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Episode③ 魂の居場所
第13章|あなたはここにいる <5>福島さんの予想が当たった!?
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<5>
「“分身…………ロボットカフェ………”!!? 」
オフィスで先輩保健師の福島さんが言っていたことを思い出した。
―――俺は、鈴木先生が人間の女の人を相手に楽しくお酒を飲んでいる図が想像できないんだよな。なんかこう………“鈴木セブンと仲間たち”みたいな感じで、目がピカーって光る、未来型ロボットの女の子みたいなのに囲まれて、口数少なく座ってるイメージしか見えない……
自動ドアを入ると、店内は広々とした明るい空間だった。軽快なBGMが流れていて、正面にカウンター、左右に座席がある。
ナチュラルウッドカラーをベースにした家具と、グリーン、照明がセンスよく配置されている。お店の広さに対して座席がぎゅうぎゅうに詰められていないせいか、程よいゆとりがあって、何時間でもいられる居心地の良い穴場カフェ、って感じだった。
お店に入ってすぐのカウンターには、かつて某・携帯電話会社が販売していた白いロボットをもっと可愛らしくツルツルにしたような、小柄の人型ロボットが立っていた。
身長は120-130センチくらいだろうか。
そしてそのロボットのアーモンド型の両眼は、福島さんの予想とぴったり同じく、内側から赤く光っていた。
―――福島さん!! あの賭け、福島さんの勝ちですよっ!!
私は、『株式会社E・M・A』のオフィスで繰り広げられた予想合戦を思い出した。
「いらっしゃいませ。こんにちは~! 」
ロボットから、声が聞こえた。
「あ、はい。こんにちは! 」私が思わず返事をすると、さらにロボットから「お越しいただきありがとうございます~」と、人間らしい笑い声が発せられた。
鈴木先生もロボットに声をかける。
「こんにちは。予約している、鈴木です」
「はいっ。鈴木様ですね。承っております~」ロボットが即座に返事をした。
「先生、このロボットは、いったい………話題のAI的な感じですか? でもそれにしては、妙に人間っぽいような」私は鈴木先生に訊いた。
「このロボットの中に入っているのは、AIではありません。人間です」
「えっ。この中に!? 」
「念のために言っておきますが、物理的に中に入っているわけではありませんよ。全国にいるスタッフがインターネットを通じて遠隔でこのロボットに接続し、僕たちをリアルタイムで接客してくれています」
「なるほど! そういう働き方が………あるんですね」
お店を落ち着いて見渡すと、ところどころに白いロボットが居た。
ロボットカフェなんて、初めて来た。興味津々だ。
入口左側の物販スペースに近づくと、タブレット端末が置かれていた。
思わずのぞき込んでみる。
「これ、何でしょうか」
「このカフェで活躍している分身ロボットのサンプル端末です。触ると動かせますよ」
タブレットの前には、手のひらに乗りそうな、高さ20cmくらいの上半身だけの人型ロボットが置かれていた。頭部、胴体に手がふたつ。やっぱりこちらもデザインは丸っこくつるつるとしていて、顔部分には光る眼がついている。胴体は顔に比べて小さくて2.5頭身くらいなので、見かたによっては人間というより、白い小鳥のようにも見えた。
私がロボット前に置かれたタブレット画面上の『うんうん』というボタンを押すと、タブレットの前に置かれた小型ロボットが『うんうん』と、首を縦に振るように動き、『手をあげる』というボタンを押すと、ロボットの、鳥の羽のような手がスーッと挙がった。
(………おぉ………操作できた! )
タブレットの画面には、操作ボタンとともに、ロボットの目に映る景色が表示されるようだ。
今はロボットの目が私と鈴木先生のほうを向いているので、びっくりした顔の私と、後ろに立つ鈴木先生の姿が映し出されている。
ロボットが見る範囲も、タブレット上の矢印で多少、調整できるようだった。
「面白いです。こうやって遠隔操作できるんですねぇ。簡単に使えそう……! 」
「ええ」
その時、お席の準備が出来ました、と、生身の人間スタッフが案内してくれて、私と鈴木先生は店内奥にある座席に案内された。
座席には日本人だけでなく、外国人のお客さんも目立つ。
彼らは旅行ついでに来ているのか、とてもカジュアルな服装だった。
私たちが案内されたのは、ふつうのカフェテーブルのようだったけど、ふつうと違うのは、さっき見た小鳥のような小型ロボットが、それぞれの座席に一体ずつ置かれているところだった。
「ここにも、ロボットがあるっ………!! 」
私たちが座席に着くと、テーブルに置かれたその小型ロボットの眼がキラリン、と緑色に光り、喋りだした。
「ようこそ~!! ご予約いただきました、の・ぞ・みです♥」
「こんにちは、広瀬さん」
鈴木先生はテーブルに肘をついて、ロボットの目を見つめて話し始めた。
(ん?? のぞみさん、男性の声……!??
しかもロボットで………?? ロボットと仲良く話す鈴木セブン………?? )
予想を超越されてしまい、私の頭の中は軽く混乱した。
「ウフ。やだ~、水くさいよ。“広瀬さん”じゃなくて『の・ぞ・み』って呼んでって。
ま、いっか。鈴木先生、今回もご予約ありがとうございま~すっ」
「なかなか予約が取れなくて、最近足が遠のいてしまってますが」鈴木先生が笑った。
「そうよ~。来てくれないと寂しい。でもね、確かにこの店、おかげ様で休む暇もないほど大盛況になっちゃってるのよ~」
ロボットのスピーカーを通して話してくれるその男性 ”のぞみさん” は、テレビでいつか見た、“新宿二丁目の名物ママ”のように、男性でありながら女性っぽい言葉遣いも取り混ぜて、とてもノリがよく、親しみやすい感じだった。
「“分身…………ロボットカフェ………”!!? 」
オフィスで先輩保健師の福島さんが言っていたことを思い出した。
―――俺は、鈴木先生が人間の女の人を相手に楽しくお酒を飲んでいる図が想像できないんだよな。なんかこう………“鈴木セブンと仲間たち”みたいな感じで、目がピカーって光る、未来型ロボットの女の子みたいなのに囲まれて、口数少なく座ってるイメージしか見えない……
自動ドアを入ると、店内は広々とした明るい空間だった。軽快なBGMが流れていて、正面にカウンター、左右に座席がある。
ナチュラルウッドカラーをベースにした家具と、グリーン、照明がセンスよく配置されている。お店の広さに対して座席がぎゅうぎゅうに詰められていないせいか、程よいゆとりがあって、何時間でもいられる居心地の良い穴場カフェ、って感じだった。
お店に入ってすぐのカウンターには、かつて某・携帯電話会社が販売していた白いロボットをもっと可愛らしくツルツルにしたような、小柄の人型ロボットが立っていた。
身長は120-130センチくらいだろうか。
そしてそのロボットのアーモンド型の両眼は、福島さんの予想とぴったり同じく、内側から赤く光っていた。
―――福島さん!! あの賭け、福島さんの勝ちですよっ!!
私は、『株式会社E・M・A』のオフィスで繰り広げられた予想合戦を思い出した。
「いらっしゃいませ。こんにちは~! 」
ロボットから、声が聞こえた。
「あ、はい。こんにちは! 」私が思わず返事をすると、さらにロボットから「お越しいただきありがとうございます~」と、人間らしい笑い声が発せられた。
鈴木先生もロボットに声をかける。
「こんにちは。予約している、鈴木です」
「はいっ。鈴木様ですね。承っております~」ロボットが即座に返事をした。
「先生、このロボットは、いったい………話題のAI的な感じですか? でもそれにしては、妙に人間っぽいような」私は鈴木先生に訊いた。
「このロボットの中に入っているのは、AIではありません。人間です」
「えっ。この中に!? 」
「念のために言っておきますが、物理的に中に入っているわけではありませんよ。全国にいるスタッフがインターネットを通じて遠隔でこのロボットに接続し、僕たちをリアルタイムで接客してくれています」
「なるほど! そういう働き方が………あるんですね」
お店を落ち着いて見渡すと、ところどころに白いロボットが居た。
ロボットカフェなんて、初めて来た。興味津々だ。
入口左側の物販スペースに近づくと、タブレット端末が置かれていた。
思わずのぞき込んでみる。
「これ、何でしょうか」
「このカフェで活躍している分身ロボットのサンプル端末です。触ると動かせますよ」
タブレットの前には、手のひらに乗りそうな、高さ20cmくらいの上半身だけの人型ロボットが置かれていた。頭部、胴体に手がふたつ。やっぱりこちらもデザインは丸っこくつるつるとしていて、顔部分には光る眼がついている。胴体は顔に比べて小さくて2.5頭身くらいなので、見かたによっては人間というより、白い小鳥のようにも見えた。
私がロボット前に置かれたタブレット画面上の『うんうん』というボタンを押すと、タブレットの前に置かれた小型ロボットが『うんうん』と、首を縦に振るように動き、『手をあげる』というボタンを押すと、ロボットの、鳥の羽のような手がスーッと挙がった。
(………おぉ………操作できた! )
タブレットの画面には、操作ボタンとともに、ロボットの目に映る景色が表示されるようだ。
今はロボットの目が私と鈴木先生のほうを向いているので、びっくりした顔の私と、後ろに立つ鈴木先生の姿が映し出されている。
ロボットが見る範囲も、タブレット上の矢印で多少、調整できるようだった。
「面白いです。こうやって遠隔操作できるんですねぇ。簡単に使えそう……! 」
「ええ」
その時、お席の準備が出来ました、と、生身の人間スタッフが案内してくれて、私と鈴木先生は店内奥にある座席に案内された。
座席には日本人だけでなく、外国人のお客さんも目立つ。
彼らは旅行ついでに来ているのか、とてもカジュアルな服装だった。
私たちが案内されたのは、ふつうのカフェテーブルのようだったけど、ふつうと違うのは、さっき見た小鳥のような小型ロボットが、それぞれの座席に一体ずつ置かれているところだった。
「ここにも、ロボットがあるっ………!! 」
私たちが座席に着くと、テーブルに置かれたその小型ロボットの眼がキラリン、と緑色に光り、喋りだした。
「ようこそ~!! ご予約いただきました、の・ぞ・みです♥」
「こんにちは、広瀬さん」
鈴木先生はテーブルに肘をついて、ロボットの目を見つめて話し始めた。
(ん?? のぞみさん、男性の声……!??
しかもロボットで………?? ロボットと仲良く話す鈴木セブン………?? )
予想を超越されてしまい、私の頭の中は軽く混乱した。
「ウフ。やだ~、水くさいよ。“広瀬さん”じゃなくて『の・ぞ・み』って呼んでって。
ま、いっか。鈴木先生、今回もご予約ありがとうございま~すっ」
「なかなか予約が取れなくて、最近足が遠のいてしまってますが」鈴木先生が笑った。
「そうよ~。来てくれないと寂しい。でもね、確かにこの店、おかげ様で休む暇もないほど大盛況になっちゃってるのよ~」
ロボットのスピーカーを通して話してくれるその男性 ”のぞみさん” は、テレビでいつか見た、“新宿二丁目の名物ママ”のように、男性でありながら女性っぽい言葉遣いも取り混ぜて、とてもノリがよく、親しみやすい感じだった。
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