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第23話「奥の手」

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 溜まりに溜まった鬱憤が大爆発!
 ついに、街中で一斉蜂起が始まった。

「うぉぉおおおお!!」
「代官をぶっとばせぇ!」
「衛兵隊を追い出せぇええ!」

 うおおおおおおお!
 がおおおおおおお!

 憤怒の表情の住民達。
 それもそうだろう。

 なんたって、この代官が来て以来、あり得ないほどの重税に、治安の悪化。
 税金が使われるはずのインフラはボロボロで、衛兵隊どもは横暴三昧。

 今まで、暴動が起こらなかったほうが不思議なくらいだ。

 アルガスらは、流れの冒険者ゆえ街の事情にそこまで詳しくなかったものの。
 実は、非常ーーーーーに、この街の公的権力は腐っていた。

 だから、冒険者ギルドも腐るし、暗殺者ギルドや盗賊ギルドのような裏ギルドも蔓延はびこるというもの。

 なんせ、取り締まる衛兵隊が腐りきっているのだから……。

「いたぞ! 衛兵の一等兵だ!」
「殴れ、殴れぇ!!」
「いつも、食い逃げばっかりしやがって!」

 おらおらおら!!
 と、ボッコボコにぶん殴られ吊るしあげられる衛兵隊。

「ぎゃぁぁあ! や、やめてー!」

 多勢に無勢。衛兵隊が追い回されている。
 日頃から悪さばっかりしているツケがまわってきたらしい。

 それもそのはず。

 代官は、この街の出身にあらず。
 王国の成金田舎貴族が小金をちらつかせて、官僚から代官のポストを買っただけなのだ。

 しかも、貴族の家では次男坊だったらしい代官は手切れ同然に家から追い出され、小飼の兵だけ与えられて地方に放り出されたらしい。
 ゆえに、代官も兵もこの街に対する愛着なんぞあるはずもなし。

 奴らにあるのは、傍迷惑な向上心だけ。

 狙いは、手柄をたてて王国に重鎮として取り立てられるか、そのポストを買う金を集めることに腐心していた。

 それがために横暴で、スゲー嫌われていたのだ。

 だから、今日は街の住民にとっては千載一遇のチャンス。
 こんな日を虎視眈々と狙っていたわけで、その日がくれば躊躇などするわけがない。

「やれやれー!」
「代官を追い出せぇ!」
「ぶっ殺せぇぇえ!」

 せめて、衛兵隊がこの街の出身なら多少は事情が変わったのだろうが……。
 全員が全員、代官の貴族領からきた連中。
 しかも、ゴロツキばっかし───。
 そりゃ、地方に行く次男坊に良い人材を渡すわけもなし。

 結果はご覧の通り。

 まともな戦力を、アルガスによってぶっ飛ばされた衛兵たちには成す術もなかった。

 さらに間の悪いことに、集結中のはずが代官が街中を迷走しているものだから、衛兵たちも分散してしまっていた。

 代官を探して右往左往。

 そこを怒り狂った住民たちに取り囲まれて、ボッコボコにされてしまったのだ。

「あだ! あだだだ!!」
「や、やめろぉぉぉおお!」
「ひぃ! ちょぉお、そんなの入らない!」


 ぎゃあああああああああああああああ!!


 代官の権威を嵩に着て、やりたい放題していた衛兵たちはここに壊滅。

 そして、そのボスたる代官も、いまや小便まみれの汗だくの、しるだく状態で半死半生で逃げ惑うのみ。

 そこを、強力な探照灯軍用ライトで煌々と照らしながら、アルガスがその巨体ティーガーⅠで迫る!!

『来ーーーーたーーーーぞーーーーー!!』
「ひぃぃぃいいいいいいい!!」

 ドタドタドタ! と走れるデブこと、悪徳代官は必死で街を覆う城壁の傍まで駆けていくと、一際大きな街の門まで何とか到達した。

 そこにいる衛兵にでも助けを求めるつもりなのだろうか?

 だが、せっかく到達した門には、だーーーーーーれもいない。

 それもそのはず。

 全軍集結の合図に、みーーーーーーんな仕事をほっぽり出して代官の館に向かったのだから……。

「ぶひ。ぶひ。ぶひッ!!」

 代官は、もはや人語を話してすらいない。

『はっはー! 年貢の納め時だな。覚悟はイイか、クソッたれが!』

「クソッたれがー♪」

 ノリノリのミィナちゃん。
 ニコニコ笑いながら、ヒョコっとキューポラから顔を出した彼女は、一転して真面目な顔で激怒プンプンしている。

「ぶひ、ぶひ!」

 何言ってるのかわからん───。

「ぶひ、ぶひひひひひひひひひひひひ!!」

 ひーーーーーひっひっひっひっひ!!

 あ?
『何がおかしい? 頭でも狂って──……』
「バァカめ!! ここまでくればワシの勝ちよ!」

 はぁ?

「お前みたいな低能は知らんし、知らされてもおらん! これは王国より任命された代官職にだけ知らされる機密事項───」

 豚クソ悪徳代官がパンツの中から何やらゴソゴソと……。

 ってどこに仕舞ってるんだよ。きったねーなー……!

「みよ! この輝きをッ!」

 ホカホカ、しっとり。

 妙な匂いと瘴気を纏っていそうな金属のプレートを、高々と掲げる悪徳代官。

 だが、それは王家の紋章が刻まれており、何やら魔力を感じなくもない。
 どうも、マジックアイテムの一種らしいが……。

 それを代官は、誇らしげに街の城門の窪みにバンッ! と、はめ込むと、

 突如、周囲がグラグラと揺れ始めた。

 そして、城門がピシピシと音をたてたかと思うと───……。



「ぐおぉおおおおおおおおお!!」



 城門が、いきなり咆哮した。
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