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第24話「ティーガーⅠ vs ゴーレム(前編)」

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 ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 耳をつんざく、地より響く咆哮!
 同時に大地が揺れ動く───。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


『なんっだ、ありゃぁ?』

 宵闇に土埃が立ち、濛々した空間に突如として現れた巨大な化け物。

 そいつが土埃が煙るの中、重戦車化したアルガスの探照灯軍用ライトを受け、闇の中に忽然と出現した。

 いや、違う……。

 違うともさ───そいつは、今までずっとそこにいた・・・・・のだ。

 常に街を見守り、いざとなれば身を挺して街を守る──────……。

 ベームスの街、本物の守護者。

「んがーーーーっはっはっはっはっはっ! 見ろッ。これが王家信頼の証、王国の戦力の本懐───」

 すぅぅ……。

「ゴーーーーーーーーーーレムである!!」

「うごぁぁっぁぁぁぁあああああああ!!」

 咆哮するゴーレム。

 奴は、今の今まで城門に擬態していたらしく、元々門があった場所にはポッカリと歪な穴が開いていた。

 レンガや整形した石材を漆喰で塗り固めた、石の人造の化け物───……それが、ゴーレム!

『ほぉ、デッカク出たな……!』
「石のおじさんだぁ♪」

 ミィナだけは、キャッキャとはしゃいでいる。
 子供の───この子の美的感覚はよくわからん。
 彼女の美的感覚的には、あれがカッコよく見えているのかもしれない。

「んがははははははははは! 不届き者め、余裕ぶっていられるのも今のうちよ、やれぃ───ゴーレム!!」

「ぎががががああああああああ!!」

 ズン、ズンッ!

 巨大な石の化け物───ゴーレムは、悪徳代官の言うことを聞くらしく、ズンズン! と、足音も重々しくアルガスに迫る。

「うごるるるるるるる!!」

 その手前で身を屈めると、起動の衝撃でぶっ飛んだ街の門扉を手に立ち上がった。

『ほぅ! 武器を使うのか!』

 ゴーレムが拾い上げたのは城門。

 そこにあった、両側に観音開きで開く城門は、実はゴーレムの盾であり武器も兼ねていたらしい。

 外部からの攻撃を防ぐために、スパイクをも取り付けられていた城門は───なるほど、かなり物騒な武器といえるだろう。

 両手にその盾を構えると、ファイティングポーズをとるゴーレム。

 完全に攻撃態勢だ。

 そして、その姿をみて───タワーシールドを構えて肉壁に徹していたこともあるアルガスは、どこか懐かしむようにゴーレムを見た。

『────……今まで街を守っていたのか』

 街の守護者。
 人々を守る、意思なき孤高の人造モンスター。

 ゴーレム。

「ぐはははははは! 今さら命乞いしたとて遅いわい! 行けぇ、ゴーレム!」

 ……こんな隠し玉があるから、軍団レギオンが迫ってきても逃げずにいて、念のため財産だけを避難させたわけか。
 
『───だったら、初めから使え!! こーゆーもんはよぉぉぉおお!!』

 ギャラギャラギャラギャラ!!

 アルガスは、迫りくるゴーレムから距離を取るため後退する。

 そして、小手調べに同軸機関銃をぶっ放す!

『おらぁぁああ!!』

 ズダダダダダダダダダダダダダダダ!!

 キンカンコンキーーーーーーーーン!!

『ほぉ! 7.92mm弾を防ぐか───やるじゃないか!』
 
 耳障りな反跳音をたてて、弾き返される機銃弾。
 あの門扉の盾───さしずめゲートシールドの装甲は伊達ではないらしい。

「ごがぁああああああああああああ!!」

 アルガスの攻撃を跳ね返したゴーレムが高らかに咆哮する!!

「ぐはは!! ほざけッ、不届き者がぁぁあ! 今すぐ、その鉄の箱から引きずり出して、ゴーレムの染みに変えてく───」

 はッ!
 機銃弾ぐらいで偉そうに!

 本命は、こっちもじゃぁぁああ!!


 発射ぁぁぁぁああフォィェェェエエル!! 


 ズドンッッッッッッ!!

「ぶひッ?!」

 ドッカーーーーーーーーーーーーーン!!

『ハッ! くたばれ、石っころ───……あん?』

 モクモクと、黒煙立ち昇る中───直撃し、四散させたはずのゴーレムがのそりと起き上がりやがった。

 悪徳代官はといえば、直撃を見て腰を抜かしやがったが、ゴーレムが無事なことを確認すると、ニヤァと顔を変化させる。

「ぐ、ぐははははははははは! 見たかぁぁあ、これが権力!! ワシの力じゃぁぁああ! いっけーーーーーゴーレムぅ!!」

 いっけー! じゃねぇっつの!

『ち……。鉄板か───やるじゃねぇか、ゴーレムよぉ』

 黒焦げが残る鉄板。

 さすがに無傷とはいかなかったようだが、ちょっとした凹みがある程度で貫通には至らない。

「アルガスさん!! 前ぇぇえ!」
『ぬ?!』

 ゴッキーーーーーン!!

『ぐおっ!?』「はぅ?!」

 車体が揺られる衝撃に、アルガスは少し驚く。
 見ればゴーレムが大股で踏み込み、門扉盾ゲートシールドでアルガスをぶん殴ってきた!

 ゴワワーーーン!! と衝撃が車体を貫き、中にいたミィナが大音響と振動で目を回しかけていた。

「はぅぅ……目がまわりゅぅ~」
『てめ! ごのッ!!』

 反撃に移ろうとするも、ゴーレムは嵩にかかって攻めたてる。

「ごぁっ!! ごおあああああ!!」

 ゴワン、ゴン、ガキィン!!

 ガンガンガンッガンッガンッ!!

 連打ラッシュ連打ラッシュ連打ラッシュ!!!


 そして、両手の盾で挿むように、アイアンクローっぽい──────盾撃シールドバッシュ!!


 ガッキーーーーーーーーーン!!

『ぐぅぅう……!』

「ぐわーーーっはっはっは! 手も足も出んと見る」

 手も足も、ねぇっつってんだろ!

「役立たずの衛兵などどーでもええわい! やれ、トドメをさせ、ゴーーーーレム!」

「ごおあああああああああ!!」

 ゴーレムが両手を高々と振り上げ、アルガスを叩き潰さんとする。

 タッパ・・・はゴーレムの方が上なのだ!

 だが………………、

「やれぃ!!」
「ごおああ!!」

 ガッキーーーーーーーーーーーーーン!!

「ぐははははははは、……ん、なんだと?」
「ご、ごあ?」

 ドルドルドルドルドルドルドル……。

 重々しい重低音は変わらず、ティーガーⅠはゴーレムの渾身の一撃を受けてもビクともしなかった。

 それどころか、ちょろっと装甲が禿げ、車外にあった探照灯とSマイン投射器のいくつかがひしゃげただけ───。

 その装甲には凹みすらない……。

『てめぇ、舐めてんのかよぉぉ……。こっちはドイツ軍製の装甲板で、こいつの正面装甲は100mm!!』

 そして、

『側面で80mm──────上と下も薄くっても25mmの分厚さじゃい!!!』

 そうとも…………。

 ティーガーⅠの、

『───重量は57t!! チンケな石の塊が、鉄板でぶん殴ったくらいで倒せると思ってんのかぁぁあああ!!』

 やんのが、ごるぁ!!!

 奥歯へし折ってガタガタ言わせんぞおるぅぅあさぁあああ!


 そした、ティーガーⅠの反撃が始まる!!
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