカル】であった。オスカルは挑発する。
「レディに向かって何やってんだ?」
「事情聴取だ。【レオ・キャンソン】の居所は……貴様には分からないようだな。通らせてもらうぞ。」
「そうはいかねぇ……。」
オスカルの挑発に構わず、シリウスはある存在に反応する。標的の気配を感じ取って、すぐそちらの方向に目を向ける。
レオ達は裏道の入り口で、アブロ議員からの返信を待っていた。マークⅢが反応する。
『レ、レオさん!サド君!』
「何だ?」
「どうしたの、マークⅢ?」
『い、い、いました!赤髪の奴、【シリウス】が奥に!!』
「んだと!?」
その情報を受けて、レオ達はホテル街から逃げようとする。なるべくシリウスから離れようとした。
「レオ!駐機場に人を出すからそこで受け取りだって!」
「……さんきゅ!」
レオ達は駐機場へと向かった。
シリウスは彼らの影を見ていた。来た道を戻ろうとするが、オスカル達に止められる。
「通らせてもらう。」
「させるわけねぇだろ!」
武器を持って襲いかかる。一度避けて、華麗な巴投げを決める。それと同時に、敵に蹴りを入れ盾にしつつ銃弾1発を避ける。
シリウスは敵を投げ捨て、オスカルに近づく。回し蹴りを彼の顔に直撃させた。
残る部下に実弾を1発当てた。シリウスは5人衆を制圧し、レオ達の元に向かう。
「ま……待て……!」
オスカルの声など届かない。シリウスは先を急いだ。もう、彼を止められる者はいない。
_____
レオ達はホテル街を出る。マップから地下の駐機場の入り口を探す。【第2中央塔】からの方が近いものの、かなり道が入り組んでいる。なんとか裏道から入れないか試すが、それらしきものはない。
とにかく目的地の方向に足を運ぶ。サドは後方を見て、シリウスが追ってきていないか確認している。
ホテル街の入り口からシリウスが出てきている。レオ達はすぐ裏道に入る。
『既に彼が近くにやってきています!』
「結構距離あった気がしたけど!?」
「……義足だろ。あそこまで速く走れるんだ。見つかったらすぐ追いつかれる。このまま突っ切るだけだ!」
レオは前へ進む。サドもさっさと入る。
そして、シリウスもまた彼らを見つけた。
「そこか……」
気づかれないよう、同じチンピラに絡まれないよう早歩きで近づく。
レオは最短距離で向かおうとする。段差はサドを先に降ろして、受け止めてもらう。そして駐機場へと向かう。
しかし、入り口前に兵士がいる。無論【マルクート家】の兵士達が立ち塞がっていた。
「ここまで厳しいとはな……押し通るか?」
「シリウスさんが呼ばれるかもしれない。特にレオと話したから、要注意人物としてマークしてると思う。」
「議員と連絡を取る。今度は通話で。」
サドは通話を行う。
『ディオン君!任務は成功したみたいね!』
「アブロさん。入り口前に兵士が……」
『……いるんでしょ。分かってる。こっちもチミ達に捕まえられたら困るもの。例の交渉がパーになっちゃう!
デニス君には、体を張ってもらう!』
「それって、どういう……っ!?」
2m級の移動用機体が、目の前を駆け抜ける。通り過ぎたと思ったら、少し先で止まってくれた。
座席から1人降りてくる。ライラだった。
「お前っ……!」
「レオさん!乗って!」
少し戸惑った。彼女を乗せたのは誰か…。
「早く!」
考えている暇はない。2人は急いで機体に乗り込む。サドを先に乗せる。
レオが後ろを見たときに、既に遠くの方から“奴”の姿はあった。
「!?」
「………。」
シリウスであった。どうしてここまで来たのか分からない。シリウスが走って来る。
万事休すかとレオが思った矢先に、一閃がレオの横を通り過ぎる。シリウスに命中する。腕で防御されたが、一旦止めることができた。
ライラが光線銃を使ったのだ。
ライラはレオを押しつけて一緒に乗り込む。運転席には、ある男がいた。
「ディオン様、レオ様、しっかり捕まってください!急発進ですよ!」
アブロの側近、デニスであった。ハンドルを前に押して前進させる。猛スピードに対して、兵士達は回避するしかない。シリウスは連絡を取る。
「地下の駐機場に逃げた。兵士はいるか?
……いないか。入り口前を通された。増援求む。」
シリウスは走り出し、兵士達の手当に向かう。
_____
移動用機体が、レオ達をレジスタンス機の近くまで送ってくれた。機体から降りて、サドはまずデニスにデータを渡した。
「こちらデータになります。」
「ありがとうございます。兵士達の目が睨みきかせていて、報酬を用意できませんでした。また次の機会にこちらの書類をお渡しください。
次に会ったときに、提示通りの金額をお渡しします。」
「そうですか。こちらも急いでるのでまた。」
小さな書類であった。それを受け取り、サドはレジスタンス機の方に歩く。そこにはレオとライラが話し合っていた。
「……どうして手を出した。」
「あなた達を狙っているんでしょ?」
「だからって、お前が来るまでも無いだろ?本当に危なかったんだから……」
「……サド君。」
ライラがサドの方に目を避ける。レオはため息をついた。
「んで、話したいことって何だ?」
ライラは手に持っている光線銃を…サドに返した。戦いのときに、サドが渡してくれたものだ。
「これを……返しに来たの。」
サドは受け取らなかった。
「……それは、ライラさんを守るための物。プレゼントのつもりですが……。」
「この武器のお陰で、私は自分を守ることができたし、守りたいものを守ることができた。最初こそ戸惑っちゃったけど……今は、本当に感謝してるから!」
ライラは笑顔で答えた。サドも答える。
「……それでしたら、引き続きあなたに預けますね。それでみんなを守ってほしいです。」
「サド君……。」
ライラが光線銃を握りしめる。最後にお礼ができたこと、しかし何か物足りず心が締めつけられそうだった。
「……行くぞ。」
「待って!」
ライラが2人を止める。そのもどかしさを口に出して告白する。
「私も2人と一緒に……」
「やめておけ。」
レオが止めた。サドも打って変わって、真剣な表情をしている。ライラはとにかく、胸の中にある思いを彼らに打ち明けた。
「……私はエンダー家を許せない。他の被害者も助けたいし、2人も守りたい。
レオさんとサド君について行けば、必ずその人達に会えるんでしょ?私も力になりたい!」
「別に力量の有無じゃねぇよ。あの人達に別れでも言ったのか?」
「……テリーサさんに伝えたの。他のみんなには秘密にしてね。
でも、2人だって別れを言わないで立ち去ったのに……ずるいよ。」
「………。」
レオは無言になった。サドが問う。
「ライラさん。エンダー家と戦うことは、最悪狙われる可能性も出てきます。あなたを巻き込ませたくない。もし大事に見舞われたら……僕は……リンに合わせる顔がありません。」
サドも辛かった。ライラを危険に晒すわけにはいかない。そして…
「私だって!2人を守りたい!」
「!」
それはライラも一緒だった。
「サド君だって、政府の人達に狙われてる立場なんでしょ!?それに、リンちゃんの為にたくさん尽くしてくれた。
それなのに、守れる力を持って……遠く離れた結果、守れないなんて……私は絶対に嫌だ。」
「ライラさん……」
「後戻りなんてしたくない。リンちゃんの無念を晴らして、今あるものを……大切にしたい!
見捨てて後悔したくない。守りたいものを守って……リンちゃんに恩返ししたい。」
ライラは強い視線でサドを見る。もはや、サドに彼女を止めることはできなかった。
遠くから兵士達がやって来た。レオは最後に問う。
「未練は無いな?」
ライラは静かに頷く。レオがレジスタンス機に乗り込んだ。
「サド!ライラを!」
「分かった!……こちらへ!」
サドもレジスタンス機に乗り込む。ライラは彼の手を借りて搭乗した。
そして、動き始める。兵士は命ずる。
「銃だ!奴らを止めろ!」
出口へと向かう。加速していくと、光が見えてくる。
レオ達は【フェニコプテラス】から脱出した。無事、怪我することなく切り抜けられた。
ライラは…振り返らなかった。代わりにサドを見つめて、何かを思っていた。彼は悩める彼女に1つ話題を振る。
「ライラさんに……1つだけ伝え忘れたことがあります。」
「……何?」
「リンの……ライラさんへのメッセージです。とても……重要なことです。」
サドは…端末をライラに手渡した。自分で確かめてもいない、リンからの素のメールを届けてくれた。
…リンの最後のメールを開封する。
“親愛なるメイジーへ
今までたくさん、メールで交流してくれて、最後までメールを出してくれて、本当にありがとうございます。
もっとメールでやり取りしたいのですが、私の体が保ちませんでした。なので、これからの目標をサド君に託したいと思います。
地球に行くこと、そこで色んな物を学んで楽しむこと、そしてメイジーさんに出会うこと。だからサド君と出会ったときは、彼をよろしくお願いします。
私のために、みんなのために、たくさん頑張ってくれたことは忘れません。メイジーさんのためにも尽くしてくれると思います。
私とサド君と友達の分と一緒に、幸せにしてあげてください。
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